PK (映画)

『PK ピーケイ』（PK）

2014年に製作されたインドのSFコメディ映画。監督は『きっと、うまくいく』で知られるラージクマール・ヒラーニ、主演はそのタッグで再び組んだアーミル・カーン。

概要

本作は、地球の文化や社会を調査するためにやってきた異星人を主人公に据え、彼の純粋な視点を通して、地球、特にインドにおける宗教の教義や長年にわたる慣習、そしてそれにまつわる欺瞞や迷信に対し、率直な疑問を投げかける物語です。コメディやロマンティックな要素を織り交ぜながらも、差別や偏見といった普遍的な社会問題を鋭く問いかけています。そのメッセージ性とエンターテイメント性が高く評価され、映画批評サイトRotten Tomatoesでは93%という高い支持率を獲得。世界興行収入は100億円を突破し、当時のインド映画として全世界歴代最高興行収入という歴史的な記録を打ち立てました。日本でも、第9回したまちコメディ映画祭の特別招待作品として上映され、話題となりました。

ストーリー

遠い惑星から調査目的で地球に降り立った、人間の姿をした異星人（演：アーミル・カーン）。彼はインドのラージャスターン州に到着しますが、地球人に宇宙船のリモコンを盗まれてしまい、故郷へ帰る術を失い地球に取り残されてしまいます。必死にリモコンを探す彼の手に残ったのは、泥棒が持っていたカセットレコーダーだけでした。

その頃、遠く離れたベルギーのブルッヘでは、インド人女性ジャーナリストのジャグー（演：アヌシュカ・シャルマ）が、パキスタン人のサルファラーズ（演：スシャント・シン・ラージプート）と出会い、互いに惹かれ合っていました。しかし、熱心なヒンドゥー教徒であるジャグーの父親は、ムスリムであるサルファラーズとの交際に強く反対します。父親は、ある導師タパスヴィー（演：サウラブ・シュクラ）に相談し、「サルファラーズはジャグーを裏切るだろう」という預言を聞かされます。ジャグーはその預言が真実でないことを証明しようと、サルファラーズにプロポーズし、結婚の約束を交わします。しかし結婚式当日、ジャグーは「文化の違い」を理由に結婚をキャンセルするというサルファラーズからの手紙を受け取り、深い悲しみに打ちひしがれます。

失意のうちにインドへ戻り、テレビ局の記者として働くジャグーは、街で奇妙な男と出会います。その男こそ、冒頭の異星人でした。彼は「神さまが行方不明」と書かれたチラシを配っており、その不可解な言動にジャグーは興味を抱きます。男が賽銭箱から金を盗もうとしてトラブルになりかけたところをジャグーが助けたことで、二人の間に信頼関係が生まれます。

異星人はジャグーに、自分が他の星から来た科学者であること、故郷では服を着ず、宗教を信じず、握手で意思疎通を図ることを明かします。地球に取り残された彼は、人間の服やお金を手に入れ、人間に紛れて生活していたのです。ある時、彼は偶然出会った楽団長バイロン（演：サンジャイ・ダット）と行動を共にし、地球での生活や人間の言葉（ボージュプリー語）を学んでいきます。しかし、人々の手を無作為に握ろうとする彼の行動は誤解を生み、「酔っ払い」を意味する「PK」と呼ばれるようになります。PKは、リモコンを取り戻すためには「神」に頼るしかないと人々に教えられ、様々な宗教施設を訪れ、多種多様な祈りや儀式を試しますが、リモコンは見つかりません。

やがてPKは、かつてジャグーの父が相談した導師タパスヴィーが、自分のリモコンを持っていることを知ります。しかしタパスヴィーはそれを「神からの授かりもの」だと主張し、返すことを拒みます。ジャグーは、PKが故郷に帰れるよう、リモコンを取り戻す手伝いをすることを約束します。

PKは、タパスヴィーのような導師たちは、神との「電話番号をかけ間違えている」ために、人々を無意味な宗教行為に駆り立てているのではないかと推測します。ジャグーはこのアイデアを報道し、視聴者に向けて「かけ間違い」の経験談を投稿するよう呼びかけます。このキャンペーンは瞬く間に広がり、タパスヴィーは動揺します。一方で、楽団長のバイロンがリモコンを盗んだ泥棒を見つけ出し、彼がリモコンをタパスヴィーに売ったことを突き止めます。これにより、PKはタパスヴィーがインチキであり、「かけ間違い」など存在しなかったことを悟ります。バイロンは泥棒を連れてデリーに向かいますが、PKとの再会を果たす直前に発生したテロ攻撃で命を落とします。後に、このテロがタパスヴィーの支持者たちによって、彼らの「神」を守るために引き起こされたものであることが示唆されます。

追い詰められたタパスヴィーは、PKとの直接対決を受け入れ、二人は生放送のテレビ番組で公開討論に臨むこととなります。宇宙から来た純粋なPKの問いかけは、地球における宗教の本質とは何か、そして信じることの本当の意味を、観る者一人ひとりに深く考えさせるのです。

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