SORA-Q

SORA-Q（ソラキュー）: 超小型変形型月面ロボット

SORA-Qは、日本の宇宙機関JAXA（宇宙航空研究開発機構）、玩具メーカーのタカラトミー、ソニーグループ、そして同志社大学が共同で開発した超小型の月面探査ロボットです。正式名称は「LEV-2」（Lunar Excursion Vehicle 2）で、主に月面探査を目的としています。2024年1月20日、SORA-Qは月着陸実証機SLIMと共に月面に着陸し、世界初の完全自律を実現したロボットによる月面探査を行いました。その際、SORA-Qは、世界最も小さく、軽量な月面探査ロボットとしても注目されています。

開発の経緯

タカラトミーは、2007年に発売された「i-SOBOT」以降もロボット技術の開発を続けており、2015年にはJAXAが設立した「宇宙探査イノベーションハブ」の下で新たな研究機会を得ました。タカラトミーは「昆虫型ロボットの研究開発」を提案し、2016年には直径100mm、重量300gのロボットを開発しました。この成功はJAXAの担当者に高く評価され、その後、月着陸計画に小型ロボットが載せられることとなりました。

このプロジェクトでは、2019年からソニーも参加し、最終的に同志社大学も加わり、4者による共同開発が始まりました。SORA-Qのデザインには、タカラトミーの玩具技術が活かされており、「ゾイド」シリーズや「トランスフォーマー」、さらには二足歩行ロボット「i-SOBOT」などの開発革新が取り入れられています。

仕様と技術

SORA-Qは、展開前は直径約80mmの球形で、展開後は幅123mm、高さ90mm、奥行136mmの大きさになります。質量は228gで、二種類の移動モード（バタフライ走法とクロール走行）を備えています。最大で30度の登坂が可能で、搭載されたSPRESENSEプロセッサとカメラ、各種センサを用いて自律的に動作を行います。特に、月面での砂に対する動きは、ハゼやウミガメの動きからヒントを得ています。

内部にはバネが仕込まれており、月面での展開後に左右の外殻が開き、車輪が形成されて移動が可能になります。前方と後方にカメラがあり、前方カメラで状況を確認しつつ後方カメラで走行した跡を撮影します。これにより、探査機が周囲の状況を把握できるようになっています。

HAKUTO-Rミッション1

2021年、JAXAはispaceと協力し、HAKUTO-RミッションにSORA-Qを搭載することを決定しました。このミッションでは、月着陸機からSORA-Qを放出し、月面探査データを取得する計画でした。 SORA-Qは地球から指示を受けて動作し、実施した行動と得られたデータは地上に送信されました。

2023年4月24日、SORA-Qは月面着陸及びその後の探査活動に至るまでの訓練を行い、その後、所定の着陸も予定されていましたが、通信の途絶があり、着陸は成し遂げられない結果となりました。

市販モデルと評価

SORA-Qは2022年に一般公開され、タカラトミーはSORA-Qの玩具モデルを製造しました。フライトモデルを基にした「SORA-Q Flagship Model」も展開されており、スマートフォンアプリを使って操作が可能です。また、SORA-Qは複数のデザイン賞や表彰を受けており、各種イベントでも展示が行われています。

このようにSORA-Qは、宇宙探査における技術革新の一環として非常に重要な役割を果たしており、その成果は世界中で評価されています。

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