Pine

Pineは、ワシントン大学が開発したフリーウェアのテキストベース電子メールクライアントです。1989年に最初のバージョンがリリースされました。ソースコードはUNIX版のみ提供され、ワシントン大学独自のライセンスで配布されていました。

プラットフォーム

Pineには、UNIX版とWindows版が存在します。UNIX版はテキストユーザーインターフェースベースで動作し、メッセージエディタはPicoに似た操作感です。Windows版は「PC-Pine」と呼ばれています。また、ワシントン大学内では、Webアプリケーションとして実装された「WebPine」も利用されていました。

名称の由来

Pineは、再帰的頭字語「Pine Is Not Elm」であるという説が広まっていましたが、オリジナルの作者の一人であるLaurence Lundblade氏によると、実際は単に「松」を意味する単語として選ばれただけだそうです。その後、バクロニムとして「Pine Is Nearly Elm」という意味が与えられました。さらに、大学側は「Program for Internet News and E-mail」の略であると説明を変更しました。

ライセンスとクローン

Pineのバージョン3.9.1までのライセンスは、BSDライセンスに似たもので、以下のように記述されていました。

>「本ソフトウェアとその文書の使用、複製、改変、配布は、用途に因らずワシントン大学に料金を支払うことなくここに許諾し…」

しかし、ワシントン大学はPineという名称を商標登録しませんでした。バージョン3.9.2以降、大学はライセンスを変更し、ソースコードの配布は認めるものの、他者が改変して配布することを禁止しました。さらに、従来のライセンスでも改変版の配布は許可していなかったと主張しました。大学はPineの商標権についても同様の立場をとりました。

この変更を受けて、一部の開発者がバージョン3.9.1からフォークを開始し、商標問題を回避するために「MANA (Mail And News Agent)」という名称で開発を続けました。これがGNUプロジェクトに採用され、「GNU Mana」となりました。しかし、リチャード・ストールマン氏によると、ワシントン大学がPineの修正版を配布した場合、フリーソフトウェア財団を提訴すると脅したため、MANAの開発は中止され、リリースされることはありませんでした。

その後、ワシントン大学は、Pineを修正せずに再配布することは認めるようにライセンスを変更しましたが、オープンソースや自由ソフトウェアの基準を満たすライセンスにはなっていません。

Alpine

2006年、ワシントン大学はPineの開発をバージョン4.64で終了し、保守のみを継続すると発表しました。その代わりに、Pineをベースとした新たな電子メールクライアント「Alpine」が、Apache License version 2でライセンスされました。2006年11月29日には最初のアルファ版が公開されました。Pineではアルファ版が公開されたことはありませんでした。

2007年12月20日には、Alpine 1.0がリリースされました。Pineは開発を終了しましたが、その精神はAlpineに引き継がれています。

参考情報

Pine 公式サイト)
Alpine 公式サイト)
Help and Patches for Pine)
Pine User statistics)
FAQ for comp.mail.pine)
All about pine)
WebPine FAQ)
Pine と PGP)
Win32 client - Windows版はポータブルアプリケーションとして利用可能)
Linux client)

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