T.I.

T.I.（ティーアイ）とは

T.I.（本名：クリフォード・ジョセフ・ハリス・ジュニア）は、1980年 9月25日生まれのアメリカ合衆国のラッパー、作詞家、俳優、音楽プロデューサー、そしてエグゼクティブプロデューサーです。ジョージア州アトランタ出身で、自身のレーベル「グランド・ハッスル・レコード」の最高経営責任者も務めています。彼は、自身の楽曲内で「T.I.P.」という別の人格を演じることがあり、ファンからはこの名前が「Ten Inch Playa（25センチの陰茎を持つプレイボーイ）」の略であると解釈されています。また、彼は自らを「キング・オブ・ザ・サウス（南部の王）」と称しており、ラッパーのファレル・ウィリアムスからは「サウスのジェイ・Z」と才能を称賛されています。

生い立ちとキャリア

アトランタのバンクヘッドで生まれたT.I.は、当初ステージネームを「T.I.P.」とする予定でしたが、尊敬するラッパーQ-ティップ（Q-Tip）と名前が似ているため、「T.I.」に変更しました。彼が尊敬する他のラッパーには、ジェイ・Z、2パック、スカーフェイス、アイス・キューブ、アウトキャストのアンドレ3000などがいます。

2001年にファーストアルバム『アイム・シリアス』をリリースしましたが、大きな注目を集めることはありませんでした。しかし、2003年のセカンドアルバム『トラップ・ミュージック』は、ヒップホップアルバムとして高い評価を受け、プラチナセールスを記録。その後、数々の客演を通じて次第に注目を集めるようになりました。特に、デスティニーズチャイルドのシングル『ソルジャー』への参加は、彼の実力を証明する出来事となりました。2004年にはアルバム『アーバン・レジェンド』がリリースされ、そのファーストシングル『ブリング・エム・アウト』は日本でもクラブで人気を博しました。

2006年、アルバム『キング』がビルボードチャートで1位を獲得し、初週で522,000枚という記録的なセールスを達成。このアルバムは2006年で最も売れたヒップホップアルバムとなりました。その後、映画「ATL」での主演や、ジャスティン・ティンバーレイクの『マイ・ラブ』、マライア・キャリーの『ラヴィン・ユー・ロング・タイムリミックス』などでの客演を通じて、T.I.はヒップホップ界の重要人物の一人としての地位を確立しました。

2007年には5枚目のアルバム『T.I. vs T.I.P.』をリリース。インターネットの普及によりヒップホップアルバムの売り上げが低下する中、プラチナセールスを獲得しました。しかし、同じ年に銃やサイレンサーなどの違法取引容疑で逮捕され、300万ドルの保釈金を支払い釈放されています。

2008年には、逮捕による自宅監禁の後、1500時間に及ぶ社会奉仕活動を行いながら、6枚目のアルバム『ペーパー・トレイル：真実の行方』を制作。ファーストシングル『ホワットエヴァー・ユー・ライク』は全米チャート1位を獲得し、その後わずか6週で5枚目のシングル『マイアヒ・ライフ』も全米1位となるなど、T.I.の名を歴史に刻みました。『ペーパー・トレイル：真実の行方』は、『トラップ・ミュージック』や『キング』と並ぶ、完成度の高いヒップホップアルバムとして評価されています。

2009年3月には、武器の違法取引の罪で懲役366日と約10万ドルの罰金を科せられ、服役しましたが、2010年3月に釈放されました。2010年8月には、製作に関わった映画『テイカーズ』が公開されましたが、同年9月には妻と共にドラッグ所持容疑で再逮捕されています。当初『テイカーズ』と同時期にリリース予定だったアルバム『キング・アンケイジド』は、『ノー・マーシー非情のストリート』とタイトルを変え、2010年12月にリリースされました。

他のアーティストとのビーフ

ギャングスタラップをメインに活動し、「キング・オブ・ザ・サウス」を自称するT.I.は、他のギャングスタラッパーとの間で、しばしばビーフ（対立）に巻き込まれてきました。主なビーフ相手としては、リュダクリス、リル・フリップ、ショーティー・ローなどがいます。

