SL人吉

SL人吉とは

SL人吉は、かつて九州の大自然を背景に運行されていた臨時快速列車です。この列車は、熊本駅から人吉駅までを結び、蒸気機関車58654号機が牽引する形で運行されていました。運行が開始されたのは1988年のことです。当初は「SL人吉号」として、熊本と人吉の間を走っていましたが、次第にその運行区間や名称が変更され、2024年に長い歴史に幕を下ろすこととなりました。

歴史のはじまり

1988年、58654号機は動態復元され、初めて「SLあそBOY」として営業運転を開始しました。この機関車はもともと人吉市に静態保存されていたもので、熊本と人吉間の観光列車としての役割を担いました。1998年には正式に「SL人吉号」も運行を開始し、多くの観光客を魅了しました。

運行の変遷

2005年に58654号機が故障し、運行が一時休止となるも、修復を懸けて再び運行が再開され、2009年には新たな形で「SL人吉」として出発しました。この新たな運行では、葬られた58654号機と改装された客車によって、熊本と人吉間での運行がスタート。以降、多くの観光客に愛される列車として成長していきました。

しかし、2020年に起こった令和2年7月豪雨の影響で運行が一時中断し、2021年からは運行区間を熊本 - 鳥栖間に変更。蒸気機関車の老朽化など、様々な理由から2024年に運行を終了することが発表されました。

最後の運行

2024年3月、SL人吉は最後の運行を迎えました。当日は特別運行として、長年の運行に幕を下ろしました。人吉市はこの特別な蒸気機関車の保存を求める声を上げ、58654号機は無償譲渡される方向で進められました。

運行ダイヤとシステム

SL人吉は、熊本から人吉間を約3月から11月までの金曜日から日曜日、祝日及び夏休み期間中に運行していました。全ての席は指定席で、乗車券とともに指定席券が必要でした。また、指定席料金は840円で、特に家族連れや観光客に人気でした。2021年以降は、新たな運行ルールに基づき、運行区間が変更されたものの、依然として多くのファンに愛され続けていました。

車両と設備

使用されていた58654号機は、3両の50系客車と共に、展望ラウンジやビュッフェを備えた車両構成で、旅行中の快適さを提供しました。さらに、デザインには水戸岡鋭治が手掛けた新しいスタイルが施され、車内はリフレッシュされていました。顧客にとって、かつてない贅沢な旅行体験を提供していたこの列車は、これからも記憶に残る存在となることでしょう。

結び

SL人吉は、ただの列車という枠を超えて、九州の自然と文化を楽しむための貴重な存在でした。運行終了により、物語は一つの章を閉じるものの、乗客たちの心には、蒸気機関車が描く旅の思い出が永遠に残ることでしょう。

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