PPS短機関銃

PPS短機関銃：第二次世界大戦を彩ったソ連の傑作

PPS（Pistolet-Pulemyot Sudayeva、スダエフ短機関銃）は、第二次世界大戦中の1942年にソ連で開発された短機関銃です。その軽量性と簡素な設計、そして大量生産の容易さから、ソ連軍のみならず世界各地の紛争で広く用いられ、現代においてもその名を知られています。

開発の背景とPPS-42の誕生

1941年、ソ連赤軍はPPSh-41短機関銃を大量配備していましたが、その重量と携帯性の悪さから、偵察兵や戦車兵などからは不満の声が上がっていました。さらに、軍当局はPPSh-41の生産における材料の浪費も懸念していました。

そこで、1942年、軍は新たな短機関銃の開発を決定。軽量で扱いやすく、悪条件下でも使用可能な、プレス加工による量産が可能な設計を要求しました。複数の銃器設計者による競争を経て、アレクセイ・スダエフの設計案が採用され、PPS（後にPPS-42と呼ばれる）が誕生しました。

PPS-42はシンプル・ブローバック方式を採用し、オープンボルトから発射サイクルが開始されます。PPSh-41と比較して、携帯性を大幅に向上させるとともに、700発/分という制御された連射速度により命中精度を高め、弾薬の節約にも貢献しました。また、折り畳み式銃床の採用により、携帯性がさらに向上しました。生産工程の簡素化にも成功し、PPSh-41の約4分の1の時間で製造できるようになりました。弾倉は信頼性の高い箱型弾倉を採用しました。

PPS-43：さらなる改良

1943年には、PPS-42の改良型であるPPS-43が採用されました。PPS-43では、レシーバ板材の厚さの増加、銃身覆いと上部レシーバの一体化、照星覆いの強化、銃身とレシーバの短縮化などが行われ、生産性と構造の強化が図られました。グリップは木製からプラスチック製に変更され、弾倉の形状も改良されています。これらの改良により、PPS-43はPPS-42よりも軽量で、生産性も向上しました。しかし、PPS-42とPPS-43の弾倉は互換性がありません。

レニングラード包囲戦とPPSの活躍

レニングラード（現サンクトペテルブルク）包囲戦において、PPS-42はソ連軍守備隊にとって重要な武器となりました。レニングラード造兵廠での生産開始後、大量のPPS-42が守備隊に供給され、その軽量性と扱いやすさから兵士たちから好評を得ました。包囲戦の勝利後、PPSは愛国キャンペーンの象徴として扱われるようになりました。

戦後のPPSと派生型

戦後、AK-47の採用によりPPS-43は退役しましたが、東側諸国に供給された他、中国やフィンランドでもコピーが生産されました。朝鮮戦争やベトナム戦争でも使用され、中国人民志願軍やベトコン勢力などに使用されたPPS-43は、アメリカ軍や韓国軍に大きな損害を与えました。現在でも、ベトナムやカンボジアなどの観光客向け射撃場で実射できる場合があります。また、アメリカ合衆国では、PPS-43をベースにした自作銃器の原型としても人気があります。

バリエーション

PPS-42、PPS-43以外にも、ドイツ軍による鹵獲時の名称であるMP-709(r)、フィンランドで製造されたM/44、スペインで製造されたUX-51/53/59、中国で国産化された54式衝鋒槍、ポーランドで製造されたPPS wz. 1943/1952など、多くの派生型が存在します。これらの派生型は、元の設計をベースにしながらも、各国独自の改良が加えられています。

まとめ

PPS短機関銃は、その簡素な設計、高い生産性、そして優れた実用性から、第二次世界大戦において重要な役割を果たしました。軽量で扱いやすく、悪条件下でも使用できることから、兵士たちから高い評価を得ていました。戦後も世界各地で使用され続け、その影響は現在でも見ることができます。

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