Pic言語

Pic言語は、C言語の開発者としても知られるブライアン・カーニハンによって設計された、図形描画に特化したプログラミング言語です。この言語の主な目的は、長方形や矢印といった基本的な図形要素を組み合わせ、フローチャートのような図を自動的に生成することにあります。Pic言語は、その用途が図の生成に限定されているため、ドメイン固有言語として分類されます。

Pic言語の処理系は、ソースコードを読み込み、具体的な描画命令に変換するコンパイラとして機能します。この言語は手続き型プログラミングのパラダイムを採用しており、変数、代入、マクロ、条件分岐、ループといった基本的な制御構造を備えています。Pic言語は、そのシンプルさから小規模言語の代表例と見なされており、当初はUnix環境で、プログラミングの専門家ではない人が作業を効率化するために開発されました。

Pic言語は、もともとtroff文書処理システムのためのプリプロセッサとして実装され、現在でもそのように利用されています。picプリプロセッサは、troffの原稿をフィルタとして処理し、pic言語で記述された部分だけを実際の描画命令に変換します。それ以外の部分は変更せずにそのまま出力します。この仕組みにより、文書内に図を簡単に組み込むことが可能になります。

GNU版troffであるgroffにも、picプリプロセッサが含まれており、GNU picはTeX原稿中のpic言語部分も処理することができます。また、pic言語の記述部分には任意の文字列を記述でき、groffやTeXにそのまま処理させたり、文書整形処理の前に後処理プログラムを挟むことも可能です。Dwight Aplevichによる実装であるDPICでは、プリプロセッサとしての機能に加え、PostScript形式で直接出力する機能も備えています。

現在、主なpic処理系としては、GNU pic、dpic、そしてAT&Tオリジナルの実装の3種類が存在します。GNU picとdpicはフリーソフトウェアとして提供されており、多くのLinux環境に標準で含まれています。

Pic言語の処理系は、図形の配置や連結を記述する点で、MetaPostやDOT言語（graphviz）といった他の図形描画ツールと共通の特徴を持っています。これらの言語と同様に、Pic言語もテキストベースで図形を記述することで、より柔軟で精密な図の作成を可能にしています。

これらの特徴から、Pic言語は、特にテキストベースの環境で技術文書やプレゼンテーション資料を作成する際に、非常に有効なツールであると言えます。

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