SPARK (ロケット)

SPARKロケット

SPARK（スペースボーン・ペイロード・アシスト・ロケット - カウアイ）は、「ザ・スーパー・ストライピ」という別名でも知られる、アメリカ合衆国で計画・開発された人工衛星打ち上げシステムです。このプロジェクトは、アメリカ空軍、ハワイ大学、そしてロケットエンジンの専門企業であるエアロジェット・ロケットダインという異色の組み合わせが協力して推進しました。その主たる目的は、小型の人工衛星を宇宙空間、特に太陽同期軌道へ効率的かつ低コストで投入することにありました。

開発の背景と目標性能

近年の宇宙開発におけるトレンドの一つとして、比較的小型の衛星（スモールサット）の利用拡大が挙げられます。これらの衛星は、地球観測、通信、技術実証など、多様なミッションに活用されています。しかし、大型ロケットの打ち上げ機会を待ったり、相乗りで打ち上げたりする方法では、コストが高額になったり、希望する軌道や時期に柔軟に対応できなかったりすることが課題となっていました。SPARKロケットは、こうした課題を解決するため、スモールサットに特化した専用の打ち上げ手段として構想されました。

SPARKロケットは、全長約17メートル、最大直径約1.5メートルというコンパクトな機体として設計されました。この規模で、地球観測などに適した太陽同期軌道へ、最大250キログラムのペイロード（衛星などの搭載物）を送り込む能力を目指していました。機体は合計で3つの段から構成される固体燃料ロケット方式が採用されました。固体燃料ロケットは、構造が比較的単純で製造や取り扱いが容易であり、液体燃料ロケットに比べて迅速な打ち上げ準備が可能であるという運用上の利点があります。SPARKの第1段には、「LEO-46」と呼ばれる固体燃料ロケットモーターが使用される予定でした。ロケット全体の離陸時の重量は、公表されている諸元によれば28,240キログラムでした。

開発体制にハワイ大学が含まれている点は特徴的です。これは、大学が宇宙開発の最前線に立ち、研究開発や人材育成に貢献しようとする姿勢を示すものです。また、プロジェクト名に「カウアイ」が含まれていることからもわかるように、ハワイ州カウアイ島にある太平洋ミサイル試射場（PMRF）からの打ち上げが想定されていました。

唯一の打ち上げと結果

SPARKロケットは、その開発段階を経て、実際の宇宙空間を目指す初の試みが行われました。これが、SPARKにとって現時点までで唯一記録されている飛翔実績となっています。

打ち上げは、2015年11月3日に実施されました。この試験打ち上げは、ロケットシステム全体の機能、性能、安定性などを確認するための重要なステップとなるはずでした。しかし、残念ながら、機体は打ち上げ後に予期せぬ問題に直面しました。公式の報告によると、ロケットは飛行中に制御システムに異常が発生し、その結果、正常な飛行経路を維持することができず、制御不能な状態に陥りました。このため、計画された軌道への投入は実現せず、打ち上げは失敗という結果に終わりました。この一度きりの失敗は、その後のSPARKロケットの開発計画に決定的な影響を与えたと考えられています。

技術的特徴と位置づけ

SPARKロケットが採用した3段式の固体燃料ロケットという形式は、信頼性が比較的高い一方で、一度着火すると燃焼を停止したり推力を自在に調整したりすることが難しいという特性も併せ持ちます。低コスト化や迅速な打ち上げを目指す上で、固体燃料方式は理にかなった選択であったと言えます。ペイロード能力250kg級という仕様は、まさに現代のスモールサット市場、特に小型の地球観測衛星や技術実証衛星のニーズに応えるサイズでした。日本でも、かつては観測ロケットを改修したラムダロケットや、近年のSS-520ロケット、S-520ロケットなど、小型ペイロードの打ち上げに特化したロケットが開発・運用されています。SPARKは、これらのロケットと同様に、大型ロケットの補助的な手段ではなく、独自のスケジュールと目的に沿って小型衛星を打ち上げるための選択肢となることを目指していました。

結論

SPARKロケット、「ザ・スーパー・ストライピ」として知られるこのシステムは、アメリカ空軍、ハワイ大学、エアロジェット・ロケットダインの連携により、小型衛星打ち上げというニッチ市場をターゲットに開発されました。太陽同期軌道への250kg級ペイロード投入という目標を掲げ、低コストと迅速な打ち上げ実現を目指しましたが、2015年11月3日に行われた唯一の初打ち上げが制御異常により失敗に終わったことで、その開発は事実上停止状態にあると見られます。SPARKプロジェクトは、多様化する宇宙利用に対応するための新しい打ち上げ手段として期待されましたが、その可能性を示す前に技術的な課題に直面し、短い歴史に幕を下ろすこととなりました。

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