PS/55

IBM PS/55：日本市場向けに特化したパーソナルコンピュータ

PS/55（Personal System/55）は、日本IBMが1987年から発売したパーソナルコンピュータシリーズです。企業向けを中心に展開されましたが、個人向けモデルも存在しました。このシリーズは、IBMのグローバル戦略とは異なり、日本市場のニーズに合わせて開発された点が特徴です。

PS/55の概要

PS/55は、IBMのPS/2をベースに、日本語表示機能を追加したパーソナルコンピュータです。前身であるマルチステーション5550の後継機として登場しましたが、そのアーキテクチャは大きく異なりました。PS/55は、PS/2のアーキテクチャをベースにしつつ、日本語表示に必要なディスプレイアダプタやキーボードを独自に開発・搭載しました。後継機としては、IBM PC Series、PS/V、ThinkPadなどが挙げられます。

PS/55の呼称とIBM製品系列

正式名称は「パーソナルシステム/55」で、略称は「PS/55」です。当時のIBMの製品系列は以下の通りです。

ES/9000 - エンタープライズシステム（メインフレーム）
AS/400 - アプリケーションシステム（ミッドレンジコンピュータ）
RS/6000 - RISCシステム（UNIXサーバー）
PS/2 - パーソナルシステム（パーソナルコンピュータ）

日本では、PS/2の展開にあたり、従来の5550からPS/55へと移行が進みました。

PS/55の歴史

IBMは世界市場でIBM PCファミリーを展開していましたが、日本では日本語表示のニーズが高かったため、マルチステーション5550シリーズを独自に開発・販売していました。PS/55は、この5550シリーズの後継機として登場しましたが、PS/2をベースとしたため、ハードウェアとソフトウェアの両面で大きな変更がありました。

PS/55シリーズには、旧5550系統とPS/2系統の2つが含まれます。

旧5550系統（モデルM/Pまで）: マルチステーション5550のアーキテクチャを継承しており、独自のハードウェア仕様でした。
PS/2系統（モデルS/T/V以降）: PS/2のアーキテクチャをベースにしており、PS/2との互換性がありました。これが狭義のPS/55です。

旧5550系統とPS/2系統の間には、ハードウェア（拡張カード、ディスプレイ、マウス、プリンターなど）とソフトウェア（OS、アプリケーション）の両面で互換性がほとんどありませんでした。しかし、5550ユーザーの多くはパッケージソフトを利用していたため、データの互換性さえあれば移行が可能でした。

1987年5月に発売されたタワー型モデル5571-Sを皮切りに、PS/2系統のモデルが順次投入され、旧5550系統から段階的に移行が進みました。当初はビジネス向けのMCAモデルが中心でしたが、後に個人向けのPS/55zシリーズ、PS/55noteシリーズ（後のThinkPad）、ATバス(ISA)モデル、ソフトウェアによる日本語表示（DOS/V|DOS_V）なども登場しました。

PS/55の特徴

PS/55は、日本市場向けに以下の特徴がありました。

ディスプレイアダプタ: テキスト画面は1040x725ドットで、24ドット明朝体フォントによる全角40桁25行表示が可能でした。グラフィック画面は1024x768ドット16色表示をサポートしました。初期のモデルではPS/2のVGAとの互換性がありませんでしたが、後に改良された「ディスプレイアダプタII」が搭載され、VGAとの互換性や1024x768ドット256色表示もサポートしました。
JIS配列キーボード: 5576-001などのJIS配列キーボードが別売で用意され、本体と自由に組み合わせることができました。5576-A01はOADG標準キーボードとして発表されました。
MCAバス搭載: PS/2と同様に、MCAバス搭載モデルがラインナップされ、後にATバスモデルも追加されました。
日本語OS: IBM日本語DOS、JDOS、DOS/V|DOS_V、OS/2日本語版などの日本語対応OSが用意されました。

PS/55のモデル

PS/55には、タワー型、デスクトップ型、スモールビジネス・個人用、ラップトップ型など、さまざまなモデルが存在しました。

タワー型: 5570-S/T/V、5580-Y/Wなど、サーバー用途も想定したモデルがありました。
ビジネス・デスクトップ: 5560-W/N、5550-S/T/V/W/N/Y/L/R、5540-Tなど、企業の事務作業向けモデルが多数ありました。
スモールビジネス、個人用: 5530-Z/S/T/U/W、5510-Z/S/Tなど、個人や中小企業向けのモデルもありました。
ラップトップ: 5545-T、5535-S、PS/55noteなど、可搬性を重視したモデルも存在しました。

特に注目すべきは、個人向け市場に再参入したPS/55Zや、後のThinkPadの原型となったPS/55noteです。また、PS/55をベースに強化した産業用ワークステーション「IBM 5500」も、工場現場などで広く利用されました。

PS/55の競合製品

PS/55の競合製品としては、富士通のFMRシリーズ、日本電気のN5200/N5300、PC-9800シリーズ、東芝のJ-3100などが挙げられます。

まとめ

PS/55は、IBMが日本市場向けに特化して開発したパーソナルコンピュータシリーズです。PS/2をベースにしながらも、独自の日本語表示機能や多様なモデル展開により、日本のビジネスシーンや個人ユーザーに幅広く利用されました。その後のパーソナルコンピュータ市場に大きな影響を与えた一台と言えるでしょう。

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