PPSh-41

PPSh-41：ソ連を代表する短機関銃

PPSh-41（Пистолет-пулемёт Шпагина）は、第二次世界大戦中にソビエト連邦で使用された、もっとも有名な短機関銃の一つです。正式名称は「シュパーギン1941年型7.62mm短機関銃」であり、「バラライカ」や「マンドリン」といった愛称でも親しまれました。

開発の背景

1939年11月に勃発した冬戦争において、ソ連軍はフィンランド軍の抵抗に苦戦しました。特に、スキーを装備した小部隊によるゲリラ戦術は、ソ連軍の補給部隊に大きな損害を与えました。フィンランド軍が装備していたKP/-31のような短機関銃は、近距離での高い火力と森林地帯での取り回しの良さで、ソ連兵を苦しめました。

この戦訓から、ソ連軍は短機関銃の有効性を再認識し、PPD-34/38を兵器庫から再投入しました。その後、改良型のPPD-40が開発されますが、依然として重量が重く、生産効率も高くありませんでした。そこで、ソ連軍はより大量生産に適した短機関銃の開発を決定しました。

銃器設計技師のゲオルギー・シュパーギンは、PPD短機関銃を徹底的に分析し、より近代的な生産方式を導入することを考案しました。1940年9月には試作品を提出し、競争試作の結果、同年12月にPPSh-41として制式採用されることとなりました。

概要

PPSh-41は、PPDからドラムマガジンや木製ストックを継承しつつ、様々な改良が加えられています。レシーバーはMP18と同様の上下分割式で、メンテナンス時に銃身基部のヒンジを軸に分解できます。銃身放熱カバーと上部レシーバーは一体構造で、鋼板プレスで製造されています。また、ボルトを軽量化することで発射速度を向上させ、マズルブレーキの役割を果たす銃身カバー先端の傾斜など、設計に工夫が見られます。

ドラムマガジンはPPDと同じものが使用されましたが、製造工場や時期によって補強用の溝の形状が異なるものが存在します。1942年には、ドラムマガジンの構造が複雑で生産性に劣るという問題から、35連発の箱型マガジンが導入されました。

改良

PPSh-41は、生産性と信頼性を向上させるために、様々な改良が加えられました。照準器の簡略化、弾倉受部の補強、銃身内のクロムメッキ、緩衝材の材質変更などが行われ、過酷な環境下でも確実に動作するようになりました。

運用

PPSh-41は、1941年に制式採用された後、大量生産され、ソ連軍の各部隊に配備されました。歩兵部隊だけでなく、海軍歩兵、偵察部隊、空挺部隊など、幅広い部隊で使用され、ソ連軍を代表する短機関銃となりました。

しかし、PPSh-41にも欠点がありました。重量や携帯性の問題から、偵察兵や戦車兵などからは不評の声も上がっていました。そのため、よりコンパクトで生産効率の良い短機関銃の開発が求められ、PPS短[[機関銃]]が開発されましたが、PPSh-41の生産も継続されました。

PPSh-41は、ドイツ兵からは「バラライカ」、日本兵からは「マンドリン」などと呼ばれました。また、鹵獲したPPSh-41をドイツ軍が「MP717(r)」として使用したことも知られています。

第二次世界大戦後、PPSh-41は東側諸国に供与され、中国や北朝鮮でライセンス生産されました。朝鮮戦争やベトナム戦争などの紛争で使用され、共産主義勢力の主力短機関銃として活躍しました。

バリエーション

PPSh-41: ソ連軍が使用したオリジナルタイプ。
MP717(r): ドイツ軍が鹵獲したPPSh-41。
MP41(r): ドイツ軍が9mmパラベラム弾を使用できるように改造したPPSh-41。
50式衝鋒槍: 中国でライセンス生産されたPPSh-41。
49式短機関銃: 北朝鮮でライセンス生産されたPPSh-41。
M49短[[機関銃]]: ユーゴスラビアで設計された短機関銃。PPSh-41の影響を受けている。
K-50M: 北ベトナム軍が使用した50式衝鋒槍の改良型。
ショカツ: クロアチア紛争時にクロアチアで製造された短機関銃。

PPSh-41は、その大量生産性と高い信頼性から、第二次世界大戦におけるソ連軍の勝利に大きく貢献しました。また、戦後の紛争においても、共産主義勢力の主力武器として使用され、その名を歴史に刻んでいます。

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