SCMS

SCMS（シリアルコピーマネジメントシステム）とは

SCMS（Serial Copy Management System、シリアルコピーマネジメントシステム）は、民生用デジタル録音機器に搭載されたコピー防止技術です。主にDAT、Mini Disc、DCC、CDレコーダーといった機器で利用され、デジタル接続における著作権侵害を抑制する役割を担っています。

SCMSの概要

SCMSは、デジタル接続によるコピーを1世代のみに制限するシステムです。具体的には、SCMS対応機器間でデジタルコピーを行う際、最初のコピーは許可されますが、そのコピーからさらにデジタルコピーを試みると、録音側の機器がコピー情報を検出し、録音を停止します。これにより、デジタルコピーの連鎖を断ち切る仕組みとなっています。

ただし、SCMSはアナログ接続によるコピーには影響を与えません。アナログ接続であれば、無制限にコピーが可能です。この点が、デジタル技術の普及と共に生じた著作権保護の課題を示唆しています。

また、音楽コンテンツの制作やメディアのバックアップを目的とした業務用デジタル録音再生機器では、SCMSの制限を解除できる機能が搭載されていることがあります。これは、著作権者が自らのコンテンツを自由に扱えるようにするための措置です。

SCMS-T（派生規格）

SCMSには、派生規格としてSCMS-Tが存在します。SCMS-Tは主にBluetoothを利用した音楽転送時に用いられ、auやNTTドコモ、ソフトバンクモバイルの一部機種で採用されています。

例えば、auのW44Tシリーズや、NTTドコモのP902iSなどのBluetooth対応携帯電話では、付属のワイヤレスレシーバーなどに音楽を転送する際にSCMS-Tが用いられます。また、一部のAndroid搭載スマートフォン用LISMO Playerでも、Bluetoothレシーバーやヘッドフォンを使用する際にSCMS-T対応機器が必要です。

SCMS-Tは、デジタルコピーを制限する基本的な考え方はSCMSと同じですが、Bluetoothなどのワイヤレス環境での利用を想定している点が特徴です。しかし、対応機器に関する情報は取扱説明書に小さく記述されていることが多く、ユーザーがその存在に気づきにくいという課題もあります。

SCMSの仕組み

SCMSの仕組みは、各トラックの最後に記録された「コピービット」という2桁の管理情報に基づいています。このコピービットはID6コードとも呼ばれ、以下の4つのパターンがあります。

- 00：無制限コピー可能
- 01：未定義（基本的に「一回だけ録音可」で処理）
- 10：コピー不可能
- 11：一回だけコピー可能

SCMS対応機器は、録音時にこのコピービットを読み取り、設定されたルールに従って録音を制御します。一部のSCMS搭載機器では、隠しコマンドによってID6コードを表示させ、テープがコピー可能かどうかを確認することができます。

コピービットと著作権法

コピービットを書き換えて、コピーを永久可能にする装置を販売または購入すると、1999年以降の著作権法や不正競争防止法により違法行為となります。ただし、自身が著作権を持つコンテンツに関しては、SCMSの制限を受ける必要はありません。

かつては、電子工作専門店でSCMS解除装置作成キットが販売されていましたが、1999年の法改正により販売が禁止されました。これにより、個人やアマチュアの音楽グループは、コンテンツのバックアップに高価な業務用機器を使用せざるを得なくなりました。

MDなどのメディアでは、異なるコピービットを持つトラックを結合すると、コピー制限が最も厳しいものに自動的に合わせられます。また、SCMS導入以前の機器では、コピービットが異なる解釈をされることもあり、デジタルコピーが可能なケースも存在しました。

SCMSとコピーガード

SCMSは、コピーガード技術の一種です。デジタル録音機器の普及に伴い、著作権保護の必要性が高まったことから、このようなコピー防止技術が導入されました。しかし、アナログ接続によるコピーは制限できないため、技術と法律の両面から、著作権保護の対策が求められています。

まとめ

SCMSは、デジタルオーディオ機器におけるコピー防止の基本的な技術であり、その仕組みと法的な背景を理解することは、著作権を尊重し、音楽文化を持続可能なものとする上で重要です。技術の進歩に伴い、新しいコピーガード技術が登場する一方で、SCMSのように長年にわたって利用されている技術も存在します。これらの技術の歴史を振り返ることは、デジタルコンテンツの保護における課題と進歩を理解する上で不可欠です。

もう一度検索