QED (テキストエディタ)

QEDは、テキストエディタedやexの先駆けとなったラインエディタです。その開発は1960年代に遡り、初期のコンピュータシステムにおけるテキスト編集のあり方を大きく変えました。

概要

QEDは、バトラー・ランプソンとL Peter Deutschによって、SDS 940上のBerkeley Timesharing System向けに開発されました。実装は1965年から1966年にかけてDeutschとDana Angluinが担当しました。その名称は "quick editor" の略であり、テレタイプ端末での利用を前提に設計されました。そのため、ビデオ表示端末では考慮すべき点が大きく異なり、当初は対応していませんでした。

ケン・トンプソンがQEDをCTSSに移植したことは、その後の発展において重要な出来事でした。このCTSS版では、正規表現が実装されたことが特筆されます。さらにトンプソンは、Multics向けにBCPL言語で移植を行いました。このMultics版はGE-600システムにも移植され、ベル研究所内のGECOSや（GEコンピュータ事業をハネウェルが取得した後の名称）GCOS上で1960年代末まで利用されました。GECOS/GCOS版では、A. W. Winklehoffが書いたI/Oルーチン群が使用されました。

QEDのマニュアルは、デニス・リッチー、ケン・トンプソン、ブライアン・カーニハンによってベル研究所の社内向けに作成されました。彼らはUNIXオペレーティングシステムの開発者であり、QEDはUNIXの初期のテキストエディタであるedやsed、さらにその派生であるexやsamなどに影響を与えました。QEDがUNIXにおけるテキスト編集の基礎を築いたと言えるでしょう。

また、QEDにはいくつかの別バージョンが存在します。ウォータールー大学では、Peter Fraserがハネウェルのシステム向けにFRED (Friendly Editor) を開発しました。トロント大学のチーム（Tom Duff、ロブ・パイク、Hugh Redelmeier、David Tilbrook）は、UNIXにQEDを移植しました。David Tilbrookは、QEFというツールセットにQEDを含めています。

さらに、ノルウェーのNorsk Dataのシステムでは、Nord TSSやSINTRAN IIIというOS上でQEDがエディタとして使用されていました。これらの事例から、QEDが当時の様々なシステムで広く利用され、テキスト編集の標準的なツールの一つであったことが伺えます。

QEDが後世に与えた影響

QEDは、単なる初期のテキストエディタというだけでなく、その後のテキストエディタ開発に大きな影響を与えました。正規表現の実装は、テキスト処理の柔軟性を大きく向上させ、後のsedなどのツールに継承されました。また、ラインエディタという形式は、edやexなどのUnixエディタに受け継がれ、現在のテキストエディタの基礎を形成しました。

QEDの開発に携わった人々は、その後のコンピュータ科学の発展に大きく貢献しました。彼らの業績は、現代のソフトウェア開発において不可欠なテキスト処理の基盤を築いたと言えるでしょう。QEDは、技術的な革新だけでなく、その後のコンピュータ文化にも大きな影響を与えた重要なソフトウェアです。

まとめ

QEDは、初期のコンピュータシステムにおけるテキスト編集のあり方を大きく変えたラインエディタです。その開発からUnixへの影響、そして派生したエディタに至るまで、QEDの歴史は、コンピュータ科学の歴史と深く結びついています。QEDは、現代のテキスト編集ツールの基礎を築いただけでなく、その後のソフトウェア開発のあり方にも影響を与えた重要な存在です。

外部リンク

FRED - the friendly editor.
QED as part of QEF tools

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