SARU (漫画)

漫画『SARU』概要

『SARU』は五十嵐大介による日本の漫画で、2010年に小学館のIKKI COMIXから発表されました。この作品は、いにしえから世界各地に現れ、恐れられてきた「猿」にまつわる謎を追求する物語です。五十嵐は小説家伊坂幸太郎との競作企画の一環として、互いにアイデアを出し合いながら、独立した物語を構築しました。五十嵐が描くマンガ『SARU』と、伊坂による小説『SOSの猿』がそれぞれの形式で設定され、異なる視点から物語が展開されます。

物語の背景

本作はいにしえより人々に畏怖されてきた存在「猿」をテーマにしており、宗教や土着信仰と結びついてきた歴史があります。例えば、「斉天大聖孫悟空」と呼ばれるキャラクターも、その一例です。本作品では、現代において再び猿と対峙する人類の姿が描かれます。

あらすじ

物語は、ペルーのリマでの反魂の儀式から始まります。この儀式は征服者ピサロを蘇らせるもので、これをきっかけに世界各地で異変が発生します。フランスのパリでは、少女イレーヌが交通事故の唯一の生存者という悲劇に見舞われ、彼女は「悪魔憑き」として扱われることになります。一方、アングレームでは日本人留学生の奈々が、ブータンから来た僧侶ナムギャルに目の痛みの原因が黒魔術によるものだと指摘され、彼に同行することを決意します。

主な登場人物

• - イレーヌ・ベアール: 交通事故で両親を失い、「猿」が憑依するフランス人の少女。彼女は自らを「孫悟空」と名乗ります。
• - カンディド・アマンティーニ: バチカンのエクソシストで、イレーヌの謎を共に解く使命を帯びています。
• - ナワン・ナムギャル: ブータンの僧侶で、存在感のあるキャラクター。
• - 辺見奈々: フランスの学生で、ナムギャルに惹かれ同行。

重要な用語

• - 猿: 宗教や伝承において「悪魔」とされる知的生命体。多くの名称で呼ばれるが、共通点は「猿」のような姿で天候に関連しています。
• - アングレームの大猿: 「猿」の肉体の進化形で、強大な力を持ち続けている存在。
• - 暗殺団: 黒魔術を使い「猿」に憑依された者たちを狙う正体不明の集団。

作品の意義

『SARU』は、単なる神話や伝承を描くだけでなく、現代社会の中での人々の恐れや希望を映し出す深いテーマを持っています。五十嵐の独自の世界観と、伊坂との競作企画が生んだ独立した物語は、読者に多くの思索を促す作品となっています。物語の進行の中で、各キャラクターはそれぞれの困難に対処し、成長していく様子が丁寧に描かれています。これにより、読者は物語の中に入り込み、共感しやすくなっています。各登場人物の背景や関係性を掘り下げることで、物語はより一層奥深いものとなり、独創的な展開が繰り広げられます。

本作は全2巻が刊行されており、五十嵐大介の代表作の一つとして、多くのファンに親しまれています。

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