ABRIXAS

ABRIXAS（A BRoadband Imaging X-ray All-sky Survey）は、ドイツが開発したX線天文衛星であり、全天のX線画像を広帯域で取得することを目的としていました。このミッションは、過去に行われたROSAT衛星による軟X線サーベイを補完し、より広範囲なエネルギー帯域でのX線天体観測を目指していました。

計画と設計

ABRIXASの主な目的は、0.5から10キロ電子ボルトのX線領域において、3年間かけて全天サーベイを実施することでした。この観測は、過去のROSAT衛星が観測した0.1から2キロ電子ボルトの軟X線領域を補完するものであり、より高エネルギーのX線源を捉えることを意図していました。計画には総額2000万ドルの費用が投じられました。

観測装置は、焦点距離160cmの7基のヴォルター-1型望遠鏡で構成されていました。各望遠鏡は直径40分の視野を持ち、それぞれ7度ずつ異なる方向を向いていました。これにより、広範囲の天域を同時に観測することが可能でした。受光部には、7つの望遠鏡で1つのセンサーを共有する設計が採用され、XMMニュートン衛星のために開発されたX線CCDセンサーが転用されました。このセンサーは、高い感度と分解能を持ち、微弱なX線信号も捉えることができる性能を持っていました。

運用

ABRIXASは、1999年4月28日にロシアのカプースチン・ヤール宇宙基地からコスモスロケットによって打ち上げられました。打ち上げ後、衛星は順調に軌道に投入されましたが、軌道投入からわずか3日後、メインバッテリーが過充電によって損傷するという予期せぬ事態が発生しました。この損傷により、衛星との通信が完全に途絶えてしまいました。その後、太陽電池に光が当たる6月末から7月にかけて、電力の回復を期待して通信の再開が試みられましたが、残念ながら成功することはありませんでした。この結果、ABRIXAS衛星の運用は断念せざるを得なくなりました。

ABRIXASは、その短命なミッションにもかかわらず、高度な技術と野心的な計画を持っていました。特に、7つの望遠鏡とX線CCDセンサーを組み合わせた観測システムは、今後のX線天文衛星の設計に貴重な教訓を提供しました。また、このミッションの失敗は、宇宙空間におけるバッテリー管理の重要性を改めて浮き彫りにしました。

参考文献

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