Solar-C EUVST

Solar-C_EUVST: 高感度太陽紫外線分光観測衛星

Solar-C_EUVSTは、宇宙航空研究開発機構（JAXA）と自然科学研究機構国立天文台（NAOJ）によって推進されている、最新の高感度太陽紫外線分光観測衛星です。このプロジェクトは、アメリカ航空宇宙局（NASA）や欧州宇宙機関（ESA）を含む国際的なパートナーシップのもとで進められています。2022年11月にSOLAR-Cプリプロジェクトチームが設立され、正式な名称が「高感度太陽紫外線分光観測衛星」と定められました。この衛星の打ち上げは2028年度初頭を予定しており、太陽の紫外線に関する新たな知見を探索することを目的としています。

概要と役割

Solar-C_EUVSTは、過去の太陽観測衛星として「ひのとり」や「ひので」に続く、4台目の太陽観測機となります。この衛星は「宇宙基本計画」への改訂に伴い、2020年代半ばに小型衛星として打ち上げられる予定です。日本は、このプロジェクトにおいて望遠鏡本体や衛星バス、打ち上げロケットを担当し、分光器は日本、アメリカ、欧州の共同作業となります。

科学的目標

Solar-C_EUVSTには、特に2つの主要な科学的目標があります。まず一つ目は、太陽大気の形成に関する基本的な物理法則の解明です。太陽の表面温度が約5700 Kであるのに対し、コロナの温度は100万 K以上であるこの現象のメカニズム、すなわち「コロナ加熱問題」の解決を目指しています。

この問題の理解には「ナノフレア仮説」と「波動加熱説」の2つの主要な仮説が存在しますが、これまでの観測装置ではその証明が難しいとされてきました。Solar-C_EUVSTは、幅広い温度帯を高い時間解像度と空間解像度で観測することで、これらの現象を直接観察し、太陽大気の全体像を解明することが期待されています。

次に、太陽フレアおよびコロナ質量放出（CME）を駆動するエネルギーの解放メカニズムの理解が挙げられます。太陽フレアは、蓄積された磁場エネルギーが磁気リコネクションによって解放される現象ですが、この過程や発生メカニズムには未解決の部分が多いです。Solar-C_EUVSTは、高精度な観測を行い、太陽フレアのメカニズムを解き明かすことを目指しています。

搭載機器

Solar-C_EUVSTに搭載される主な機器は極紫外線高感度分光望遠鏡（EUVST）です。この望遠鏡は、太陽の彩層、遷移層、コロナ、フレアプラズマから発せられる光を分光観測する能力を持ち、温度、密度、速度といったプラズマの診断情報を2次元的に取得します。EUVSTは、従来の装置に比べて高い空間分解能と時間分解能を誇り、観測可能な波長域も広いため、太陽の多様な現象を捉えることができます。特に、5秒から10秒間の高い時間解像度により、瞬間的な変化をリアルタイムで捉えることが可能です。

ミッションの進行過程

SOLAR-Cの計画は、当初ESAとの国際協力ミッションとしてスタートしましたが、ESAの不採択を受けてミッションの内容が見直され、より小型で低予算な衛星として再構築されることになりました。日本、アメリカ、欧州の研究者によちが結集され、次世代太陽物理ミッションの具体的な研究が進められました。2022年にはプロジェクトが正式に発表され、国際的な協力を通じて新たな宇宙の理解が進むことが期待されています。

このように、Solar-C_EUVSTは、太陽の活動や特性を詳細に観測し、太陽物理学のみならず、宇宙天気の理解にも寄与することで、地球環境を守るための重要な役割を果たすことが期待されています。

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