Sun-3

Sun-3シリーズ

サン・マイクロシステムズが1985年に市場に投入した「Sun-3」は、UNIX ワークステーションおよびサーバ製品群を指す名称です。これは、同社がコンピュータ産業において地位を確立していく上で、Sun-2シリーズの後継として重要な役割を果たしました。Sun-3は、高性能なUNIXシステムを必要とする企業や研究機関、大学などで広く採用されました。

基本アーキテクチャ

Sun-3シリーズの設計思想は、先行モデルであるSun-2シリーズの基盤を多く引き継いでいます。特に、拡張性の高いVMEバスをシステムの中核に採用していた点は共通しています。しかし、処理能力においては大幅な向上が図られました。

Sun-3の主要な構成要素は、モトローラ製の高性能マイクロプロセッサであるMC68020でした。これは、当時のコンピュータとしては先進的な32ビットアーキテクチャを持ち、複雑な命令セットやパイプライン処理能力を備えていました。さらに、浮動小数点演算を高速化するために、同じくモトローラ製の浮動小数点コプロセッサMC68881が組み合わされました（ただし、普及モデルであったSun 3/50などではオプション扱いとなる場合もありました）。

メモリ管理においては、モトローラ製CPUに内蔵されたMMUではなく、サン・マイクロシステムズが独自に設計したMMUが使用されていました。この独自MMUは、特定の用途やパフォーマンス特性に最適化されていたと考えられます。

サポートOS

Sun-3システムは、サン・マイクロシステムズが開発・提供していたUNIXオペレーティングシステムであるSunOSによって動作しました。具体的には、SunOSのバージョン3.0から最終的には4.1.1_U1までの幅広いバージョンが公式にサポートされていました。これらのバージョンを通じて、SunOSは機能強化や安定性の向上が図られ、Sun-3プラットフォーム上での開発や利用を支えました。

主なモデルラインナップ

Sun-3シリーズには、筐体サイズ、性能、拡張性などによって多岐にわたるモデルが存在しました。初期のデスクトップモデルである3/50や3/60、ラックマウント型サーバの3/180や3/280など、様々なニーズに対応する製品が提供されました。各モデルは搭載可能な最大RAM容量が異なりましたが、サードパーティ製の拡張メモリボードを使用することで、標準仕様以上のメモリを搭載できる場合もあり、システムの寿命を延ばしたり、より大規模なタスクに対応したりすることが可能でした。

Sun-3xの登場

Sun-3シリーズの歴史において、大きな変革期となったのが1989年です。この年、サン・マイクロシステムズは、後に同社の主力となるRISCアーキテクチャ 기반의 SPARCstation 1を市場に投入しましたが、それとほぼ同時期に、従来のSun-3アーキテクチャを改良した新しいモデル群も発表しました。これらが、Sun 3/80、3/470、3/480といったモデルであり、これらを総称して「Sun-3x」と呼びます。

Sun-3xが従来のSun-3と最も異なる点は、搭載されているプロセッサです。Sun-3xは、MC68020の後継であるモトローラMC68030マイクロプロセッサを採用しました。MC68030は、MC68020に比べて高速化され、キャッシュメモリやバーストモード転送などの機能が強化されています。また、浮動小数点コプロセッサも、MC68881から改良型のMC68882に変更されました。

さらに重要な違いとして、Sun-3xではMC68030に内蔵されたMMUが使用されました。これにより、従来のSun-3で採用されていたサン独自のMMUとは異なるアーキテクチャが採用されたことになります。このMC68030ベースのシステム構成が「Sun-3x」という呼称で区別されました。Sun-3xは、SPARCstationが登場した後も、既存のMC68k資産を活用したい顧客や、コストパフォーマンスを重視する顧客向けに提供されました。

その他のバリエーション

Sun-3シリーズの中には、特定の構成変更によって名称が変わるモデルも存在しました。例えば、Sun 3/260モデルに対して、より新しいSun 3400 CPUボードを搭載するアップグレードが行われた場合、そのシステムはSun 3/460として識別されました。これは、システムの寿命を延ばし、最新の性能に近づけるための手段として提供されたものです。