RS-27A

RS-27Aロケットエンジン

RS-27Aは、ロケットダイン社によって開発された、ガス発生器サイクルを採用する液体燃料ロケットエンジンです。特に、アメリカのデルタIIおよびデルタIIIロケットの第一段エンジンとして幅広く使用されました。このエンジンは、既存のRS-27エンジンを基に、その性能をさらに向上させた改良型として位置づけられています。

主要な性能と技術的特徴

推進剤には、燃料として精製ケロシンであるRP-1、酸化剤として液体酸素（LOX）を使用します。これらの推進剤を燃焼させることで、海面上での運用から真空中まで、強力な推力を発生させます。真空中における最大推力は約1.05メガニュートン（MN）、ポンド換算では237,000 lbfに達します。このエンジンはガス発生器サイクルを採用しており、これは推進剤の一部をガス発生器で燃焼させてターボポンプを駆動し、残りの推進剤を燃焼室に供給する方式です。

RS-27Aの最大の特徴は、先代のRS-27からのノズル形状の大幅な改良にあります。特に、ノズル出口面積とノズル入口面積の比率を示す「膨張比（開口比）」が、RS-27の8:1から12:1へと拡大されました。これにより、燃焼ガスがノズル内でより大きく膨張することが可能となり、特に大気圧が低い高高度環境におけるエンジンの効率（比推力）が著しく向上しました。この高高度性能の改善は、ペイロードをより高い軌道へ投入するために重要な要素となります。

運用特性と信頼性

RS-27Aエンジンは、基本的な運用においていくつかの特徴を持ちます。このエンジンは固定推力で動作するため、一度点火した後は推力を調整したり、飛行中に再始動したりすることはできません。しかし、その代わりに構造が比較的シンプルであり、高い信頼性を実現しています。また、RS-27A主エンジンのシステムには、機体のロール（回転）方向の姿勢を制御するための2基の補助ロケットエンジンが付属しています。これにより、第一段飛行中の機体の安定した姿勢維持をサポートします。標準的なミッションにおけるRS-27Aの作動時間は、約265秒間とされています。

詳細仕様

RS-27Aエンジンの主な仕様は以下の通りです。

推力 (真空中): 1.05 MN (237,000 lbf)
比推力 (真空中): 302秒
比推力 (海面高度): 255秒
重量: 1,147 kg (2,528 lb)
直径: 1.70 m (67 in)
全長: 3.78 m (12 ft 5 in)
燃焼室数: 1基
燃焼室圧力: 4.8 MPa (700 psia)
開口比 (ノズル膨張比): 12:1
酸化剤/燃料混合比: 2.245:1
* 推力重量比: 93

これらの仕様からもわかるように、RS-27Aは当時のロケットエンジン技術において高い水準を満たしており、特にデルタIIやデルタIIIといった商業衛星打ち上げや科学ミッションを支えるロケットの成功に大きく貢献しました。その信頼性の高さと改良された性能は、これらのロケットが長期間にわたり運用される上で不可欠な要素でした。

RS-27Aは、その堅実な設計と確かな性能により、ロケット開発の歴史において重要な位置を占めるエンジンと言えるでしょう。

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