Sachiko M

Sachiko M（本名非公開）は、日本のサイン波奏者、即興演奏家、そして作曲家として知られています。彼女の音楽は、サイン波という極めてシンプルな音素材を基盤とし、独自の音響世界を構築していることで、国内外から高い評価を受けています。

キャリアの始まりと転換

Sachiko Mは、劇団の舞台音響としてキャリアをスタートさせました。1994年から1997年まで、大友良英率いるユニットGround Zeroにサンプラー奏者として参加。この時期には、サンプリングを駆使した音楽制作を行っていました。しかし、1998年のGround Zero解散後、彼女はサンプリングの手法を放棄。サンプラーにプリセットされたテスト・トーン（サイン波）やスイッチノイズを使った即興演奏へと移行しました。

サイン波による音楽の探求

サンプリングを捨てた彼女は、サイン波という純粋な音に着目し、その可能性を追求し始めます。サイン波のみで構成されたソロパフォーマンスは、特にヨーロッパで高い評価を受け、彼女の名を広く知らしめることとなりました。また、世界でも類例を見ないほど極端にミニマルな音楽を追求する姿勢は、多くの音楽ファンや批評家から注目を集めています。

サウンドインスタレーションへの挑戦

2003年には、オーストリアのメディアアートの祭典「アルス・エレクトロニカ」において、デジタルミュージック部門ゴールデンニカ賞を受賞。これは、彼女の音楽が単なる実験音楽に留まらず、高い芸術性を持つものとして認められた証と言えるでしょう。2004年には、初のサウンドインスタレーション「I'm Here」を発表。以降、音楽演奏と並行して、展覧会でのサウンドインスタレーションにも力を入れています。

コラボレーションと活動の幅

Sachiko Mは、大友良英や中村としまるなど、多くの音楽家とのコラボレーションも積極的に行っています。2004年には、大友良英と中村としまるとの共作アルバム『Good Morning Good Night』をリリース。また、2011年の水戸芸術館「クワイアットアテンションズ展」に出品するも東日本大震災で展示が中断。その後、各地のインディペンデントギャラリーで、ミニマルなサイン波とモノクローム写真による展示「I'm Here -shortstay- traveling exhibition」を展開しました。

近年の活動

2012年には、松本弦人が手がけるBCCKSよりポストカードブック「where we are」や文庫本型写真集「Sachiko M sound installation I'm Here -shortstay-」を発表。アーカイブとしての新書「All about Sachiko M」も作成中です。2013年3月には、世田谷パブリックシアターにて客席と舞台を反転した作品「Filaments Orchestra」を発表。また、連続テレビ小説『あまちゃん』の挿入歌「暦の上ではディセンバー」や「潮騒のメモリー」「地元に帰ろう」を大友良英と共同で作曲し、「潮騒のメモリー」では『第55回日本レコード大賞』作曲賞を受賞するなど、多岐にわたる活動を展開しています。

2014年には、国際交流基金アジアセンター「アンサンブルズ・アジア」の「アジアン・サウンズ・リサーチ」部門プロジェクト・ディレクターに就任。2015年には、NTTインターコミュニケーション・センター（ICC）の無響室にて「Filament at anechoic room」を出品。同年6月には、マレーシアペナン島「Open Gate 動き続ける展覧会」の総合ディレクターを務めました。

Sachiko Mの音楽は、一聴すると非常にシンプルですが、その奥には深い探求心と実験精神が 숨쉬고 います。サイン波という極限られた素材から、無限の可能性を引き出す彼女の創造性は、これからも多くの人々に影響を与え続けることでしょう。

もう一度検索