T-3 (練習機)

T-3航空自衛隊初等練習機

T-3は、航空自衛隊が運用していた初等練習機であり、パイロット教育課程において学生が最初に搭乗する機体です。この機体は、富士重工業によって製造され、約30年間にわたりパイロットの育成に貢献しましたが、2007年4月23日に正式に退役しました。

導入経緯

航空自衛隊発足当初はT-34Aという初等練習機が使用されていましたが、その老朽化が進んだことから新型機の導入が急務となりました。富士重工業は、当時の海上自衛隊向けに開発されていたKM-2をベースに、航空自衛隊の仕様に合わせたタンデム複座式の試作機KM-2Bを製作しました。この機体は、1974年9月26日に初飛行を行い、1976年には入間基地での航空祭でその高性能を披露しました。特に10秒以上の背面飛行は、多くの注目を集めました。

当初民間機として位置付けられていたKM-2Bは、航空自衛隊の後継機として提案され、1978年には初等練習機として必要な装備を施したKM-2改が初飛行を果たし、T-3として制式採用されました。これによりT-2に次ぎ3番目の国産練習機として生まれ変わったT-3は、1982年までに50機が生産されました。

T-3は主に静浜基地と防府北基地に配備され、パイロット育成に使用されましたが、2003年には新しい後継機富士T-7の導入が進められました。平成16年度には防府北基地でのT-3による教育が終了し、2007年2月22日には静浜基地での訓練も完了しました。こうして、最後まで使用された3機のうち2機は岐阜基地の飛行開発実験団に引き渡され、残る1機は静態保存された初号機となりました。

機体の特徴

T-3は機首にエンジンを搭載し、低翼配置の一般的な形状を持っています。製造コストを抑えるために、可能な限りT-34の部品との共通化が図られていますが、高空性能や航続距離を向上させるための強化が施されています。具体的には、スーパーチャージャー付きレシプロエンジンの強化や燃料タンクの増設が行われました。

また、KM-2とは異なり、航空自衛隊の戦闘機に馴染むように設計された縦型複座式が採用されており、中等練習機にスムーズに移行できるよう配慮されています。外見はKM-2と似ていますが、中身にはFA-200の技術も流用されており、一部異なる点が見られます。

非常事態が発生した際の脱出方法に関しては、射出座席は備わっておらず、パラシュートによる脱出が求められます。具体的には、キャノピーを開けた後に翼端まで走るか、背面飛行しながらキャノピーを開いて落下するといった方法が示されています。なお、全機無事に退役したため、この脱出方法を実践した者はいないのが実情です。

配備基地

• - 静浜基地：第11飛行教育団（平成18年度終了）
• - 防府北基地：第12飛行教育団（平成16年度終了）
• - 岐阜基地：飛行開発実験団

仕様

• - 乗員：2名
• - 全長：7.9m
• - 全幅：10.0m
• - 全高：2.9m
• - 空虚重量：1.1t
• - エンジン：ライカミングIGSO-480（レシプロエンジン）1基
• - 出力：340hp
• - 最大速度：340km/h (M0.28)
• - 航続距離：963km
• - 実用上昇限度：8,200m

関連項目

• - T-34
• - LM-1
• - KM-2
• - T-5
• - T-7

外部リンク

• - 航空自衛隊

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