Socket 370

Socket 370とは

Socket 370は、インテルがPentium IIIとCeleronプロセッサで使用するために開発したCPUソケットの規格です。従来のSlot 1に代わるものとして登場しました。名称の「370」は、CPUのピンを差し込む穴の数を表しています。

概要

当初はCeleron向けに設計されましたが、後にCoppermineやTualatinのPentium IIIプロセッサ、さらにはVIA Cyrix III（後のVIA C3）など、様々なCPUで利用されるようになりました。一部のマザーボードでは、デュアルプロセッサ構成もサポートされました。

また、Socket 370とSlot 1の両方を搭載し、どちらのソケットにも対応できるマザーボードも存在しましたが、同時使用はできませんでした。

Socket 370には、Mendocino Celeronで使用されたPPGA、コアむき出しのCeleronおよびPentium IIIで使用されたFC-PGA、そしてヒートスプレッダ付きCPUで使用されたFC-PGA2の3種類が存在します。ソケット自体は同じですが、PPGAとFC-PGA/FC-PGA2ではピンアサインが異なるため、互換性はありませんでした。ただし、PPGAをFC-PGA/FC-PGA2に変換するアダプタが販売されていました。FC-PGA2はFC-PGAとピンアサインは同じですが、ヒートスプレッダ付きのCPUに対してFC-PGA2と名付けられました。

電気的な互換性はありませんが、Socket 370はx86以外のプラットフォームでも利用されました。サン・マイクロシステムズはUltraSPARC CPUの一部モデルでSocket 370を使用し、UMAXはPowerPC 603eをSocket 370向けに再パッケージしてMacintosh互換機向けに提供しました。

Socket 370に対応したCPUはコアがむき出しになっているものが多く、CPUクーラーの取り付け時にコアに均等な圧力をかけないと破損する可能性がありました。特に重量のあるクーラーを使用する際には注意が必要でした。また、クーラーの装着にはかなりの力が必要で、装着時にドライバーなどを滑らせてマザーボードのパターンを傷つける危険性もありました。

現在ではSocket 423/478/775（Pentium 4およびCore 2プロセッサ向け）に取って代わられ、Socket 370は過去のプラットフォームとなっています。VIAもSocket 370プロセッサを製造していましたが、インテルとのライセンス契約終了後は、自社のプロセッサシリーズをBGAパッケージに移行しています。

互換性

Socket 370はSlot 1と電気的な互換性があったため、Slot 1をSocket 370に変換するアダプタが多数販売されました。マザーボードメーカーは自社製品との組み合わせで使用することを推奨し、互換性を保証していました。ただし、チップセットが対応していないCPUについては、電圧やFSBを変換するアダプタが必要でした。

Socket 370を採用したCPUは、Pentium IIIではKatmai→Coppermine→Tualatin、CeleronではMendocino→Coppermine-128K→Tualatin-256Kと、それぞれ3世代にわたって進化しました。特にIntel 440系のようなSlot 1世代のチップセットは、FSB 133MHzやTualatinに対応していないものが多かったため、電圧やFSBを変換するアダプタを利用することで、対応できないCPUを使用可能にするケースもありました。

PowerLeapなどのメーカーから、Katmai/Mendocino/Coppermine/Coppermine-128Kにしか対応しないマザーボードでTualatin/Tualatin-256Kを使用可能にするアダプタが発売されました。PPGAをFC-PGAに変換するアダプタも同様に販売されていました。ただし、これらのアダプタはCPUのマイクロコードがない状態で動作させることになるため、単純にSlot 1をSocket 370に変換するアダプタよりも相性の問題が発生しやすい傾向がありました。

採用製品

CPU

Intel
Celeron Mendocino (PPGA, 300 - 533MHz, 2.0V)
Celeron Coppermine (FC-PGA, 533 - 1100MHz, 1.5～1.75V)
Celeron Tualatin (FC-PGA2, 900 - 1400MHz, 1.475～1.5V)
Pentium III Coppermine (FC-PGA, 500 - 1133MHz, 1.6～1.75V)
Pentium III Tualatin (FC-PGA2, 1000 - 1400MHz, 1.45～1.5V)
VIA
Cyrix III / C3 (500 - 1200MHz, 1.35～2.0V)

チップセット

Intel
i440/450チップセットシリーズ (i440BX/EX/FX/GX/LX/MX/MX-100/ZX, i450GX/KX/NX)
i8XXチップセットシリーズ (i810/E/E2/L, i815/E/EG/EP/G/P, i820E, i840)
VIA
Apollo/Apollo Pro/Apollo Pro+
PRO133/PRO133A/Pro133T/PM133/PN133/PN133T/PL133/PL133T/PLE133/PLE133T
Pro266/PM266/Pro266T/PM266T/Pro266TD
CLE266/CN400
ALi
Aladdin Pro/ProII/TNT2/Pro 4/Pro 5/Pro 5T
ATI
S1-370-TL
OPTi
Discovery
SiS
SiS 5600
SiS 620, SiS 630/E/ET/S/ST, SiS 633/T, SiS 635/T
ULi
M1644T

関連項目

Pentium III
Celeron
Slot 1
* ゲタ (CPU)

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