STS-58

STS-58：生物科学実験に特化したスペースシャトルミッション

1993年10月18日、スペースシャトル・コロンビアは、STS-58ミッションを遂行するためにケネディ宇宙センターから打ち上げられました。このミッションは、コロンビアがエドワーズ空軍基地に帰還した最後の機会となりました。

ミッションの目的

STS-58の主な目的は、微小重力環境下での人体の適応に関する生物科学実験を行うことでした。循環器系、調節系、神経系、筋骨格系など、様々な生理学的側面が調査されました。乗組員だけでなく、48匹のラットも実験動物として参加し、1973年と1974年のスカイラブ計画以来となる詳細なデータ収集が行われました。

乗組員

STS-58ミッションには、以下の7名の乗組員が参加しました。

船長：ジョン・ブラハ
操縦手：リチャード・シーアフォス
ペイロード船長：マーガレット・レア・セッドン
ミッションスペシャリスト2：ウィリアム・マッカーサー
ミッションスペシャリスト3：デヴィッド・ウルフ
ミッションスペシャリスト4：シャノン・ルシッド
* ペイロードスペシャリスト1：マーティン・フェットマン

また、バックアップとしてジェイ・バッキーとローレンス・ヤングがペイロードスペシャリストとして参加していました。

実験の詳細

ミッション中、乗組員は骨組織の喪失や感覚受容に対する微小重力の影響を調査する実験を行いました。宇宙酔いに関する実験では、ルシッドとフェットマンが頭の動きを記録するヘッドセットを装着しました。また、下半身陰圧装置（Lower Body Negative Pressure device）を用いた実験も行われ、微小重力の有害な影響に対する対策が検討されました。乗組員は尿や唾液のサンプルを採取し、摂取した食物や飲料の記録を取りました。

宇宙トイレの不具合が発生した際には、乗組員が迅速に対応し、予備の分離ユニットを使用しました。また、カルシウム吸収に関する実験では、宇宙におけるカルシウムの維持機構や骨代謝に関する研究が行われました。

アマチュア無線（SAREX）を通じて、ブラハとシーアフォスはテネシー州とテキサス州の学校の児童と交信しました。さらに、シーアフォスは軌道上で機器を移動・再設置する試験を実施しました。

コロンビアには、スペースシャトルの接近・着陸操作の訓練に使用されるラップトップコンピュータのシミュレータも搭載されました。

ペイロードの乗組員は、スペースラブに搭載されたラットの代謝研究に多くの時間を費やし、ラットの尾から血液を採取して血清量を測定しました。また、無重力が動物の赤血球数に及ぼす影響も調査されました。

地球への再適応を容易にするための真空バッグでの作業後、ブラハ、シーアフォス、マッカーサーはエンジンの点火操作を行い、コロンビアの軌道を調整しました。

シーアフォスはコロンビアを手動操縦し、大気圏再突入時にシャトルに働く空気力を測定する実験を行いました。このデータは、将来のスペースラブにおける微小重力実験の計画に役立てられる予定です。

ミッション終盤、セッドンは宇宙滞在時間が夫であるロバート・ギブソンを超えたことを伝え、冗談交じりにメッセージを送りました。また、シーアフォスはカリフォルニア州南部の山火事を赤外線カメラで撮影し、消防士や住民への思いを語りました。

STS-58ミッションは、生物科学研究に大きく貢献し、宇宙環境における人体の理解を深める上で重要な役割を果たしました。

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