SL銀河

SL銀河：釜石線を彩った星空の列車

SL銀河は、東日本旅客[[鉄道]]（JR東日本）が花巻駅 - 釜石駅間を釜石線経由で運行していた臨時快速列車（観光列車）です。蒸気機関車（SL）が牽引し、その美しい姿と内装で多くの人々を魅了しました。特に、東日本大震災からの復興を支援する目的で運行されたことは、SL銀河が単なる観光列車以上の意味を持つことを示していました。

誕生の背景と目的

2011年の東日本大震災は、東北地方に甚大な被害をもたらしました。JR東日本では、この震災からの復興を支援するため、観光客を呼び戻し、地域を活性化させるプロジェクトを立ち上げました。その一環として、岩手県盛岡市の公園で静態保存されていたC58形蒸気機関車239号機を修復し、再び線路を走らせる計画が持ち上がったのです。

このC58 239は、1940年に製造され、1972年に引退した後、長らく公園で保存されていました。しかし、震災復興への願いを込めて、再び火を灯し、力強く走る姿を見せることになったのです。

列車名である「銀河」は、岩手県出身の作家、宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』に由来します。釜石線が銀河鉄道の夜の舞台となったことにちなみ、列車内装も銀河鉄道の夜をモチーフにした幻想的な空間が演出されました。

SL銀河の特徴

C58形蒸気機関車239号機

SL銀河の牽引機は、C58形蒸気機関車239号機です。動態復元に際しては、安全対策や性能向上のための改修が行われましたが、外観はできる限り当時の姿が保たれました。黒光りする車体と、力強い蒸気の噴出は、鉄道ファンならずとも心を奪われるものでした。

キハ141系700番台客車

客車には、キハ141系気動車（700番台）が使用されました。元々は北海道の50系客車を改造したもので、JR東日本が再改造し、SL銀河専用の客車として生まれ変わらせました。外装は、銀河鉄道の夜をイメージしたグラデーションカラーで彩られ、星座や動物のシンボルが描かれていました。内装も、ガス灯風ランプやステンドグラス風の飾り照明、南部鉄器風の荷棚など、大正ロマンを感じさせる豪華な仕上がりでした。

銀河鉄道の夜の世界観

SL銀河の最大の特徴は、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の世界観を再現した内装です。客車内は、星座をモチーフにしたパーテーションで仕切られ、ブラインドはカーテンに変更。ガス灯風の照明が、幻想的な雰囲気を醸し出していました。また、車内ではプラネタリウムの上映や図書の貸し出しなども行われ、乗客は銀河鉄道の夜の世界に浸ることができました。

運行と終焉

SL銀河は、2014年4月12日に運行を開始し、主に土日祝日に花巻駅 - 釜石駅間を1往復しました。沿線には多くの鉄道ファンや観光客が詰めかけ、SL銀河の雄姿をカメラに収めようとしました。

しかし、客車の老朽化により、2023年6月11日の団体臨時列車を最後に、SL銀河はその役目を終えました。約9年間の運行期間中、多くの人々に夢と感動を与え、震災復興のシンボルとして愛されたSL銀河の姿は、今も人々の記憶に深く刻まれています。

釜石線におけるSL列車運行の歴史

SL銀河の運行以前にも、釜石線ではSL列車が運行されていました。1989年から2004年までは、「SL銀河ドリーム号」という列車が、D51形蒸気機関車498号機によって牽引されていました。SL銀河ドリーム号も、釜石線の観光振興に大きく貢献しましたが、2004年を最後に運行を休止しました。

SL銀河は、SL銀河ドリーム号の意思を受け継ぎ、釜石線のSL列車運行の歴史に新たな1ページを刻んだと言えるでしょう。

SL銀河の遺産

SL銀河の運行は終了しましたが、その遺産は今も受け継がれています。2023年12月からは、HB-E300系気動車を使用した臨時快速「ひなび釜石」が運行を開始し、SL銀河の後継列車として、釜石線の観光を盛り上げています。

また、C58形蒸気機関車239号機は、今後も動態保存される予定です。いつか再び、その雄姿を拝むことができるかもしれません。

SL銀河は、震災復興のシンボルとして、そして宮沢賢治の世界観を体現した観光列車として、多くの人々の心に残り続けるでしょう。

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