3dfx

3dfx Interactiveとは

3dfx Interactive（スリーディーエフエックス インタラクティブ）は、かつてアメリカ合衆国に存在したハードウェアメーカーです。3dfxブランドでビデオチップやビデオカードを製造し、1990年代後半の3Dグラフィックスカード市場を牽引しました。特に、自社プロセッサ向けに開発した独自API「Glide」は、標準APIであるDirectXを上回る高性能を発揮し、多くのゲーマーに支持されました。

歴史

1994年、3dfx Interactiveはカリフォルニア州サンノゼで、SGIからのスピンアウトとして設立されました。当初はファブレスのグラフィックチップベンダーとして活動していましたが、1995年にゲーム向けの3Dアクセラレータチップ「Voodoo」を発表。このVoodooと、その性能を最大限に引き出すために用意されたAPI「Glide」の組み合わせは、当時の家庭用PCでは考えられないほどの高品質な3Dグラフィックスを、アーケードゲームに匹敵する速度で描画することを可能にしました。

その後、3dfxはチップアーキテクチャの改善を続け、「Voodoo2」ではSLI機構を搭載して並列処理を実現。「Voodoo Banshee」では2D処理にも対応するなど、常に革新的な機能を製品に実装していました。この時期には、性能に関する口コミや、Glideに対応したゲームの登場によって業績を伸ばし、ヘビーな3Dゲーマーの間で圧倒的な支持を得るようになりました。GlideはMicrosoftがDirectXを開発するきっかけにもなりましたが、当時のDirectXよりも圧倒的な高性能を誇っていました。

1998年には、グラフィックカードベンダーのSTB Systems社を買収し、チップの設計からグラフィックカードの製造販売までを自社で一貫して行う体制を整えました。さらに、2000年にはタイリング技術を持つGigapixel社を買収しましたが、これが後の命運を左右することになります。

総合グラフィックカードメーカーへの転換は、従来のチップ供給先であった他のグラフィックカードメーカーからの反感を買いました。その後、NVIDIAやATI Technologiesが台頭し、3Dグラフィックチップ市場は寡占化が進みました。また、競合他社の製品性能が急速に向上したことで、Voodooシリーズの相対的な性能が低下し、市場での価格競争も激化。3dfxの業績は伸び悩みました。

起死回生をかけて開発が進められていたVSA-100チップを搭載する「Voodoo4/5」シリーズの不振が決定打となり、2000年末に主要技術と資産はNVIDIAに売却され、3dfxは業務を停止しました。

Voodoo Bansheeまで

1995年に発表された初代Voodooは、3D描画専用のグラフィックアクセラレータでした。既存のビデオカードと組み合わせて使用し、2D描画は既存のカード、3D描画はVoodooが担当するという方式でした。この仕組みは、既存のビデオカードのアナログRGB出力をVoodooの入力端子に接続し、VoodooのアナログRGB出力をモニターに接続することで実現していました。2D描画時にはVoodooのデバイスドライバが信号をパススルーし、3D描画時にのみVoodooの画像出力に切り替えます。当時、同じく独自のAPIを利用する3D専用アクセラレータとしてPowerVRがありましたが、既存のビデオカードの性能に左右されるなどの問題がありました。

1997年には、Voodooチップのサブセット版とVGA互換チップを組み合わせた「Voodoo Rush」を発売しました。これにより、他のグラフィックカードなしでスタンドアロン動作が可能となりました。しかし、Voodoo Rushは初代Voodooと比較して3D性能が低く、一部のGlide対応ソフトで非対応となるなどの問題がありました。

1998年に発売された「Voodoo2」は、テクスチャ演算ユニットを2基搭載し、SLI技術によって2枚搭載することで更なる高速化を可能にしました。これにより、3dfxは高性能3Dアクセラレータメーカーとしての地位を確立しました。

1998年末に発売された「Voodoo Banshee」は、Voodoo系チップとしては初めて2D描画機能を搭載しました。メモリインターフェイスも高速化され、1チップ構成ながらVoodoo2に迫る3D性能を実現しました。2D描画も高速で、2D/3Dともにバランスのとれた製品となりました。この成功により、3dfxは有力グラフィックコントローラメーカーとしての地位を確立し、ATIやMatroxといったメーカーとシェアを争うようになりました。

Voodoo3以降

1998年末、3dfxはビデオカードメーカーのSTB社のメキシコ工場を買収し、自社ブランドのビデオカードの製造・販売に乗り出しました。これにより、従来のチップベンダーから、自社ブランド重視のメーカーへと転換を図ったのです。

しかし、この路線変更は、それまで3dfx社の製品を採用していたビデオカードメーカーにとって死活問題となりました。3dfxは、最新のVoodoo3チップは自社製品にのみ搭載し、旧式のVoodoo BansheeとVoodoo2のみ他社に供給するという方針をとったため、多くのメーカーが3dfxから離れていきました。この結果、3dfxは自ら市場シェアを失うことになりました。

自社工場での製造を始めた結果、Voodoo3搭載カードの発売は大幅に遅れ、収益に深刻な打撃を与えました。また、他社がNVIDIA製品に切り替えたため、デファクトスタンダードの座からも降りることになりました。

チップベンダであれば研究・開発・設計までを行えば良いのですが、メーカーとなると、チップ製造以降の各工程、つまりカード試作・生産準備・調達・生産・販売・アフターフォローといった全てを自社で行う必要があり、莫大なコストと管理が必要になります。3dfxは、この点を見誤ったのです。

