Siesta 〜Film of Dreams〜

L'Arc〜en〜Ciel 映像作品『Siesta 〜Film of Dreams〜』

『Siesta 〜Film of Dreams〜』は、日本のロックバンドL'Arc〜en〜Cielが1994年に発表したイメージビデオ集です。VHS、LD版が1994年12月1日に発売され、その後2003年12月17日にDVD版がリリースされました。発売元はKi/oon Sony Recordsです。

作品概要

この作品は、4つのショートムービーと、アルバム『Tierra』収録曲のミュージックビデオを収録した映像集で、L'Arc〜en〜Cielの映像作品の中でも異彩を放っています。タイトルにある「Siesta」はスペイン語で「昼寝」を意味しています。

4つのショートムービーは、メンバーそれぞれが企画したプランを基に、映像作家の二階健が監督を務めました。メンバーは各々のムービーで主演も担当しています。これらの短編映像は、ストーリー性よりも視覚的、抽象的な表現に重点が置かれており、特にkenが主演・企画した「A TWISTED CIRCLE」や、sakuraが主演・企画した「un tilleul」は、独特な世界観が特徴的です。

tetsuyaは、本作について「4人の個性を明確に出すために作った」と語っています。sakuraは、「この作品を通して、メンバーそれぞれの個性をより深く理解してもらえるのではないか」と述べています。また、本作で使用された楽曲の多くは、メンバーがオリジナルで制作したものです。

収録内容

本作には、メンバーが主演・企画した4つのショートムービーに加え、アルバム『Tierra』に収録された「風の行方」のミュージックビデオと、「瞳に映るもの」のイメージビデオが収録されています。これらの映像も二階健が監督を務めており、「風の行方」ではメンバー全員が出演していますが、「瞳に映るもの」にはメンバーは一切登場しません。なお、「風の行方」と「瞳に映るもの」の映像は、2019年12月11日からYouTube Music Premiumで有料公開され、その後2022年4月1日から無料公開されています。

「風の行方」ミュージックビデオ

「風の行方」のミュージックビデオは、モロッコのワルザザートで撮影されました。sakuraは、撮影場所を決めた経緯について「曲のイメージに合う風景がモロッコに近かった」と述べています。kenは、この映像について「最初に4人の違う面を見せて、最後に4人揃った作品があることで、新しい感覚で観たり聴いたりできるのではないか」と語っています。映像には、世界遺産のアイト・ベン・ハッドゥも映っています。映画評論家のくれい響は、このミュージックビデオをアッバス・キアロスタミの作品を意識していると分析しています。

また、映像の中でkenは、ギターを弾く代わりに木彫りの猫を削っています。これは、hydeが映画『ブレードランナー』から着想を得て提案したもので、ギターを弾くという当たり前の表現を避けるため、代わりに木彫りの猫を持つというアイデアが採用されました。この猫の木彫りは、hydeとkenが撮影の合間に制作したものです。sakuraは、木彫りの猫の制作について「丁寧に彫っていたら、ラフさが良いとやり直しをさせられた」と述べています。

モロッコでの撮影

L'Arc〜en〜Cielのメンバーは、撮影のために約10日間モロッコに滞在しましたが、食事や環境などの衛生面が肌に合わなかったとコメントしています。hydeは、モロッコでの生活を振り返り、「あそこまで異国だった国はない」と述べています。このモロッコ渡航は、当時のメンバーにとって初の海外渡航となりました。

各短編映画について

Le(a) Côté

tetsuyaが企画・主演を務めた短編映画です。tetsuya曰く「ストーリーには深い意味はない」とされています。映像のタイトルは、フランス語で「ある側面」を意味します。tetsuyaは、映像制作について「コマーシャルのような風景で撮影したかった」と語っています。映像には、ヨーロッパ映画のような雰囲気や、tetsuyaが車を運転するシーン、海辺のシーンなどが取り入れられています。挿入曲は、tetsuyaが制作したものが中心で、一部既存の楽曲も使用されています。なお、海辺のシーンでは、POiSON GiRL FRiENDの楽曲「DOOMED LOVE」が使用されています。

この短編映画には「Sweet December」という続編があり、二階健が監督を務め、tetsuyaのソロライブで公開されました。続編は、2017年にtetsuyaが発表した映像作品『THANK YOU』に収録されています。

A TWISTED CIRCLE

kenが企画・主演を務めた短編映画です。kenは、この作品について「さりげないものを作りたい」と述べています。当初はkenの一日を撮影する企画もありましたが、最終的には「濡れ場のシーン」や「車に乗るシーン」、「ピストルで撃たれるシーン」などが盛り込まれました。tetsuyaは、この映像を観て「kenのプライベートがよく表れている」と感想を述べています。映像の編集では、カット割りを工夫し、「twisted circle」というタイトル通り、繰り返しの要素が取り入れられています。挿入曲は、kenが制作したものが中心で、一部既存の楽曲も使用されています。なお、黒い部屋のシーンでは、嶺貞子&ピュイグ＝ロジェが演奏したアントニオ・ヴィヴァルディのイタリア歌曲「私は泣き呻き（Piango, gemo）」が使用されています。kenが後年作曲した「Shout at the Devil」の原型は、この作品制作時に生まれたといわれています。

un tilleul

sakuraが企画・主演を務めた短編映画です。sakuraは、この作品を「人間の中にある葛藤を入り乱れて表したもの」と表現しています。映像のタイトルは、フランス語で「菩提樹」を意味します。映像は、精神世界と幼虫、サナギ、成虫といった状態を関連付けて表現しており、sakura自身が考えた字幕が挿入されています。映像の最後は、sakuraが余計なものを削ぎ落とし、新たな自分を覚醒させるところで終わります。挿入曲は、sakuraが制作したものが中心で、キーボードや民族楽器など様々な楽器を演奏しています。また、二階健の勧めでアルバム『Tierra』の収録曲「Inner Core」も挿入曲として使用されています。sakuraの構想では長編作品になる予定でしたが、収録時間の都合で短縮されました。

窓 -Fenêtre-

hydeが企画・主演を務めた短編映画です。hydeは、この映像について「全体的にけだるい感じを出したかった」と述べています。映像のイメージは、「どうにでもなれ」という投げやりな感覚を表現したもので、舟でオールが流されていくシーンは、その象徴となっています。挿入曲は、hydeが制作したもので、一部はアルバム『Tierra』の収録曲「White Feathers」の歌詞の世界観をモチーフにしています。映像に登場する文鳥は、hyde曰く「唯一の友達」をイメージしたもので、映画『ブレードランナー』のオマージュとして登場しています。当初は鳩を登場させる予定でしたが、文鳥に変更されました。

収録曲

1. Opening Title
2. Le(a) Côté
3. A TWISTED CIRCLE
4. un tilleul
5. 窓 -Fenêtre-
6. 風の行方
7. Special present from Peaceful Land

クレジット

各映像の最後で確認できるほか、フィジカルに付属するブックレットにも記載されています。

もう一度検索