SHIROH

『SHIROH』（シロー）は、いのうえひでのりと中島かずきがタッグを組んだ、劇団☆新感線初のロックミュージカル作品です。天草四郎と島原の乱という史実をベースに、ロック音楽と演劇を融合させた、他に類を見ないエンターテインメント作品として多くの観客を魅了しました。

制作の背景

脚本を担当した中島かずきは、高校時代に『ジーザス・クライスト・スーパースター』に衝撃を受け、神と人間の物語を歌で表現することに強い興味を抱いていました。一方、演出のいのうえひでのりは、L'Arc〜en〜Cielのコンサートで、ボーカリストと観客の一体感に感銘を受け、カリスマ性を持つボーカリストが宗教家のように見えるという着想を得ました。これらの要素が結びつき、天草四郎の悲劇的な物語がロックミュージカルとして蘇ることになりました。

構想には10年近い歳月が費やされ、主演にはミュージカル『モーツァルト!』でその歌唱力を高く評価されていた中川晃教が選ばれ、舞台化が実現しました。

あらすじ

物語の舞台は、徳川家光の時代。鎖国政策が敷かれる中、九州の島原では重税と飢饉に苦しむ農民たちが、キリシタン弾圧に耐えながらも信仰を続けていました。隠れキリシタンの中心人物である益田甚兵衛とその娘レシーナお福は、「天の御子」が現れると説き、民衆を扇動していました。その噂は、甚兵衛の息子、益田四郎時貞に向けられていましたが、四郎自身はかつての奇跡の力は失っており、苦悩していました。

一方、天草にはシローという名の少年がいました。彼は、伴天連と日本人の間に生まれた混血児であり、不思議な歌の力を持っていました。彼の歌は人の心を操り、役人たちを翻弄するほどでした。その力を目にした伊賀のくノ一、水鏡のお蜜は、幕府の密偵として潜入しており、シローの力を幕府に報告します。

島原藩の窮状を訴える藩主の松倉勝家に対し、老中の松平伊豆守信綱は、この状況を利用して幕府の支配を強固にする策略を巡らせます。そのためにシローの存在を利用し、キリシタンの反乱を徹底的に鎮圧しようと画策していました。

やがて、四郎は父と姉が捕らえられたことを知り、反乱軍を率いて牢獄に攻め入ります。そこで出会ったのが天草のシローでした。シローの歌によって力を得た囚人たちは、反乱軍に加わり、彼こそが「天の御子」だと確信します。二人のシローは互いに手を取り合い、島原・天草の反乱軍は大きな盛り上がりを見せます。しかし、その聖戦の行く末には悲劇が待ち受けていました。

主な登場人物

シロー：不思議な歌の力を持つ混血の少年。中川晃教が演じました。
益田四郎時貞：かつて「奇跡の子」と呼ばれたが、力を失った青年。上川隆也が演じました。
山田寿庵：闇市を開き、キリシタンや農民を支援する人物。高橋由美子が演じました。
益田甚兵衛：隠れキリシタンの中心人物。植本潤が演じました。
レシーナお福：甚兵衛の娘。杏子が演じました。
松平伊豆守信綱：幕府の老中。江守徹が演じました。
水鏡のお蜜：伊賀のくノ一で幕府の密偵。秋山菜津子が演じました。
柳生十兵衛：幕府の密偵。橋本じゅんが演じました。

楽曲

音楽は岡崎司が担当し、デーモン小暮閣下、山野英明、中島かずき、いのうえひでのりが作詞を手がけました。ロックサウンドとドラマチックな歌詞が、物語を盛り上げます。

DVD

本作の舞台映像が収録されたDVDが発売されており、東京と大阪の千秋楽カーテンコールの映像や、アドリブ集などの特典映像が収録されています。また、音声特典として、キャストやスタッフによる音声解説も楽しめます。

まとめ

『SHIROH』は、歴史とファンタジー、そしてロック音楽が融合した、劇団☆新感線ならではのエンターテインメント作品です。中川晃教と上川隆也の熱演、そして豪華キャストによる圧巻の舞台は、多くの観客に感動を与えました。舞台を見たことがない人も、DVDを通してその魅力を体験できます。

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