ラージクマール・ヒラーニ

ラージクマール・ヒラーニは、1962年 11月20日にインドで生まれた著名な映画監督です。インド映画界において、商業的な成功と批評家からの高い評価を両立させた、最も影響力のある映画製作者の一人として広く認められています。彼の代表作には、『ムンナー兄貴、医者になる』、『ムンナー兄貴、ガンディーと出会う』、社会現象を巻き起こした『きっと、うまくいく』、驚異的な興行成績を記録した『PK』、そして伝記映画『SANJU サンジュ』などがあります。これらの作品はすべて大きな成功を収めており、インド国内の主要な映画賞を数多く受賞しています。メディアや観客からは、彼の作品がヒンディー語映画の歴史に新たな地平を切り開いたと評価されています。

生い立ちと教育

ヒラーニはナーグプルで、シンド人の家庭に生まれ育ちました。彼の家族は元々、現在のパキスタン領シンド州出身です。父親のスレーシュ・ヒラーニはナーグプルでタイピング学校を経営しており、ラージクマール自身は聖フランシス・デ・セール高等学校で商法を学びました。両親は彼が会計士になることを願っていましたが、ヒラーニの情熱はもっぱら映画と演劇に向けられていました。

大学時代には積極的にヒンディー語の演劇活動に参加していました。父親は息子の夢を応援し、ムンバイの俳優学校に彼の写真を送りましたが、残念ながら不合格となり、すぐにナーグプルに戻ることになります。そこで父親は、プネーにあるインド映画テレビ研究所への進学を提案しました。演技コースは人気で募集が締め切られていましたが、比較的競争率の低い編集コースには入学の可能性がありました。ヒラーニは編集技術を学ぶことを選び、奨学金を得て専門的なスキルを習得しました。

キャリアの歩み

研究所卒業後、ヒラーニは長年にわたり編集技師として経験を積みました。映画業界での活動が困難になった時期には、活動の場を広告業界へと移します。広告の世界で彼は才能を発揮し、やがて広告映画の監督やプロデューサーとして確固たる地位を築きました。特に、複数人が象と共に看板を壊そうとする有名なフェヴィコール社のコマーシャルや、Ogilvyが手掛けたキネティック・ルーラの広告などは、彼の仕事として知られています。

広告業界で成功を収めた後も、映画製作への強い憧れを抱き続けていたヒラーニは、著名な映画製作者ヴィドゥ・ヴィノード・チョープラーのもとで再び映画の世界に関わるようになります。チョープラー監督作品『1942・愛の物語』では予告編やプロモーション映像の制作に携わり、『Kareeb』でもプロモーション編集を担当しました。そして、2000年に公開された『アルターフ復讐の名のもとに』で、初めて長編映画の編集技師としてクレジットされます。

監督としての成功

ヒラーニの監督デビューは、2003年公開の『ムンナー兄貴、医者になる』でした。サンジャイ・ダットを主演に迎えたこのコメディドラマは、観客から熱狂的な支持を受け、興行的に大成功を収めました。2006年にはその続編『ムンナー兄貴、ガンディーと出会う』を発表。この作品は、主人公ムンナー・バーイーの影響で「ガンディギリ」（ガンディー流の非暴力的な抗議や行動）という言葉が広く使われるようになるなど、インド社会や文化に大きな影響を与えました。

2009年公開の『きっと、うまくいく』は、批評家から絶賛され、社会派テーマとコメディを絶妙に融合させた傑作として評価されました。アーミル・カーンが主演を務めたこの作品は、当時のインド映画の興行記録を塗り替える歴史的なヒットとなり、アカデミー賞ノミネートや世界各国でのリメイク版製作など、国際的にも高く評価されました。

続く2014年の『PK』でも再びアーミル・カーンとタッグを組み、驚異的な成功を収めます。この作品は公開当時、インド映画史上最高興行収入を記録し、国内外合わせて1億ドル以上の興行収入を達成しました。

2018年には、俳優サンジャイ・ダットの半生を描いた伝記映画『SANJU サンジュ』を監督しました。ランビール・カプールが主演を務め、ヒラーニ自身も脚本に参加しています。公開後、批評家からは概ね高く評価されましたが、一部からはサンジャイ・ダットを過度に美化しているとの批判も受けました。しかし、興行成績は非常に好調で、2018年のインド映画興行収入ランキングで第1位となり、インド映画史上屈指のヒット作の一つとなりました。最新作はシャー・ルク・カーン主演の『Dunki』（2023年）です。

ラージクマール・ヒラーニは、娯楽性と社会的なメッセージを両立させる独自の作風で、インド映画界に多大な貢献を果たしており、その影響力は今後も続くと予想されています。

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