SONY Master

SONY Master（ソニー・マスター）とは

SONY Master（ソニー・マスター）は、かつてソニー（現・ソニーグループ）が1986年（昭和61年）から1999年（平成11年）にかけて製造・販売していた、ハイポジション用およびメタルポジション用の最高級コンパクトカセットシリーズの商標です。当時のカセットテープ市場において、TDKのSA-XG、MA-R、MA-XGや日立マクセルのMetal Vertexなどと並び、高級カセットテープの代名詞として知られていました。HF-PROやUX-PRO、Metal-ESなどの一般的なカセットテープよりも一段上の性能を誇り、音質にこだわるオーディオファンから絶大な支持を得ていました。現在では既に生産が終了しており、オークションサイトなどでは希少なコレクターズアイテムとして扱われ、価格が高騰し続けています。

各シリーズの特徴

SONY Masterシリーズには、以下の3つの主要なモデルが存在します。

UX Master

1987年（昭和62年）4月に発売されたUX Masterは、その革新的な設計が特徴です。カセットハーフ全体にセラミック素材を使用し、HF-PROやUX-PROにも搭載されていたセラミックテープガイドを採用。これにより、テープ走行時のヘッドとの接触の不均一や外部振動による音の濁り、変調ノイズを抑制する効果がありました。また、ハーフ素材の特性から、録音保護用の爪を折ることができなかったため、プラグ式の着脱可能な機構を採用。ハーフへの印字は、インスタントレタリングによるものでした。価格は、46分800円、60分1000円、90分1400円でした。1991年（平成3年）5月には、ES・Ⅱシリーズに統合される形で生産・出荷を終了しました。

Metal Master

1986年（昭和61年）11月に発売されたMetal Masterは、UX Masterに先駆けて登場しました。カセットハーフの仕様は、オートテープセレクター用自動検出孔の種類を除き、UX Masterとほぼ同じでした。価格は、46分1,400円、60分1,600円、90分1,900円と、UX Masterよりも高めに設定されていました。発売当時のキャッチコピーは「頂点を目指した音」であり、その高性能をアピールしていました。1993年（平成5年）9月には、後述のSuper Metal Masterに統合され、生産・出荷を終了しました。

Super Metal Master

1993年（平成5年）9月に発売されたSuper Metal Masterは、SONY Masterシリーズの最後の最高級モデルです。基本的なカセットハーフの仕様はMetal Masterと同じですが、ケースが大きく変更されました。従来のプラスチックケースから、高級感のある金属製（アルミ製）ケースへと進化。これにより、所有する喜びをさらに高めました。価格は、46分2,000円、60分2,300円、90分2,600円（いずれも税別）と非常に高価で、当時のDAT用ブランクテープと比較しても、録音時間あたりのコストはさらに高くなっていました。これは、手軽に使えるものではなく、特別な高級感と高音質を追求した結果と言えます。1998年（平成10年）6月に生産・出荷を終了し、2000年（平成12年）末までに市場での流通・販売も終了しました。しかし、ソニーのホームページには1999年（平成11年）6月頃まで掲載されていました。

まとめ

SONY Masterシリーズは、当時のカセットテープ技術の粋を集めた最高級モデルとして、多くのオーディオファンを魅了しました。その優れた音質と希少性から、現在ではコレクターズアイテムとして高値で取引されています。これらのカセットテープは、かつて音楽を聴くためだけでなく、所有する喜びも与えてくれる特別な存在でした。

参考文献

ONTOMO MOOK stereo編『カセットテープ完全アルバム 僕たちの青春を彩ったカセットテープのすべて』（2023年12月1日発行、音楽之友社、ISBN 978-4-276-96368-9）
FUTABASHA SUPER MOOK『〜ソニー・カセットテープ・マニアックス〜』（2024年6月18日発行、双葉社、ISBN 978-4-5754-5971-5）

関連項目

カセットテープ

外部リンク

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