S-520ロケット

S-520ロケット

S-520ロケットは、宇宙科学研究所（現在のJAXAの一部）によって開発された、観測用の単段式固体燃料ロケットです。このロケットの名前にある「S」は単段式であることを示し（2段式の場合はSS-520となります）、「520」はロケットの直径が520mmであることを表しています。

概要

S-520ロケットは、主に観測機として利用されていたK-9Mロケットの後継機として計画されました。当初はS-500という名称で、南極での利用も考慮された計画がありましたが、直径が520mmに変更され、S-520として開発されました。合計26機が打ち上げられ、そのうち23機が内之浦宇宙空間観測所から、3機がノルウェーのアンドーヤロケット発射場から打ち上げられました。また、派生型として、第2段を追加したSS-520が存在します。

技術的特徴

S-520ロケットは、単段式であることから、組み立てや打ち上げ時の作業性が向上しました。単段式でありながら、旧型のK-9Mロケットの2倍の打ち上げ能力を実現しています。推進系には、ミューロケットの第1段と同じ直填式の高性能ブタジエン系コンポジット推進薬が採用されています。また、S-310ロケットと同様に、2段型最適推力プログラムを採用し、ロケット前部のクローバー型断面部で初期の高推力を、後部の円筒型断面部で後期の低推力を補う設計となっています。さらに、ノズル開口比を8と比較的大きくすることで、実効比推力の向上も図られています。

構造系においては、当初モータケースに超高張力鋼HT-140を使用していましたが、23号機以降はS-310ロケットと同様にクロムモリブデン鋼が使用されています。尾翼には、前縁にチタン合金、平行部にアルミハニカムをコアとしたGFRP/CFRPの積層を表板とするサンドイッチ構造が採用されており、軽量で耐熱性に優れた構造となっています。科学観測機器は、CFRP製のノーズフェアリング内に収納され、基本計器は底部の平行部に収納されます。オプションとして、基本計器とモータの間に姿勢制御モジュールや回収モジュールを搭載することも可能です。

派生型

SS-520

SS-520は、S-520ロケットを2段構成に拡張した派生型であり、1998年に初打ち上げが行われました。開発当初から、3段目を追加することで人工衛星の打ち上げも可能であると考察されており、5号機によって2018年にそれが実証されました。

計画

以下は、計画段階で存在したものの、実現には至らなかったS-520ロケットの拡張案です。実現したSS-520ロケットやそれによる人工衛星打ち上げとは異なる点があります。

NS-520

S-520ロケットにブースターを追加し、高高度に到達させる計画でした。

NL-520

S-520ロケットにブースターと上段を追加し、高度250kmの軌道に20kgの人工衛星を打ち上げる計画でした。

AL-520

NL-520を空中発射仕様にする計画でした。

機体諸元

S-500 (計画)

• - 全長：7.8m
• - 直径：500mm
• - 全備重量：2.1t
• - 到達高度：350/250km
• - ペイロード：200/350kg

S-520

• - 全長：8.0m
• - 直径：520mm
• - 全備重量：2.1t
• - 到達高度：430/350km
• - ペイロード：95/150kg
• - 真空最大推力：18.9tf
• - 真空平均推力：14.6tf
• - 真空比推力：264.8秒

出典

観測ロケットS-520 (ISAS/JAXA)

関連項目

• - IX計画
• - 観測ロケット
• - Sロケット
• - 宇宙科学研究所
• - MT-135ロケット
• - S-160ロケット
• - S-210ロケット
• - S-310ロケット
• - SS-520ロケット

外部リンク

• - 観測ロケットS-520 (ISAS/JAXA)

もう一度検索