Stockfish

Stockfish: 世界最強のオープンソースチェスエンジン

Stockfishは、Tord Romstad、Marco Costalba、Joona Kiiskiをはじめとするオープンソース開発者コミュニティによって開発された、世界最強クラスのチェスエンジンです。様々なデスクトップおよびモバイルプラットフォームで利用可能で、常にチェスエンジンのレーティングリストのトップ、あるいはその近くに位置しています。2013年の非公式世界コンピュータチェス選手権で優勝、2014年の同大会で準優勝を果たしています。

起源と進化

Stockfishは、Romstadが開発したオープンソースエンジン「Glaurung」をルーツとしています。「Stockfish」という名前は、英語で「干し魚」を意味します。

2008年、CostalbaがGlaurungをフォークし、新たにStockfishと名付けました。最初のバージョンであるStockfish 1.0は2008年11月にリリースされました。当初はGlaurungとの間でアイデアやコードの変更が共有されていましたが、後にRomstadはStockfishの開発を支持し、Glaurungの開発は終了しました。

2011年頃、RomstadはStockfishの開発から手を引き、iOS向けチェスアプリの開発に注力しました。2014年、Costalbaも保守管理者を辞任し、コミュニティに開発の継続を呼びかけました。これにより、中心的な開発者のボランティアグループによって公式レポジトリが設立され、現在も開発が続いています。

2018年には、Stockfishの開発に参加していたGary Linscottによって、AlphaZeroをベースとしたLeela Chess Zeroが開発されました。さらに2020年には、ニューラルネットワークを組み込んだ「Stockfish NNUE」が登場し、コンピュータチェスの新たな境地を切り開きました。

Stockfishの特徴

• - マルチプロセッシング: 最大512CPUを使用可能
• - 大規模局面表: 最大32TBの局面表に対応
• - 高度な探索: 改良アルファ・ベータ探索とビットボードを使用
• - 深い探索深度: 積極的な枝刈りとLate Move Reductionsによる
• - チェス960対応: Glaurungから継承
• - Syzygyテーブルベース対応: 2014年に統合

Fishtest: 分散テストフレームワーク

Stockfishの開発には、「Fishtest」と呼ばれる分散テストフレームワークが活用されています。ボランティアがCPU時間を提供することで、プログラムの改良をテストできます。変更は、旧バージョンとの数万局の対局結果に基づき、統計的に有意な場合にのみ受け入れられます。このフレームワークにより、Stockfishはわずか12ヶ月でイロレーティングが120ポイントも上昇するという驚異的な成長を遂げました。

大会結果

Stockfishは、主要なコンピュータチェス大会で数々の好成績を収めています。

• - TCEC: シーズン4および5で準優勝、シーズン6では優勝

Stockfish対ナカムラ

2014年、グランドマスターのヒカル・ナカムラとのハンディキャップ対局では、コンピュータの助けとハンデにもかかわらず、ナカムラは2勝2敗に終わりました。この対局は、Stockfishの驚異的な強さを証明するものでした。

プラットフォーム

Stockfishは、C++ソースコードとして、またMicrosoft Windows、macOS、Linux、Android向けのコンパイル済みバージョンとして提供されています。デスクトップではBlitzInやDasher、モバイルではStockfish app、SmallFish、Droidfishなどに同梱されています。チェス対局サイトであるLichessやChess.comでも棋譜解析やAI対局に採用されています。

まとめ

Stockfishは、オープンソースのチェスエンジンとして、世界最高峰の強さを誇ります。その開発は、コミュニティの貢献と高度な技術によって支えられています。Stockfishは、チェス愛好家にとって欠かせない存在であり、その進化は今後も注目されるでしょう。

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