Sputniko!

Sputniko!（スプツニ子！）

東京を主な活動拠点とするアーティストであり、東京芸術大学美術学部デザイン科で准教授を務めています。専門分野は、テクノロジーによって変わりゆく社会や人間の未来の姿を探求する「スペキュラティブデザイン」。本名は尾崎マリサ優美といい、1985年7月1日に東京都で生まれました。

人物・経歴

日本人数学研究者の父とイギリス人数学研究者の母というアカデミックな家庭に育ちました。高校を一年飛び級し、イギリスの名門校であるロンドン大学インペリアル・カレッジに進学。数学とコンピューター・サイエンスを専攻し、2006年に卒業しています。その後、ロンドンでプログラミングや音楽制作に携わったのち、2010年には権威ある英国王立芸術学院（RCA）の修士課程を修了しました。RCA在学中から、テクノロジーの発展が人間や社会に与える影響を考察する映像インスタレーション作品の制作を開始。

卒業後、その活動はさらに広がります。2013年から2017年まで、マサチューセッツ工科大学（MIT）メディアラボでアシスタント・プロフェッサーとして「Design Fiction Group」を立ち上げ、主宰しました。帰国後も、2017年から2019年には東京大学大学院生産技術研究所、2019年からは東京芸術大学で准教授として教鞭を執り、研究室を率いています。

国際的な評価も高く、2017年には世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーズおよびカルチャー・リーダーに選出され、ダボス会議にも登壇。2019年にはTEDフェローに選ばれ、TEDカンファレンスで発表を行いました。また、2019年にはDE&I（ダイバーシティ、エクイティ＆インクルージョン）推進を目的とした株式会社Cradleを設立し、起業家としての顔も持っています。

アート市場においても注目を集めており、2021年10月には国内初のNFTアートオークションで作品が最高額で落札されました。同年11月には香港のデザインフェスティバル「deTour」で、赤色蛍光蛋白質を含む特殊なシルクを用いた大規模な作品「Red Silk of Fate -The Shrine」を発表。この特殊なシルクは、農業・食品産業技術総合研究機構の協力のもと開発されたもので、光によって色彩を変化させる特徴があります。

企業活動としては、2018年より東北新社フェロー、2021年よりデジタルガレージの社外取締役を務めています。

作風とスペキュラティブデザイン

彼女の作品は、テクノロジー、身体、ジェンダーといった現代社会が直面する問いかけをテーマに据えています。特に、「生理マシーン、タカシの場合。」のように男性が生理痛を体験する装置を用いた作品や、「ムーンウォークマシン、セレナの一歩」といった月面にハイヒールの足跡を残すという発想の作品は、その挑発的なテーマと表現で広く知られています。

自身の専門であるスペキュラティブデザインについて、彼女は「『もしも、このようなテクノロジーが登場したら、私たちの生活や社会はどう変わるだろう？』という問いに対し、デザインの手法を用いて具体的なイメージやストーリーを提示することで、見る者に未来について深く考察することを促す活動」であると説明しています。

ユニークな名前の由来

アーティスト名である「スプツニ子！」は、高校時代に友人によって名付けられました。色白で理系的な雰囲気からロシアの宇宙船「スプートニク」を連想され、そこに女性らしい「子」を加えて誕生した名前です。語尾の「！」は、ドイツ語の「NEU！」のように、ある種の叫びや強調を表す意図が込められており、単なる名前以上の表現としてこだわりを持っています。当初はその特異性から改名を考えたこともあったものの、大学以降もこの名前で活動を続け、研究者としても「スプツニ子！」として広く認知されるようになりました。

展示・受賞歴

国内外で精力的に活動しており、ニューヨーク近代美術館（MoMA）、英国ヴィクトリア&アルバート博物館、東京都現代美術館、金沢21世紀美術館をはじめとする数多くの主要美術館や国際展で作品を発表しています。代表的な出品展には、MoMAでの「Talk to Me」や「Broken Nature」、東京都現代美術館での「東京アートミーティング」などがあります。

これまでに、メディアアートの祭典であるアルス・エレクトロニカで複数回にわたりHonorary Mentionを受賞したほか、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品選出、VOGUE JAPANウーマン・オブ・ザ・イヤー受賞、AMD Award新人賞、ロレアル・ユネスコ女性科学者特別賞など、国内外で多岐にわたる賞や選出を受けています。これらの活動は、彼女が現代アート、デザイン、テクノロジー、そして社会批評の分野で重要な役割を果たしていることを示しています。

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