1999年4月にようやく発売されたVoodoo3は、16bitカラーレンダリングに限定されていたため、24bit/32bitカラーレンダリングに対応した他社製品と比較して、色数の面で劣るようになりました。しかし、Voodoo3は、Glideに対応したゲームでは他社の追随を許さない圧倒的な描画スピードと画質を実現しており、当時の最高スペックのゲームでも非常に高いフレームレートを維持することができました。

解散まで

1999年9月、NVIDIAがハードウェアジオメトリエンジン搭載のGeForce 256を発表したことで、3dfxの斜陽は決定的となりました。GeForce 256は、DirectX 7での3D描画機能サポートの大幅強化も伴い、Voodoo3とGlideの組み合わせに匹敵する性能を発揮し、3dfxの優位性を揺るがしました。

これに対抗するため、3dfxは次世代製品としてVSA-100を搭載したVoodoo4/5の発売を発表しました。VSA-100は、GeForce 256で注目を集めたハードウェアT&L機能はサポートしないものの、32bitカラーレンダリングをサポートし、ハードウェアによるフルシーンアンチエイリアス(FSAA)機能などの画質向上に効果の大きい新機能を多数搭載していました。Voodoo5では、VSA-100チップをSLI接続で複数搭載することで、さらなる性能向上を目指しました。

しかし、Voodoo4/5の開発は大幅に遅れ、発売の目処が立たないまま、競合製品が市場を席巻していきました。さらに、VSA-100チップ自体にも、製造プロセスが旧式で消費電力が過大であるという問題がありました。3dfxは相も変わらずVoodoo3を販売し続けていましたが、3Dゲーム開発はより高性能なGeForce 256+DirectX 7をメインターゲットとするようになってきており、3dfxの旧世代のVoodoo3+Glideでは対応できないゲームが登場するのは時間の問題でした。

2000年6月にようやくVoodoo5 5500が発売されましたが、すでにGeForce2 GTSが市場を席巻しており、Voodoo5はそれに対する優位性を完全に回復することはできませんでした。さらに、GeForce2 Ultraが登場したことで、Voodoo5の優位性は完全に失われました。

Voodoo5は、フルサイズPCIカードであり、ミドルタワー以上のケースでなければ搭載が難しく、発熱も非常に大きいため、適切なエアフローが確保されたケースでなければ熱暴走を起こすという問題がありました。この時期のPCの小型化志向、省電力性、利便性などとは完全に逆行するような製品となってしまっていました。

半導体業界のアナリストの中には、1999年のクリスマス商戦までにVoodoo5を投入できなかった時点で、3dfxの運命は決まっていたと見る者もいます。

2000年11月には工場も売却し、ハイエンドモデルとして計画されていたVoodoo5 6000も発売されませんでした。そして、2000年12月にはグラフィックス関連の資産をNVIDIAに売却し、解散しました。NVIDIAによる3dfxの買収は2001年9月に完了しています。

吸収された3dfx開発チームは、その後NVIDIAが2002年11月に発表したGeForce FXシリーズの開発に関わっています。このシリーズは上位機種で極端な高発熱に悩まされ、決して成功作とは言えませんでしたが、取り込まれたVoodooシリーズに由来する技術の多くは、現在でも定番の技術として広く採用されています。

製品

以下は3dfxが販売したグラフィックカードです。

Voodoo Graphics (1995年11月6日発表): 初代Voodoo。3Dグラフィック機能のみで、2D機能は持たない。PCI接続。
Voodoo Rush (1996年8月21日発表): 2Dと3Dの両方の機能を持つエントリーモデル。PCI接続。
Voodoo 2 (1997年11月3日発表): 3Dグラフィック機能のみを提供する。SLIに対応。PCI接続。
Voodoo Banshee (1998年6月22日発表): 2Dと3Dの両方の機能を持つ。DirectXへの対応も改善。PCI/AGP 1x接続。
Voodoo3 (1998年11月16日発表): Voodoo Bansheeの改良型。TVチューナー機能付の製品も発売。PCI/AGP 2x接続。
Velocity (1999年7月27日発表): Voodoo3のローエンドモデル。AGP 2x接続。
Voodoo4 (1999年11月15日発表): Voodoo5の下位製品。ハードウェアFSAA機能を搭載。PCI/AGP 2x接続（ただしカードエッジは2ノッチだったのでAGPx4専用スロットにも装着可能）。
Voodoo5 (1999年11月15日発表): SLI技術によりVSA-100チップを並列動作させたカード。PCI/AGP 2x接続。

技術

SLI(Scan-Line Interleave): 3dfxが開発した技術で、2基のVoodoo2チップを並列動作させ、画面の走査線を奇数と偶数で分けることで描画を高速化する。
Glide: 3dfxが提供していた3Dゲーム専用API。高速に動作し、当時の多くのゲームに採用されていたが、後にオープンソース化された。Direct3Dよりも高性能であった。

その他

3dfxの開発したGPUがセガのドリームキャストで使用される可能性があったが、NECのPowerVR2が採用された。
90年代後半から2000年代初頭にかけて、アタリ、ミッドウェイ・ゲームズ、コナミ、タイトーなど、いくつかのゲーム会社が3dfx製チップを搭載したアーケードゲーム基板を市場に送り出している。

関連項目

ビデオカード
GPU

注釈

上記情報は、当時の資料や記録に基づき記述しています。

出典

Wikipediaなどを参照

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