PSR B1913+16

PSR B1913+16：連星パルサーと一般相対性理論

PSR B1913+16は、2つの中性子星が互いに共通の重心を周回する連星系を形成するパルサーです。この連星パルサーは、1974年にラッセル・ハルスとジョゼフ・テイラーによって発見され、その後の観測と分析を通じて、アルベルト・アインシュタインの一般相対性理論を検証する上で非常に重要な役割を果たしました。この発見により、ハルスとテイラーは1993年にノーベル物理学賞を受賞し、彼らの名前を冠して「ハルス-テイラーの連星パルサー」とも呼ばれています。

発見の経緯

ハルスとテイラーは、アレシボ天文台の巨大な電波望遠鏡を用いて、パルス状の電波放射を観測しました。この電波の源は、高速で自転する強力な磁場を持つ中性子星、つまりパルサーであると特定されました。このパルサーは1秒間に17回転しており、パルス周期は59ミリ秒でした。

観測を続ける中で、彼らはパルスの到達時間に周期的な変動があることに気づきました。パルスが予想よりも早く届いたり遅く届いたりする現象が見られ、これらの変動は7.75時間の周期で規則的に繰り返されていました。この変動を説明するため、ハルスとテイラーは、パルサーが別の天体と連星系を形成していると仮定しました。この仮説が観測結果と一致することが示されました。

連星系の特徴

この連星系を構成するパルサーとその伴星（これも中性子星です）は、共通の重心の周りを楕円軌道で公転しています。軌道周期は7.75時間で、2つの中性子星はほぼ同じ大きさ（直径約20km）と質量（太陽の約1.4倍）を持つと推定されています。軌道速度は、近点では秒速450km、遠点では秒速110kmに達します。伴星の質量は太陽[[質量]]の約1.387倍とされています。

軌道は、近星点で太陽半[[径]]の約1.1倍、遠星点で太陽半[[径]]の約4.5倍の距離に及びます。PSR B1913+16の場合、軌道傾斜角は約45度です。近点の向きは、軌道の方向に年間約4.2度ずつずれていきます。1975年1月には、遠点の軸が地球から見て垂直な方向を向いていました。

一般相対性理論との関連

この連星系の発見以来、軌道は徐々に減衰しており、これはアインシュタインの一般相対性理論が予測する重力波の放出によるエネルギー損失と正確に一致します。現在、この連星系から放出されている重力波の総仕事率は、7.35×10の24乗Wと計算されており、これは太陽の光の放射電力の約1.9％に相当します。

重力波の放出による比較的大きなエネルギー損失のため、軌道周期は年間76.5マイクロ秒ずつ減少し、軌道長半径は年間3.5mずつ減少しています。このまま進むと、連星系の寿命は約3億年と推定されています。2004年には、テイラーとジョエル・ワイスバーグが新たな観測データの分析結果を発表し、観測値と予測値の差がわずか0.2％であることを示しました。この差は、太陽から銀河中心までの距離やパルサーの固有運動、地球からパルサーまでの距離など、銀河定数の不確実性によるものとされています。

また、彼らは系の歳差がパルスの形状を変えることを利用して、パルサーの二次元ビーム構造を測定しました。その結果、ビームの形状は、中央付近で緯度方向に伸び、経度方向に圧縮された、全体として8の字型をしていることが明らかになりました。

フィクションにおける登場

SF作家のアーサー・C・クラークは、自身のテレビシリーズ『アーサー・C・クラークのミステリアスワールド』の中で、このパルサーをベツレヘムの星であると提唱しました。第12話の終わりに、「もし私たちがキリストの時代の前兆を告げた星の死にゆく声を聞くことができたとしたら、なんとロマンチックなことだろう」と語っています。

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