ボンバルディア CRJ

ボンバルディア CRJ：リージョナルジェットの先駆け

ボンバルディア CRJ（Bombardier CRJ）は、カナダのボンバルディア・エアロスペース社が製造・販売していた、リージョナルジェット旅客機のシリーズです。CRJファミリーとも呼ばれ、地域航空路線に特化した小型ジェット機として、世界中で広く利用されてきました。このシリーズは、短距離路線での需要に応えるために開発され、その成功はボンバルディア社を世界的な航空機メーカーへと押し上げる原動力となりました。

CRJファミリーの構成

CRJファミリーは、胴体の長さによって主に4つのモデルに分類されます。

CRJ100/200:
最も初期のモデルで、座席数は50席程度です。CRJ100は最初のモデルで、その後エンジンを改良したCRJ200が開発されました。短距離路線を中心に活躍しました。
CRJ700:
CRJ100/200の胴体を延長したモデルで、座席数は70席程度です。客室の快適性も向上しており、より多くの乗客を運べるようになりました。
CRJ900:
CRJ700をさらに延長したモデルで、座席数は90席程度です。地域航空路線での需要に応え、幅広い路線で活躍しました。
CRJ1000:
CRJファミリーの中で最も大型のモデルで、座席数は100席程度です。より長距離の路線にも対応できるようになりました。

これらのモデルには、航続距離を伸ばした派生型や、細かな仕様変更が加えられたモデルも存在します。CRJファミリーは、各航空会社のニーズに合わせて多様な選択肢を提供しました。

開発の経緯

1980年代、地域航空路線ではターボプロップ機が主流でしたが、より高速で快適なジェット機の需要が高まっていました。そこで、ボンバルディア社はビジネスジェット機「チャレンジャー600」の設計を流用し、開発費を抑えつつ、地域航空向けのジェット機開発に着手しました。

1987年にCRJ100の基本設計が開始され、1991年に初飛行を迎えました。その後、CRJ200、CRJ700、CRJ900、CRJ1000と、順次開発が進められました。CRJファミリーは、1990年代から2000年代にかけて、リージョナルジェット市場で圧倒的なシェアを誇りました。

日本企業の参画

CRJ700とCRJ900の開発には、日本の三菱重工業も参加し、胴体後部やエンジンパイロンの設計・製造を担当しました。しかし、その後、三菱重工業はボーイング787の開発に注力するため、ボンバルディア社との提携を解消しました。

NextGenへの進化

CRJファミリーは、開発から時間が経過し、競合他社の製品が登場するにつれて、競争力が低下しました。そこでボンバルディア社は、CRJファミリーの設計を見直し、改良版「NextGen」を開発しました。NextGenモデルでは、客室の快適性向上や機体の軽量化が図られました。

CRJの機体の特徴

CRJファミリーは、低翼配置の後退翼を持つ単葉機で、機体後部に2発のターボファンエンジンを搭載しています。客室は通路が1本のナローボディ機で、座席配置は2+2席が基本です。乗降ドアは機体前方の左舷にあり、内蔵された階段で地上に降りることができます。

コックピットには、グラスコックピットが採用され、自動操縦装置や対地接近警報装置などの最新のシステムが搭載されています。CRJは、ビジネスジェット機であるチャレンジャーの設計を流用して開発されたため、開発費を抑えることができました。しかし、客室の広さには限界があり、より広い胴体を持つ競合機が登場すると、市場競争力が低下しました。

ファミリー構成と派生型

CRJファミリーは、胴体の長さによって、CRJ100/200、CRJ700、CRJ900、CRJ1000の4種類に分類されます。それぞれのモデルには、航続距離を伸ばした派生型や、座席数を変更した派生型が存在します。

CRJ100/200:
CRJシリーズの最初のモデル。エンジン以外はほぼ同じ。CRJ200には貨物型も存在する。
CRJ700:
CRJ200をベースに胴体を延長。座席数は70席程度。
CRJ900:
CRJ700をベースにさらに胴体を延長。座席数は90席程度。
CRJ1000:
CRJファミリー最大のモデル。座席数は100席程度。

また、CRJ700をベースにした「CRJ550」という派生型も存在します。

運用の状況・特徴

CRJファミリーは、北米や欧州を中心に、世界中の地域航空会社で広く利用されてきました。特に北米では、多くの航空会社がCRJを運用しており、その数は全体の7割近くに達します。日本では、ジェイエアとアイベックスエアラインズがCRJを導入していましたが、現在はCRJ700のみが運航されています。

MHIRJへの移管

2020年、ボンバルディアはCRJ事業を三菱重工業に売却しました。現在、CRJの保守・メンテナンスは、三菱重工業の子会社であるMHIRJが行っています。MHIRJは、CRJの製造を再開する可能性も指摘されていますが、現時点ではその予定はないとされています。

主な事故・事件

CRJファミリーは、これまでに複数の事故・事件が発生しており、死者を伴う事故も起きています。これらの事故は、主にCRJ100/200で発生しており、CRJ700/900では比較的少ない傾向にあります。CRJ1000については、重大な事故は報告されていません。

まとめ

ボンバルディアCRJは、リージョナルジェット市場の先駆けとして、航空業界に大きな影響を与えた機種です。多様なモデル展開と、その高い信頼性から、世界中の地域航空路線で広く利用されてきました。現在では、事業が三菱重工業に移管されていますが、その歴史と実績は色褪せることはありません。

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