リュダクリス

T.I.とリュダクリスは、Gユニットのラッパー、ヤング・バックのアルバムに収録される予定だった曲『ストンプ』にゲスト参加する予定でしたが、T.I.のパートがザ・ゲームに置き換えられたことから、T.I.がリュダクリスを中傷するバースをレコーディングしました。その後、リュダクリスのレーベルDTPのラッパー、I-20のビデオに「トラップ・ハウス」と書かれた服を着た男が倒れるシーンがあり、T.I.が自身のアルバム名「トラップ・ミュージック」に由来すると主張して激怒したことからビーフが始まりました。2007年6月には、リュダクリスのマネージャーがT.I.に殴られる事件が発生。しかし、その後のBET授賞式でT.I.が謝罪したことで両者の関係は改善し、2008年にはお互いのアルバムにゲストアーティストとして参加しています。

リル・フリップ

AllHipHopによると、T.I.はリル・フリップの地元であるヒューストンのクローバーランドで、フリップの取り巻きと揉め事を起こしました。T.I.は当時、リル・フリップを詐欺の理由で追求するDVDの制作を計画していましたが、そこでフリップの一味と鉢合わせし、T.I.のボディーガードの一人が銃を発射したことから口論に発展しました。T.I.はラジオ番組でリル・フリップとの口論について説明し、さらにフリップをターゲットにしたミックステープを準備していると発表しましたが、ミックステープは最終的にリリースされず、Jプリンスの仲介により和解しました。

ショーティー・ロー

2008年、T.I.はショーティー・ローとの間で激しいビーフに巻き込まれました。ショーティー・ローがセカンドシングル『ドゥン・ドゥン』で、T.I.が自分の出身地をバンクヘッドだと主張することに疑問を呈し、T.I.はショーティー・ローの本拠地であるボーウェン・ホームズ公営住宅でシングル『ホワット・アップ・ホワッツ・ハプニング』のビデオを撮影しました。その後、両陣営がダーティー・アワードで衝突し、セレモニーが中止になるほどの騒ぎになりました。しかし、2009年3月7日に行われたT.I.の「お別れ会」にショーティー・ローが出席したことで和解が成立し、T.I.は「メディアが騒ぎ立てただけでビーフではなかった」と語っています。

ディスコグラフィー

アルバム

アイム・シリアス (2001年)
トラップ・ミュージック (2003年)
アーバン・レジェンド (2004年)
キング (2006年)
T.I. vs T.I.P. (2007年)
ペーパー・トレイル：真実の行方 (2008年)
ノー・マーシー非情のストリート (2010年)

主なシングル

アイム・シリアス feat. ビーニ・マン (2001年)
24・インチ (2003年)
ビー・イージー (2003年)
ラバーバンド・マン (2003年)
レッツ・ゲット・アウェイ feat. ジャジー・フェイ (2003年)
ブリング・エム・アウト (2004年)
ユー・ドント・ノウ・ミー (2004年)
Asap (2004年)
モチベーション (2004年)
ライド・ウィス・ミー (2006年)
フロント・バック feat. UGK (2006年)
ホワット・ユー・ノウ (2006年)
ホワイ・ユー・ワナ (2006年)
リヴ・イン・ザ・スカイ feat. ジェイミー・フォックス (2006年)
トップ・バック [リミックス] feat. ヤング・ジージー、ヤング・ドロー、ビッグ・カントリー・キング、B.G. (2006年)
ビッグ・シングス・ポッピン (ドゥー・イット) (2007年)
ユー・ノウ・ホワット・イット・イズ feat. ワイクリフ・ジョン (2007年)
ハート feat. アルファ・メガ、バスタ・ライムス (2007年)
タッチダウン feat. エミネム (2007年)
ノー・マター・ホワット (2008年) プロモ・シングル
ホワットエヴァー・ユー・ライク (2008年) 全米1位
スウィング・ユア・ラグ feat. スウィズ・ビーツ (2008年) プロモ・シングル
ホワット・アップ・ホワッツ・ハプニング (2008年) プロモ・シングル
マイアヒ・ライフ feat. リアーナ (2008年) 全米1位
デッド・アンド・ゴーン feat. ジャスティン・ティンバーレイク (2009年)
リメンバー・ミー feat. メアリー・J・ブライジ (2009年)

映画出演

アメリカン・ギャングスター (2007年)
テイカーズ (2010年)
泥棒は幸せのはじまり (2013年)
アントマン (2015年)
スリープレス・ナイト (2017年)
アントマン&ワスプ (2018年)
ルディ・レイ・ムーア (2019年)
モンスターハンター (2020年)

脚注

出典

外部リンク

ワーナーミュージック・ジャパン - ティーアイ - ウェイバックマシン
Official Artist Website
Atlantic Records Website
Official site of Grand Hustle Records
* T.I. on Myspace

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