R-36 (ミサイル)

R-36ミサイル：冷戦時代の脅威と遺産

冷戦の影と核兵器の時代

東西冷戦期、世界は核戦争の危機に晒されていました。従来の戦争とは異なり、核兵器の保有と運用能力が国家の存続を左右する時代が到来したのです。この緊迫した状況下で、ソ連は世界を震撼させる兵器を開発しました。それが、R-36ミサイルです。

R-36：西側諸国の恐怖

R-36は、ソ連が開発した大陸間弾道[ミサイル]で、[西側諸国]]からは「スカープ(Scarp)」というNATOコードネーム、そしてより有名な「サタン]」という呼び名で恐れられていました。その巨大な破壊力は、[[冷戦時代の象徴的な兵器の一つとなりました。R-36は、複数の核弾頭を搭載し、広大な距離を飛行できる能力を有していました。

R-36M：改良型ミサイルの登場

R-36の後継として開発されたR-36Mは、さらなる破壊力を誇りました。最大射程6000キロメートル'>[海里]以上、10個の核弾頭、もしくは威力を調整できる単一弾頭を搭載可能でした。1969年に開発が承認され、アメリカ合衆国のミニットマン計画に対抗する目的も持っていました。初期設計では12メガトンの単一弾頭を想定し、敵国のサイロを先制攻撃できる第一撃能力をソ連に与えるものと期待されました。1974年に生産が開始され、1975年の初飛行は失敗に終わりましたが、1974年末には最初のミサイル連隊が実戦配備されました。

しかし、R-36Mは設計寿命の10年が経過すると退役し、[MIRV]を搭載したR-36MUTTh(SS-18 Mod 4)、そして最終型となるR-36M2「Voevoda」へと進化を遂げました。R-36M2は、1991年8月に配備されましたが、ソ連崩壊によって配備数は限定的でした。R-36Mシリーズは、グラスファイバー製の輸送発射コンテナに格納され、既存のサイロに配備可能で、発射時の衝撃からミサイル本体を守るコールドローンチ方式を採用していました。これは、サイロからミサイルを射出後、空中でエンジンに点火する方式です。

R-36Mの技術的特徴

R-36Mは二段式ロケットで、強力なエンジンを複数搭載していました。第一段は4基のエンジンで460トンの推力、第二段は1基のエンジンで77トンの推力を発生しました。MIRV搭載時は、複数の再突入体を備えたバスも搭載されました。

配備と運用、そして廃棄

ソ連崩壊直前には、308基のR-36Mミサイルサイロが作戦配備されていました。ソ連崩壊後は、ロシアとカザフスタンに配備されたミサイルは、戦略兵器削減条約に基づき、順次廃棄されていきました。ロシアは一部のサイロを改造し、新型ミサイルの配備に転用しました。2005年時点では約100基が運用中でしたが、主要な生産設備がウクライナに存在したため、維持管理は困難を極めました。ロシアはその後も運用数を削減し、最新型のR-36M2(RS-20V)ミサイルは延命措置を受け、一部は2020年まで運用される予定でした。一方で、後継ミサイルであるRS-28の開発も進められていました。

R-36の転用：衛星打ち上げロケット

R-36ミサイルは、軍事用途だけでなく、宇宙開発にも貢献しました。ツィクロンロケットやドニエプルロケットといった衛星打ち上げロケットは、R-36を基に開発されました。ツィクロンロケットは、主に観測衛星などを打ち上げるために使用され、ドニエプルロケットは、アメリカ合衆国の衛星なども打ち上げるなど、国際的な宇宙開発に貢献しました。日本も、2005年に光衛星間通信実験衛星「きらり」をドニエプルロケットで打ち上げています。

結語

R-36ミサイルは、冷戦時代の象徴であり、その破壊力は世界を震撼させました。しかし、その技術は、宇宙開発という平和的な用途にも転用され、今日までその遺産は受け継がれています。R-36ミサイルの歴史は、冷戦期の緊張と技術革新、そして核兵器の危険性を改めて認識させる重要なものです。

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