Rock'n Rouge

Rock'n Rouge／ボン・ボヤージュ

松田聖子の16枚目となるシングル「Rock'n Rouge／ボン・ボヤージュ」は、1984年2月1日にCBS・ソニーから発売されました。レコードの規格品番は07SH 1455でした。

制作の過程

Rock'n Rouge

この楽曲は、松田聖子本人がイメージキャラクターを務めたカネボウ化粧品の「レディ80BIO リップスティック・84年春のバザール」キャンペーンのコマーシャルソングとして使用されました。

作曲を担当した呉田軽穂（松任谷由実）は、制作にあたり、当時の松田聖子にABBAのようなヨーロピアン・ディスコの要素を取り入れた楽曲を提供したいという意図を持っていました。このアイデアが、プロデューサー陣が描いていた「春らしい雰囲気の曲」というイメージと見事に合致したため、楽曲はスムーズに完成に至ったと言われています。また、松田聖子自身も、前作のバラード「瞳はダイアモンド」の次に歌う曲として、アップテンポなナンバーを希望しており、作り手と歌い手の意向が一致したことで、名曲が誕生する下地ができました。

一方、作詞を担当した松本隆は、カネボウ側から「pure pure lips」という特定のフレーズをサビに必ず含めるようにという制約を課されていたため、作詞作業に非常に難航しました。締め切りが目前に迫る中、一時は連絡が取れなくなるほど追い詰められたとされています。最終的には、多くの人が共感できるようなごく一般的なデートのシチュエーションを描写することで、この難題を乗り越えました。インターネット上の動画サイトなどでは、完成版とは全く異なる歌詞のデモ音源が出回っていることもあり、作詞過程での試行錯誤の様子がうかがえます。

ボン・ボヤージュ

カップリング曲の「ボン・ボヤージュ」は、その後のアルバム『Very Very』に「ふたりのボン・ボヤージュ」という続編が収録されるなど、ファンに親しまれています。このシングルに収録された両曲は、作詞を松本隆、作曲を呉田軽穂（松任谷由実）、編曲を松任谷正隆という、当時の松田聖子サウンドを支えた強力な布陣によって制作されました。

メディアでの披露と反響

「Rock'n Rouge」はカネボウ化粧品のCMソングという性質上、資生堂がメインスポンサーであったフジテレビの音楽番組『夜のヒットスタジオ』では、発売当初すぐには歌唱することができませんでした。番組では代わりに、同時期にリリースされたアルバムからの楽曲「Canary」や、本作のカップリング曲である「ボン・ボヤージュ」が披露されました。「Rock'n Rouge」が初めて『夜のヒットスタジオ』で歌唱されたのは、発売から約2ヶ月後の1984年3月26日の放送回でした。

NHKの音楽番組ではこのような制約はなく、同年末に放送された『第35回NHK紅白歌合戦』でこの曲が披露されたほか、リリースから長年を経て、2019年の『第70回NHK紅白歌合戦』でもメドレー形式ではありましたが再びパフォーマンスされました。

商業的にも大きな成功を収め、オリコンが発表した売上枚数は67.4万枚を記録するヒットシングルとなりました。

リリース形態

本作は、最初にレコード盤でリリースされました。また、クローバー・カセットシリーズの一つとしてシングル・カセット盤も同時期に発売され、こちらには初めて両曲のオリジナル・カラオケが収録されています。

その後のCD時代には、1989年に8cmCDとして再リリースされました。さらに2004年には、紙ジャケット仕様の完全生産限定盤として12cmCDでも再び登場しています。この2004年盤には、カセット盤に収録されていた両曲のオリジナル・カラオケが追加収録され、オリジナルマスターに基づいたデジタルリマスタリングが施されました。

収録曲

全作詞：松本隆／全作曲：呉田軽穂／全編曲：松任谷正隆

主なカバーバージョン

Rock'n Rouge

林憶蓮（Sandy Lam）：1985年に香港で「搖擺口紅」として（アルバム『林憶蓮』収録、広東語詞）
伊能静（Annie Yi）：1988年に台湾で「愛麗絲的日記」として（アルバム『悲傷的茱麗葉』収録、中国語詞）
CHiYO：2006年にネット配信
DG-10（今井麻美、長谷川明子、又吉愛）：2009年（アルバム『LOVE SYNTHESIZER!』収録）
田村ゆかり：2020年（アルバム『VOICE〜声優たちが歌う松田聖子ソング〜 Female Edition』収録）

ボン・ボヤージュ

Katrina Perkins：1991年（アルバム『ROMANTIQUE』収録）

関連作品

「Rock'n Rouge」と「ボン・ボヤージュ」は、多数のオリジナルアルバムやベストアルバム、企画盤などに収録されています。特に「Rock'n Rouge」は、「Seiko・Town」、「Seiko-Train」、「Seiko Box」、「Seiko Monument」といった初期の代表的なアルバムに収録されており、松田聖子のキャリアを語る上で欠かせない楽曲の一つとなっています。「ボン・ボヤージュ」も、「Touch Me, Seiko」、「Seiko-Train」、「Complete Bible」など、様々なアルバムで聴くことができます。

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