STS-60

STS-60：米露宇宙協力の幕開け

STS-60は、1994年2月3日にスペースシャトル・ディスカバリーによって打ち上げられた、アメリカ合衆国とロシア連邦によるシャトル・ミール計画における歴史的な最初のミッションです。このミッションの最大の注目点は、ロシア人宇宙飛行士のセルゲイ・クリカレフが初めてアメリカのスペースシャトルに搭乗したことでした。これは、冷戦終結後の宇宙開発における国際協力の象徴的な出来事として記憶されています。

ミッションの目的

STS-60の主な目的は、ウェークシールド・ファシリティ(WSF)とスペースハブを軌道に運び、様々な科学実験を行うことでした。また、宇宙ステーションミールとの間で、音声によるリアルタイム双方向リンクを確立し、今後の協力体制を強化することも重要な目的でした。

搭乗員

STS-60には、以下の6名の宇宙飛行士が搭乗しました。

船長：チャールズ・ボールデン
操縦手：ケネス・レイトラー
ミッションスペシャリスト1：ジャン・デイビス
ミッションスペシャリスト2：ロナルド・セガ
ミッションスペシャリスト3：フランクリン・チャン＝ディアス
ミッションスペシャリスト4：セルゲイ・クリカレフ（RKA）

ミッションの詳細

打ち上げ後、スペースシャトルは初期軌道から高度353kmの円軌道へと移行しました。乗組員は、すぐにディスカバリーのシステムの点検とスペースハブや実験装置の起動に取り掛かりました。スペースハブには、製薬や生物工学分野での応用が期待される細胞分離技術の研究装置や、より強固で軽量な金属材料の開発を目指した炉などが搭載されていました。また、ミッドデッキでは、ラットの免疫系を観察する実験や、タンパク質結晶の成長を促進する実験なども行われました。

WSFの展開は、電波干渉や表示灯の読み取り困難などの問題により、予定よりも遅延しました。最終的には、姿勢制御システムのセンサーに問題が発生したため、WSFの展開は中止され、ミッションの残りの期間はシャトルのロボットアームに取り付けられた状態で運用されることになりました。

スペースハブでは、微小重力環境下での様々な実験が行われました。これらの実験には、加速度測定、植物栽培、バイオプロセシング、タンパク質結晶成長、液体位相焼結、免疫応答研究、有機物分離などが含まれていました。セルゲイ・クリカレフは、Space Acceleration Measurement System (SAMS)実験を担当しました。

ミッション中には、ディスカバリーとミールとの間でテレビ中継が行われ、宇宙飛行士たちが互いに交信する様子が地球に届けられました。また、ディスカバリーの前方姿勢制御スラスタ周辺の熱防護ブランケットに剥がれが見つかるというアクシデントもありましたが、乗組員の迅速な対応により事態は収束しました。

飛行7日目には、ドイツの小型人工衛星BREMSATが放出されました。

帰還

9日間のミッションを終えたディスカバリーは、1994年2月11日にケネディ宇宙センターの第15滑走路に着陸しました。

STS-60は、その科学的な成果だけでなく、アメリカとロシアの宇宙開発における協力関係の新たな始まりを象徴するミッションとして、宇宙史にその名を刻んでいます。

外部リンク

NASA mission summary - ウェイバックマシン
STS-60 Video Highlights - ウェイバックマシン

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