Scalable Link Interface

Scalable Link Interface (SLI) について

Scalable Link Interface (SLI) は、NVIDIAが提供するマルチGPU技術です。この技術は、複数のグラフィックスカードを並列で動作させ、単一の出力に統合することで、コンピュータグラフィックスの描画処理を大幅に高速化します。SLIは、特に高解像度や高画質を要求するゲームや、複雑な3Dレンダリング作業において、その効果を発揮します。

SLIの歴史と技術

SLIの起源は、3dfxが開発したScan-Line Interleave (SLI) 技術に遡ります。当時、3dfxはVoodoo2グラフィックスカードで、画面の走査線を奇数と偶数に分割し、2つのチップで並列処理を行うことで、高い描画性能を実現しました。その後、NVIDIAが3dfxを買収し、この技術をPCI Express用に改良し、GeForceシリーズにSLIとして実装しました。

NVIDIAのSLIは、画面を上下に分割、あるいはフレームごとに担当GPUを割り当てる方式を採用しました。これにより、3dfxのSLIが抱えていたメモリコヒーレンシ問題を解消し、より効率的な並列処理を可能にしました。同様の技術は、ATI（現AMD）のCrossFireとしても採用されています。

SLIの効果

SLIは、複数のGPUを並列で動作させることにより、グラフィックス性能を向上させることができます。対応するソフトウェアでは、平均的な処理速度は約1.87倍に向上するとされています。特に、DirectX 11やシェーダーモデル5.0など、高度なグラフィックス技術を必要とするコンテンツが増加している現代において、SLIは非常に有用な技術です。また、特定のGPUでは、本来の2倍以上の処理速度を発揮する場合もあります。

ワークステーションやサーバー環境では、NVIDIA Quadro Plexというシステムを導入することで、SLIと同様の恩恵を受けることができます。

SLIの応用

SLI技術は、Quad SLIや3-way SLIといった形で応用されています。Quad SLIは、2つのGPUを搭載したデュアルGPUカードを2枚使用することで、処理速度を約3.4倍に向上させます。しかし、デュアルGPUカードは高価で種類も少ないため、グラフィックスカードを3枚使用する3-way SLIという中間的な技術も考案されました。3-way SLIでは、処理速度が最大2.8倍になるとされていますが、対応プラットフォームが限られるため、一般的にはあまり普及していません。

LinkBoostテクノロジー

nForce 590 SLIチップセット搭載マザーボードでは、GeForce 7900 GTXでSLIを構成すると、ノースブリッジとサウスブリッジ間、およびPCI Expressの帯域が125%に向上するLinkBoostテクノロジーが利用できました。しかし、GeForce 8800シリーズ以降はサポートされておらず、GeForce 7900 GTXも生産が終了しているため、現在この機能を利用することは困難です。

Hybrid SLI

Hybrid SLIは、内蔵GPUと外付けGPUを組み合わせてSLIを構築する技術です。これは、AMDのHybrid CrossFireXに相当します。この技術を利用するには、対応するマザーボード、GPU、そしてWindows Vista以降のOSが必要です。

Hybrid SLIには、以下の2つの動作モードがあります。

- GeForce Boost: 内蔵GPUと外付けGPUでSLIを構築し、性能を向上させるモードです。
- Hybrid Power: 外付けGPUと内蔵GPUを状況に応じて切り替え、省電力化を図るモードです。

SLIの構築方法

SLI環境を構築するには、以下のものが必要です。

- SLIに対応したマザーボード
- SLIに対応した同一モデルのグラフィックスカード2枚以上
- SLIブリッジ（カード間を接続するケーブル）
- 最新のデバイスドライバ
- 十分な電源容量

具体的な手順

1. マザーボードのPCI Expressスロットに、グラフィックスカードを接続します。
2. SLIブリッジで各カードを接続します。
3. PCを起動し、NVIDIAコントロールパネルでSLI設定を有効にします。

電源容量については、SLI対応の電源ユニットが推奨されますが、グラフィックスカードの消費電力や補助電源仕様を確認し、適切な電源ユニットを選択する必要があります。

レンダリング方式

SLIでは、スプリットフレームレンダリング (SFR) モードとオルタネートフレームレンダリング (AFR) モードの2つのレンダリング方式を選択できます。

SLIの注意点

SLIには、いくつかの注意点があります。

- PCI Expressレーンのボトルネックが発生しやすい。
- 基本的に、NVIDIA製チップセット以外では動作しない。
- 異なるメーカーや異なる製品のグラフィックスカードを使用すると、システムが不安定になることがある。
- AFRモードでは、フレームレートは向上するものの、レスポンスの向上は限定的である。
- SLIでは、グラフィックスメモリはミラーリングされるため、使用できるメモリ総量は搭載されているメモリの合計とはならない。
- SLI環境下でのGPGPU分散処理には制約がある。

近年のSLI

以前はNVIDIA チップセットのみ対応でしたが、Intel X58 Expressチップセットや、P55チップセットでも利用可能になり、AMDチップセットへのライセンス提供も行われるようになりました。これにより、SLIとCrossFireのプラットフォームによる制限は一部解消されました。

まとめ

SLIは、複数のグラフィックスカードを組み合わせることで、グラフィックス性能を向上させる強力な技術です。この記事が、SLIを理解し、効果的に活用するための一助となれば幸いです。

Scalable Link Interface