PsyArXiv

PsyArXiv（サイアーカイブ）

PsyArXivは、心理学およびその関連分野における研究論文のプレプリントを公開するためのオンラインリポジトリサービスです。これは、学術出版の伝統的なプロセスである査読を経る前に、研究成果を広く共有することを目的としています。このプラットフォームは、オープンサイエンスの推進を掲げる非営利団体、オープンサイエンスセンター（Center for Open Science, COS）によってホスティングおよび運営されています。

設立と背景

PsyArXivは、2016年9月に開設され、同年12月には正式なサービス提供が開始されました。その構想は、物理学や数学をはじめとする自然科学分野で広く利用されている著名なプレプリントサーバであるarXivに触発されています。arXivがこれらの分野で研究コミュニケーションの速度を劇的に向上させ、オープンアクセス文化を醸成してきた成功事例を参考に、心理学分野においても同様のインフラストラクチャを構築しようという動きから生まれました。

機能と目的

PsyArXivの主な機能は、心理学研究者が自身の研究原稿をアップロードし、世界中の研究者や一般の人々が自由に閲覧できるようにすることです。これにより、研究者は査読と出版に要する長い時間を待つことなく、最新の研究成果を迅速に公開できます。早期公開は、研究のタイムリーな共有、研究者間の早期フィードバックの促進、および重複研究の回避といったメリットをもたらします。

また、プレプリントの公開は、研究の透明性を高める上でも重要な役割を果たします。研究手法や結果を事前に公開することで、他の研究者による追試や検証が容易になり、学術研究の信頼性向上に貢献します。PsyArXivは、このようなオープンで協力的な研究文化の醸成を目指しています。

対象分野

PsyArXivは、心理学の幅広い分野の研究論文を受け付けています。認知心理学、社会心理学、発達心理学、臨床心理学、神経科学に関連する心理学など、多岐にわたるテーマの原稿が投稿されています。また、「関連分野」として、心理学と密接に関わる学際的な研究も対象に含まれます。

特徴

PsyArXivに投稿されたプレプリントは、公開後すぐにDOI（Digital Object Identifier）が付与されることが一般的であり、学術的な引用が可能となります。また、2017年4月時点の情報によれば、Google Scholarなどの主要な学術検索エンジンにインデックスされており、研究成果の発見可能性が高まっています。これにより、研究者は自身の成果をより多くの人々に届け、研究の影響力を早期に高める機会を得られます。

オープンサイエンスとプレプリント

オープンサイエンスセンターによって運営されていることからもわかるように、PsyArXivはオープンサイエンス運動の一環として位置づけられています。オープンサイエンスは、研究プロセス全体をより透明でアクセス可能にすることを目指しており、プレプリントはその重要な要素の一つです。査読前論文を公開することは、研究成果への早期アクセスを保証し、学術情報のオープンアクセスを推進する上で中心的な役割を果たします。

近年では、心理学分野でも再現性の危機などが議論される中で、研究の透明性を求める声が高まっています。PsyArXivのようなプレプリントリポジトリは、データの公開（オープンデータ）や研究計画の事前登録（プリレジストレーション）といった他のオープンサイエンスの実践とも連携し、より健全な研究エコシステムの構築に寄与しています。

まとめ

PsyArXivは、心理学分野における研究成果の迅速な共有とオープンアクセスを可能にする重要なインフラストラクチャです。オープンサイエンスセンターの運営のもと、研究者間のコミュニケーションを活性化し、学術研究の透明性と効率性の向上に貢献しています。心理学および関連分野の研究者にとって、自身の研究を早期に公開し、世界の研究コミュニティと繋がるための不可欠なツールとなりつつあります。

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