STS-5

STS-5ミッション：初の運用ミッションと数々の挑戦

STS-5は、アメリカ航空宇宙局（NASA）のスペースシャトル計画における5回目のミッションであり、コロンビア宇宙船を使用して1982年11月11日に打ち上げられました。このミッションは、スペースシャトル計画が「運用段階」に入ったことを示す最初のミッションと位置づけられ、多くの新たな試みと挑戦がありました。

ミッション概要

宇宙船: コロンビア
打ち上げ日: 1982年11月11日
乗組員数: 4名
船長：ヴァンス・ブランド
操縦士：ロバート・オーバーマイヤー
ミッションスペシャリスト1：ジョセフ・アレン
ミッションスペシャリスト2：ウィリアム・レノア
主な目的: 商業衛星の展開、微少重力実験

ミッションのハイライト

STS-5は、以下の点で特筆されます。

1. 初の運用ミッション: スペースシャトルが試験段階を終え、商業利用や科学研究を目的とした本格的な運用段階に入ったことを示しました。
2. 最多の乗組員: 4人の宇宙飛行士が搭乗し、それまでのミッションと比較して多い人数での飛行となりました。
3. 商業衛星の展開: 2機の通信衛星（Satellite Business Systems-3とアニクC3）を宇宙空間に展開し、商業衛星の打ち上げサービスがスペースシャトルの重要な役割の一つとなりました。
4. 微少重力実験: 西ドイツが開発した微少重力GAS実験装置を搭載し、宇宙環境を利用した科学研究が行われました。また、学生が考案した3つの実験も実施されました。
5. 宇宙遊泳の中止: 当初計画されていた宇宙遊泳は、ウィリアム・レノア宇宙飛行士の体調不良と宇宙服の不具合により中止となりました。これは、スペースシャトルミッションにおける宇宙遊泳の難しさを浮き彫りにする出来事でした。
6. 耐圧服なしでの打ち上げと再突入: STS-5では、初めて乗組員が耐圧服を着用せずに打ち上げと大気圏再突入を行いました。これにより、スペースシャトルの運用コスト削減が期待されましたが、安全性の問題も提起されました。

ミッションの成果と課題

STS-5は、スペースシャトルが商業利用可能であることを示し、その後のミッションに繋がる重要な一歩となりました。しかし、宇宙遊泳の中止や耐圧服の問題など、安全性に関する課題も浮き彫りになりました。

コロンビア号空中分解事故後に設置された調査委員会は、スペースシャトルは本質的に安全ではなく、運用段階と考えるべきではないとする報告書を提出しました。その理由として、民間や軍用の航空機は運用段階に入る前に数千回の試験や評価が行われるのに対し、スペースシャトルの飛行回数は200回以下であり、改良が行われている途中である点を指摘しています。NASAは現在、スペースシャトルを実験機と位置付けています。

記章の意味

STS-5の記章に描かれている5角形の青い星は、スペースシャトル計画におけるミッション番号を表しています。

起床コール

NASAでは、ジェミニ計画以来、宇宙飛行士のために音楽を流す伝統があります。アポロ15号で初めて乗組員の起床のために用いられ、STS-5でも、乗組員にとって特別な意味を持つ曲や、その日の活動に適した曲が選ばれました。

ミッションのその後

STS-5の経験は、その後のスペースシャトルミッションの安全性向上や運用方法の改善に活かされました。スペースシャトル計画は、数々の成功と事故を経て2011年に終了しましたが、その間に得られた技術や経験は、今後の宇宙開発に貢献していくと考えられます。

外部リンク

STS-5 Shuttle Mission
STS-5 Mission Chronology
* STS-5 Video Highlights

もう一度検索