SAKANAQUARIUM 暗闇

SAKANAQUARIUM 暗闇：光なき場所で響く革新

『SAKANAQUARIUM 暗闇』は、サカナクションが2021年に開催を予定していた、体験型音楽イベントです。残念ながら、新型コロナウイルス感染症の影響により中止となってしまいましたが、その独創的なコンセプトは、音楽史に新たな光を投げかけるものでした。

本イベントは、2019年に「あいちトリエンナーレ2019」で披露された音楽プログラム『暗闇 -KURAYAMI-』を基に企画されました。ここでは、開催中止に至るまでの経緯と、2019年の公演内容について詳しく解説します。

背景と開催中止までの経緯

2019年、サカナクションは「あいちトリエンナーレ2019」にて、音楽プログラム『暗闇 -KURAYAMI-』を実施しました。これは、トリエンナーレにおける音楽イベントの新たな試みとして、注目を集めました。サカナクションにとっても、この公演は翌年のホールツアー「SAKANAQUARIUM2020 "834.194 光"」のコンセプトに繋がるなど、重要なターニングポイントとなりました。

2020年11月、サカナクションは『暗闇 -KURAYAMI-』を再構築し、ワンマンイベント「SAKANAQUARIUM 暗闇」として開催することを発表しました。これは、コロナ禍で中止となったツアー「834.194 光」の代替企画であり、バンド初のオンラインライブ「SAKANAQUARIUM 光 ONLINE」に続く「次のアクション」と位置づけられていました。ファンにとっては、待望の有観客ライブとなるはずでした。

しかし、2020年12月、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、2021年初頭に予定されていた全公演の中止が決定。緊急事態宣言の発出も重なり、幻のライブとなってしまいました。

2019年の公演：暗闇が導く新たな音楽体験

サカナクションはこれまでも、ライブで暗転を取り入れる演出を行ってきました。しかし、2019年以降の公演では、コンサート全体を通して「暗闇」の中で演奏する時間が大幅に増え、より実験的な試みへと進化しました。

音響面では、「SAKANAQUARIUM 2018 "魚図鑑ゼミナール"VISUAL LIVE SESSION」で初採用されたd&b audiotechnik社の「Soundscape」システムを導入。暗闇の中での音響体験を追求しました。また、全編が真っ暗というわけではなく、照明や映像による演出も効果的に使用されました。演出映像は、ツアー「SAKANAQUARIUM2019 "834.194" 6.1ch Sound Around Arena Session」と同じく田中裕介が担当しました。

ライブは約1時間で構成され、以下の5つのセクションに分かれています。

1. プラクティス チューニング リズムのずれ

暗闇への「予行演習」として、完全暗転に耐えられない観客は退出できる時間が設けられました。

2. 第一幕 Ame(C)

「セントレイ」などに収録された「Ame(A)」、アルバム「シンシロ」の「Ame(B)」に続く新曲「Ame(C)」が演奏されました。

3. 第二幕 変容

アルバム『834.194』の収録曲「茶柱 -KURAYAMI version-」と「ナイロンの糸 -KURAYAMI version-」が、映像と共に演奏されました。

4. 第三幕 響

和太鼓や拍子木などの和楽器演奏、山口一郎による超指向性スピーカーを用いたパフォーマンスが行われました。

5. 第四幕 闇よ 行くよ

最後のパートは、映像や照明演出のない完全暗転でのパフォーマンスとなりました。

2021年の公演：受け継がれる暗闇のコンセプト

2020年に発表された2021年の公演は、2019年の公演と同様の4幕構成で、約1時間の内容となる予定でした。しかし、コロナ禍の影響により、残念ながら中止となってしまいました。

グッズ販売：ANREALAGEとのコラボレーション

本公演では、新型コロナウイルス感染症対策として、シキボウの抗ウィルス機能加工「フルテクト加工」を使用したアイテムを、ファッションブランドANREALAGEと共同で開発。公演中止後、これらのグッズはECサイトで販売されました。着用モデルには紅巴が起用され、話題を呼びました。グッズの中には、英語版Wikipediaの「闇」の記事が刺繍されたパーカーも存在します。

『SAKANAQUARIUM 暗闇』は、コロナ禍によって実現しませんでしたが、その革新的なコンセプトは、サカナクションの音楽性を語る上で欠かせない要素となっています。いつか、暗闇の中で彼らの音楽を体験できる日が来ることを願ってやみません。

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