STYLE (LUNA SEAのアルバム)

LUNA SEA 5thアルバム『STYLE』：多様性と深遠さを探求した音楽的冒険

1996年発表、LUNA SEAの5枚目のオリジナルアルバム『STYLE』。この作品は、それまでの作品とは一線を画す多様性と実験性、そして深遠なテーマ性を内包した、バンドの新たな一面を提示する作品として知られています。2007年には最新リマスタリング音源とPVを収録したDVDとの2枚組で再発され、改めてその魅力が再認識されました。

アルバムタイトル『STYLE』の二面性

アルバムタイトル『STYLE』は、Jによる考案です。「バラバラな楽曲群」という当時のバンドへの批判的な意見を逆手に取り、「我々のスタイルはバラバラであることだ」という皮肉と挑戦的な姿勢を込めて命名されました。同時に、タイトルには「日時計の針」という意味も込められており、時代や周囲の状況が変化しても、LUNA SEAというバンドの核は変わらないという、揺るぎない意志を表現しています。初回限定盤には5種類の異なるメンバーをイメージしたシールが付属していた点も、この多様なスタイルを表す象徴と言えるでしょう。

制作過程：グルーヴと実験性の探求

前作『MOTHER』の成功によるプレッシャーの中、Jはそれまでの楽曲制作スタイルを一度封印。グルーヴを重視したセッションを重ね、その場で生まれた断片的なメロディーを繋ぎ合わせて楽曲を構築していきました。このアプローチによって、循環コードを多用した楽曲が多く生まれたことも、本作の特徴と言えるでしょう。

当初のコンセプトは「重厚でロック色の強い楽曲」でしたが、SUGIZOの提案により、「全ての境遇を潜り抜け、最後は静かに宇宙に溶けていくような感覚」へと昇華。最終的なトラックリストはマスタリング直前まで変更を繰り返した結果、メンバー全員が納得する、完成度の高い構成に落ち着きました。

各楽曲の深層：実験性と個性の交錯

収録楽曲は、50～60年代のオールディーズをLUNA SEA風にアレンジした「WITH LOVE」や、ル・マン24時間レースのテーマ曲にも採用された疾走感溢れる「G.」など、多様な音楽性を示しています。「HURT」ではシンプルな構成ながら、力強いユニゾンが聴き手を圧倒し、「RA-SE-N」は複雑なリズムとRYUICHIの圧倒的な歌唱力で独特の世界観を作り出しています。

10分を超える大作バラード「FOREVER & EVER」では、生のストリングスが初めて導入され、Jの英詞の語りも印象的です。また、「1999」ではギターや尺八のサンプリング、そして女性ナレーションなど、実験的な試みが随所に見られます。シングル曲「END OF SORROW」「DESIRE」「IN SILENCE」も収録されており、アルバム全体の流れの中で新たな解釈が加えられています。

そして、アルバムの最後を飾る「SELVES」は、SUGIZOの強い意志が反映された集大成的な楽曲です。ギターをトイレで録音するなど、ユニークなレコーディング手法も用いられており、「別世界・海・宇宙等何かに溶けていきたい」というテーマが、壮大なスケールで表現されています。

まとめ：LUNA SEAの変革期を象徴する作品

『STYLE』は、LUNA SEAの音楽的冒険心と実験性を余すことなく示した作品です。楽曲の多様性、実験的なサウンドアプローチ、そして各メンバーの個性と創造性が融合したこのアルバムは、バンドの進化と深化を象徴する重要な作品であり、LUNA SEAの音楽史における一つの転換期を示すものとなっています。各楽曲に込められたメッセージ、制作過程における葛藤や試行錯誤、そして完成に至るまでの軌跡を辿ることで、このアルバムが持つ奥深い魅力をより深く理解することができるでしょう。

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