Stars and the Moon

『Stars and the Moon』は、THE SQUAREが1984年12月1日に発表した9枚目のアルバムです。これまで「夏」「リゾートミュージック」といったイメージが強かったスクェアにとって、本作は「秋」「冬」を意識した作品として制作されました。アルバムジャケットも冬の夜空をモチーフにするなど、全体を通して落ち着いた雰囲気が漂います。

サウンド面でも、従来のスクェアのイメージとは異なり、全8曲中半数以上が短調のバラードで構成されています。特に、「CRY FOR THE MOON」と「DESTINATION」は、アルバムのテーマである「静寂・孤高・悲しみ」を色濃く反映した楽曲として評価されています。アルバムタイトルと同名の楽曲は存在しないものの、これらの楽曲はタイトル曲に準ずる重要な位置を占めていると言えるでしょう。

収録曲のうち、「いとしのうなじ」と「OVERNIGHT SENSATION」は、従来のスクェアらしいサウンドが楽しめる楽曲です。「いとしのうなじ」は、1982年に脱退した久米大作が作曲したもので、フジテレビ系列の番組テーマ曲としても使用されました。久米の脱退後に彼の作曲した楽曲がアルバムに収録されるのは珍しく、熱帯雨林をイメージさせるトロピカルなサウンドが特徴です。

「OVERNIGHT SENSATION」は、TBS系列の番組オープニングテーマ曲として使用され、先行シングルとしてもリリースされました。シングルのカップリング曲である「MAYBE I'M WRONG」は、ミディアムテンポの短調楽曲で、アルバムのコンセプトを体現したような楽曲と言えるでしょう。

キーボードの和泉宏隆は、本作で「CRY FOR THE MOON」「MISTRAL」「遠雷」の3曲を作曲しました。彼は「冬のリリースということで幾分しっとりとした出来にはなってますね」と語っています。「遠雷」は、アメリカの画家アンドリュー・ワイエスの作品からタイトルを借用したことを明かしています。和泉が作曲した3曲は前作『ADVENTURES』がリリースされた頃に既に作曲されていました。

音楽評論家の阿部志穂は、本作を「ハデさはないけれど、メンバーが惜しげもなく披露する大人の色気と良質な楽曲揃いで密かに人気の高い1枚」と評しています。派手さこそないものの、大人の魅力あふれる演奏と、質の高い楽曲が揃った隠れた名盤として、多くのファンから支持されています。

2002年には、スーパーオーディオCD仕様でも発売され、より高音質で本作を楽しむことができるようになりました。後にメンバーとなる河野啓三が初めて聴いたスクェアのアルバムが本作であり、「前半4曲が同じキーで地味に聞こえるが、噛めば噛むほど味が出てきてその渋さがかっこいい」と語っています。

『Stars and the Moon』は、スクェアの新たな一面を垣間見ることができる、挑戦的な作品であり、彼らの音楽性の幅広さを示す一枚として、今もなお多くの音楽ファンに愛され続けています。

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