SPARCstation

SPARCstation, SPARCserver, SPARCcenter



SPARCstation（スパークステーション）、SPARCserver（スパークサーバー）、SPARCcenter（スパークセンター）は、1980年代後半から1990年代にかけて、サン・マイクロシステムズによって開発・販売された、SPARCプロセッサを搭載した高性能なワークステーションおよびサーバのシリーズです。これらのシステムは、研究開発、ソフトウェア開発、グラフィックス処理など、幅広い分野で利用されました。

歴史と市場での成功



本シリーズの歴史は、1989年に発表された初代モデル、SPARCstation 1（Sun 4/60としても知られる）から始まりました。このシステムは、先行するSun 4/260で採用されたSun-4cアーキテクチャを基盤としており、登場するやいなや高い人気を獲得しました。当時、競合他社のプロセッサ開発に遅れが生じていたこともあり、SPARCstationシリーズはサン・マイクロシステムズの事業全体にとって、非常に大きな成功をもたらす原動力となりました。シリーズはその後、進化を続け、最後のSPARCstationを冠するモデルはSPARCstation 20でした。しかし、時代の流れとともに、このシリーズは1995年に後継となるSun Ultraシリーズへと置き換えられる形で、その役目を終えることになります。

モデルと構成の違い



SPARCstationとSPARCserverは、しばしば同じモデル番号を持つ機種が存在しました（例：SPARCstation 20とSPARCserver 20）。これらのシステムは、マザーボード、CPU、筐体設計など、ハードウェアの大部分において共通していました。主な違いは、サーバとして出荷されるモデルが一般的にグラフィックスカードやモニタを含まない「ヘッドレス」構成であり、付属するオペレーティングシステムライセンスがサーバ向けであったという点でした。これにより、同じハードウェアでも、用途に応じた柔軟な販売が可能となっていました。

多様なフォームファクタ



本シリーズのシステムは、設置場所や用途に応じて、様々な筐体デザインが採用されました。特にデスクトップ向けのSPARCstationやSPARCserverの多くは、薄型の「ピザボックス型」や、やや背の高い「ランチボックス型」といったコンパクトな筐体を採用しており、同世代の競合製品と比較してユニークな特徴となっていました。「ピザボックス型」の代表例としてはSPARCstation 1, 2, 4, 5, 10, 20などがあり、「ランチボックス型」にはSPARCstation IPC, IPX, SPARCclassic, SPARCclassic X, SPARCstation LXなどがありました。一部モデル（SPARCstation SLC, ELC）は、モノクロモニタと筐体が一体化した設計も存在しました。

一方、より大規模なシステム向けには、デスクサイド型のペデスタル筐体やラックマウント型筐体が用意されました。品番が「30」や「70」で終わるSPARCserverモデルはデスクサイド型（それぞれ5スロットおよび12スロットのVMEバスを内蔵）であり、品番が「90」で終わるモデルやSPARCcenter 2000はラックマウントキャビネットに搭載されるタイプでした。SPARCserver 1000シリーズは、大型ながらラックマウントも可能なデスクトップ型という独特のフォームファクタでした。

技術的な特徴と拡張性



初期のモデルはSun-4およびその派生であるSun-4cアーキテクチャに基づいていました。後期のSPARCstation 10や20といったモデルでは、MBusと呼ばれる高速バスが導入され、これによりマルチプロセッサ構成が可能となりました。これらのシステムは、シングルまたはデュアルプロセッサを搭載したMBusモジュールを1つまたは2つ使用することができました。また、SPARCstation 2には、モノクロモデルに加え、カラー対応のGX、3次元グラフィックスを強化したGS、さらに高速なGTといった複数のグラフィックスバリエーションが存在しました。

モデル番号の付与についても変遷が見られます。SPARCserver 600MPシリーズが登場するまでは、多くのSPARCstation/serverモデルにSun-4シリーズとしてのモデル番号も併記されていましたが、それ以降のモデルでは「S」で始まる新しいモデル番号体系が採用されました。

本シリーズのシステムは、サードパーティ製のプロセッサアップグレードモジュールを利用することで、性能を向上させることも可能でした。例えば、Weitek POWER μPやRoss HyperSPARC MBusモジュールなどが提供されていました。また、デスクサイド型のVMEバススロットには、i860プロセッサを搭載したVX/MVXといったグラフィックスアクセラレータを増設することも可能であり、高い拡張性を備えていました。

利用例



SPARCstationやSPARCserverは、その信頼性と性能から、様々な場所で活用されました。日本の商用パソコン通信サービスとして知られるニフティサーブにおいても、そのホストマシンの一つとして採用されるなど、広く普及していました。

SPARCstation、SPARCserver、SPARCcenterシリーズは、サン・マイクロシステムズがUNIXワークステーション・サーバ市場で大きな地位を築く上で、極めて重要な役割を果たした製品群と言えます。多様なニーズに応える豊富なラインナップと、時代の先端を行く技術革新が融合した、記憶に残るシリーズです。

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