Slot 1

Slot 1とは

Slot 1（スロット1）は、インテルの一部のマイクロプロセッサで使用されたスロットの物理的・電気的仕様を指します。242本の接点を持つことからSC242とも呼ばれ、主にCeleron、Pentium II、Pentium IIIといったCPUで採用されました。

概要

従来の正方形のZIF PGA/SPGAソケットの代わりに、AGPスロットやPCIスロットに似た形状の242ピンのエッジコネクタを使用し、CPUをシングルエッジコンタクトカートリッジ（SECC）、シングルエッジプロセッサパッケージ（SEPP）、シングルエッジコンタクトカートリッジ2（SECC2）に搭載しました。CPUカートリッジを固定するためのリテンションキットも用意されました。

この形状の理由は、Pentium IIの設計において、2次キャッシュメモリをCPUコアと一緒にパッケージ内に組み込むことを断念し、メモリチップをパッケージ外の基板上に配置したためです。しかし、集積技術の発展により大量の2次キャッシュがコアに組み込めるようになると、このような設計の必要がなくなり、CPUは再びソケット形状（Socket 370）へと回帰しました。

一部のSlot 1マザーボードは、デュアルプロセッサ構成をサポートしていました。また、Socket 370とSlot 1の両方を備え、どちらのソケット/スロットでも利用できるマザーボードも存在しましたが、同時使用はできませんでした。

Slot 1の仕様は、Socket 7よりも高いバスレートを可能にし、GTL+バスプロトコルを使用していました。Slot 1以降は、インテルがCPUバスプロトコルに対して特許を取得したため、インテルに無断で互換CPUを製造することが不可能になりました。

350MHzおよび450MHzのPentium IIと、ほとんどのSlot 1 Pentium IIIは、形状が変更されたSECC2で提供されました。SECC/SEPP用のリテンションキットとSECC2用のリテンションキットには互換性がないため、注意が必要です。また、マザーボードによってはリテンションキットが付属しない場合もあり、その場合は別途購入して取り付ける必要がありました。リテンションキットなしでCPUカートリッジを装着すると、CPUカートリッジが緩んだり抜けたりする可能性があるため、推奨されません。

AMDが使用したSlot Aは、形状はSlot 1と同一でしたが、電気的な互換性はありませんでした。誤挿入を防ぐため、取り付け方向も逆になっていました。Slot A用のCPU（Athlon）も当初はキャッシュメモリがコアと分離されており、Slot Aが採用された経緯はSlot 1と同様です。こちらも後にソケット形状（Socket A）に移行しました。

互換性

Slot 1はSocket 370と電気的な互換性があったため、Slot 1をSocket 370に変換するアダプタ（ゲタ）が利用可能でした。多くのマザーボードメーカーからこのタイプの商品がリリースされ、マザーボードと同一メーカーの製品を使用することで、変換先のCPUの動作保証を行うこともありました。ただし、チップセットが対応しないCPUには、電圧やFSBを変換するアダプタが必要でした。

Slot 1搭載マザーボードは、Intel 440系チップセットの普及時期と重なっていたため、Intel 440系が多く、Tualatin/Tualatin-256KやFSB 133MHzには対応できないことが多くありました。しかし、電圧やFSBを変換するアダプタを利用することで、対応できないCPUでも動作させることが可能になる場合がありました。

PowerLeapなどから発売されたアダプタを使用することで、Katmai/Mendocino/Coppermine/Coppermine-128Kにしか対応しないマザーボードでもTualatin/Tualatin-256Kに対応させることができました。ただし、このタイプのアダプタはCPUのマイクロコードがない状態で動作させることになるため、単純にSlot 1をSocket 370に変換するアダプタよりも相性の問題が発生しやすいという難点がありました。

技術仕様

対応チップ形状:
シングル・エッジ・コンタクト・カートリッジ（SECC） - （Pentium II）
シングル・エッジ・コンタクト・カートリッジ 2（SECC2） - （Pentium III）
シングル・エッジ・プロセッサ・パッケージ（SEPP） - （Celeron）
ピン数: 242ピン
バスプロトコル: GTL+
FSB: 66, 100, 133MHz
電圧範囲: 1.65V から 2.80V

採用製品

CPU
Intel
Pentium II（SECC & SECC2, 233 - 450MHz）
Pentium III（SECC & SECC2, 450 - 1133MHz）
Celeron（SEPP, 266 - 433MHz）

関連項目

Pentium II
Pentium III
Celeron
Slot 2
Socket 370
* ゲタ (CPU)

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