SCAT航空760便墜落事故

SCAT航空760便墜落事故の概要

2013年1月29日、カザフスタンのコクシェタウ発アルマトイ行きの国内定期旅客便、SCAT航空760便（ボンバルディア CRJ200型機）が、濃霧の中、目的地であるアルマトイ近郊のクィズィルツ村付近に墜落しました。この事故により、搭乗していた乗客16人と乗員5人、合わせて21人全員が尊い命を失いました。

事故発生までの経緯

SCAT航空760便は、現地時間11時19分にコクシェタウ空港を離陸しました。およそ40分後の12時00分、パイロットはアルマトイ管制と交信を行い、着陸予定の滑走路23Rの視程が200mまで低下していることを知らされました。その後、パイロットは高度8,000フィート（約2,400メートル）までの降下を許可されました。

しかし、機長は悪天候に強いストレスを感じていたとされています。12時57分、管制官は高度1,600メートルまでの降下を許可しましたが、気象条件は回復せず、機長の苛立ちはさらに増していきました。13時10分、高度180メートルという低い高度で、パイロットは着陸復航を開始しました。ところが、復航モードが起動してからしばらくの間、パイロットは操縦桿を操作しませんでした。4秒後、機長は突然操縦桿を前方へ押し込みました。この操作により、機体のピッチ角は-9度まで急降下し、EGPWS（対地接近警報装置）が作動しましたが、機長はさらに操縦桿を押し続けたため、機体は毎秒20～30メートルの降下率で空港から1kmのクィズィルツ村付近の地面に激突しました。

事故調査の結果

事故発生後、カザフスタンのセリク・アフメトフ首相の指示により、バクィトジャン・サギンタエフ第一副首相を長とする事故調査委員会が設置され、徹底的な調査が行われました。アルマトイの副市長マウレン・ムカシェフ氏は、事故現場を訪れた際、記者団に対し、暫定的な事故原因は悪天候であると述べました。また、機体は原形をとどめていないほど激しく損傷していたと証言しました。

2015年3月2日、国家間航空委員会（MAK）が最終報告書を公表しました。報告書では、機体が急降下した原因は特定できなかったものの、着氷やウインドシアといった外的要因の影響を示す証拠は発見されなかったと結論づけました。また、機体の機器に故障があったという証拠も見つかりませんでした。MAKは、事故の要因として、クルー・リソース・マネジメント（乗員間の連携）の欠如や空間識失調などが複合的に影響した可能性を指摘しました。パイロットは、悪天候によるストレスや、降下中の高度や位置の認識が曖昧になったことで、適切な操縦判断ができなくなったと考えられます。

この事故は、航空安全における悪天候への対策や、パイロットの訓練、そしてクルー間の連携の重要性を改めて浮き彫りにする出来事となりました。また、事故調査の難しさや、原因究明の複雑さを示す事例でもあります。

参考文献

“Окончательный отчет CRJ-200 UP-CJ006” (PDF) [最終報告書] (ロシア語). MAK (2015年2月27日).

外部リンク

Пресс-релиз - SCAT航空 （ロシア語） (Archive)
* CRJ-200 UP-CJ006 29.01.2013 - 国家間航空委員会 （ロシア語）

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