S&W M10

S&W M10：不朽の名作リボルバー

S&W M10は、スミス&ウェッソン社が1899年に開発した回転式拳銃です。発売当初は「ミリタリー&ポリス」と呼ばれ、1957年のモデルナンバー制度導入後もその名で親しまれています。19世紀から21世紀にかけて、数々の改良を重ねながら長きにわたり生産され、S&W社の.38口径リボルバーの主力として、その地位を確立しました。

設計

M10は、S&W社のKフレームに基づいて設計されており、シリンダーは1.56インチ(40mm)長の6連発です。トリガーメカニズムはシングルアクションとダブルアクションの両方に対応しています。小型のJフレームを使用するS&W M36と似た外観を持ちますが、M10はKフレームを使用しているため、一回り大きく、装弾数も1発多いのが特徴です。

各モデル

1899年式

1899年から1902年まで生産された最初期モデルです。.38スペシャル弾に加え、アメリカ軍制式の.38ロングコルト弾も使用可能でした。バレル長は4、5、6、6.5インチが用意され、バレル左側面には使用弾薬に関する刻印が施されていました。約21,000丁が生産されました。

1902年式

1902年から1904年まで生産された第2期モデルです。使用弾薬は.38スペシャル弾に統一されました。バレル底部にロッキングラグが追加され、エキストラクターロッドが大径化されています。

1905年式

1905年から1942年まで生産された第3期モデルです。用心鉄のスクリューが追加され、5スクリュータイプとなりました。細部に応じて4種類のサブタイプが存在し、1915年以降の生産型では、トリガーにセレーションが追加されました。各型合計で926,747丁が生産されました。

ビクトリーモデル

1942年から1945年まで生産された戦時量産モデルです。銃身長は4インチ、グリップはスクエアバット型で、底面にランヤードリングが付いています。アメリカ海軍の要請により、ハンマーブロック機構の強化改良が行われ、この改良は後のS&W製リボルバー全てに採用されることとなりました。第二次世界大戦中に242,291丁が生産されました。

戦後版

1946年から生産された戦後モデルです。1957年にはM10というモデルナンバーが付与され、それ以前の生産型はpre-M10と通称されます。銃身長は、従来の4、5、6インチに加え、2インチのスナブノーズ版が追加されました。1948年には撃発機構が改良され、現在に至るまで踏襲されています。

派生型

M10をベースに、異なる素材を使用したバリエーションも存在します。

アルミニウム製

アルミニウム合金を使用したモデルは、M12と呼ばれ、「ミリタリー&ポリス・エアウェイト」の愛称で親しまれました。軽量化が図られましたが、強度面の問題からシリンダーのみ炭素鋼製に変更されたモデルも存在します。

ステンレス製

ステンレス鋼を使用したモデルは、M64と呼ばれ、「ミリタリー&ポリス・ステンレス」の愛称で親しまれました。ニューヨーク市警察の要望により、特注モデルのM64 NY-1も製作されました。

射撃競技用モデル

M10（ミリタリー&ポリス）をベースとした射撃競技用モデルも製作されました。

.38スペシャル

K-38 ターゲット・マスターピース（M14）やコンバット・マスターピース（M15）などが存在します。M15をベースに2インチのヘビーバレルを装備したM56 KTX-38も試作されました。

その他口径

.22LR弾を使用するM17やM18、.22WMR弾を使用するM48、.32 S&Wロング弾を使用するM16など、様々な口径のバリエーションが存在します。

使用弾薬の違いによるバリエーション

.38スペシャル弾を使用するM10の他にも、異なる弾薬を使用するモデルが存在します。

.38-200

イギリス軍で制式採用されていた.38-200弾を使用するモデルも製作されました。第二次世界大戦中には、ビクトリーモデルをもとにしたモデルが開発され、多くがレンドリース法に基づいてイギリスに供給されました。

.357マグナム

M10の.357マグナム弾仕様として、M13が存在します。連邦捜査局（FBI）でも採用され、捜査官にとって理想的な拳銃と評価されました。

その他の弾薬

.22LR弾仕様のM45や、9x19mmパラベラム弾仕様のM547など、珍しいバリエーションも存在します。

コピーモデル

M10は、スミス&ウェッソン以外のメーカーでもコピーモデルが製造されています。スペインで製造された92 espagnolなどがその例です。

運用史

「ミリタリー&ポリス」の名のとおり、世界各国の軍隊や警察で広く使用され、現代リボルバーの原点となりました。アメリカの警察では自動拳銃が主流となりましたが、現在でも香港の警察などで現役で使用されています。日本の警察でも長らく使用されてきました。

ナチスの政治家、ヘルマン・ゲーリングもM10を愛用していたことが知られています。

M10は、その堅牢性、信頼性、そして多様なバリエーションにより、20世紀を代表する傑作リボルバーとして、今もなお多くの人々に愛されています。

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