T-46 (航空機)

T-46 イーグレット：幻の次世代練習機

1980年代、アメリカ空軍は老朽化したセスナT-37ジェット練習機の後継機選定に乗り出しました。これが「次世代練習機計画（NGT）」です。複数の航空機メーカーが競合に参加し、その中でフェアチャイルド社は、高翼の双尾翼機であるT-46を提案。1982年、フェアチャイルド社の案が選ばれ、T-46は制式名称を与えられました。

開発は順調に進み、1985年には試作初号機がロールアウト、初飛行も成功を収めます。アメリカ空軍は当初、650機以上の調達を計画していました。しかし、計画は突如としてキャンセルされます。1986年、アメリカ空軍は予算案からT-46を除外したのです。わずか数機の試作機が製造されたのみで、T-46計画は幕を閉じました。

この計画中止には、複数の要因が考えられます。一つはアメリカ空軍の予算削減です。冷戦終結に伴い、国防費の見直しが行われ、T-46のような高価な新型機の導入が困難になったと考えられます。また、T-46の性能や価格に見合うだけの必要性、あるいは将来的な運用コストの面から、計画が見直された可能性も考えられます。

T-46計画の中止は、フェアチャイルド社に大きな打撃を与えました。T-46は同社の主力製品となる計画であり、計画中止によって経営は悪化し、1999年には経営破綻に至りました。T-46は、アメリカ空軍の次世代練習機選定という歴史において、重要な位置を占める一方で、成功を収めることなく終わってしまった、いわば「幻の練習機」と言えるでしょう。

その後、アメリカ空軍は「統合基本航空機訓練システム計画（JPATS）」へと移行し、1995年にはT-6 テキサンIIが採用されることとなります。これは、既存機の改良型や発展型を導入することで、コスト削減と開発期間短縮を図ろうという戦略に基づいた判断だったと考えられます。

T-46の機体そのものは、T-37と似たコンセプトを持っていました。並列複座のコクピット、大型のキャノピー、高翼配置の直線翼、そして垂直尾翼と水平尾翼がH字型に配置されるなど、初等練習機としての基本設計が採用されていました。ジェットエンジンを搭載しつつも運用コストの低減を目指し、軽攻撃機としての市場展開も視野に入れていたと言われています。

現在、T-46はわずかに現存しており、エドワーズ空軍基地博物館、国立アメリカ空軍博物館、ピマ航空宇宙博物館、そしてクレイドル航空博物館などに展示、もしくは保管されています。これらの博物館で、幻の練習機T-46イーグレットの姿を見ることができます。

T-46 主要諸元

全長：8.99 m
全幅：11.78 m
全高：3.86 m
翼面積：14.95 m²
エンジン：ガレットF109-GA-100 ターボファンエンジン（推力：5.9kN）×2
最大速度：736 km/h
航続距離：2,130 km
空虚重量：2,351 kg
最大離陸重量：3,092 kg
乗員：2名

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