T28重戦車/T95戦車駆逐車:幻の超重戦車
T28重
戦車(T28 Super Heavy Tank)またはT95
戦車駆逐車(T95 Gun Motor Carriage)は、第二次世界大戦中に
アメリカ陸軍向けに設計された試作超重
戦車です。旋回
砲塔を持たない固定
砲塔式で、ドイツの駆逐
戦車に近い構造をしていました。
開発の背景
T28は、ドイツ軍の超重
戦車マウスに対抗する目的、そして強固に防御された
ジークフリート線突破を想定して開発されました。1944年3月に「T28」の呼称が与えられ、当初は試作車5両と量産型25両が計画されましたが、ドイツ降伏と太平洋戦争終結により、試作車2両のみの製造に終わりました。
T28は
砲塔を持たず、主砲を搭載したケースメート式の
戦闘室を備えていました。そのため、1945年2月7日にT95
戦車駆逐車へと改称されました。しかし、1946年6月には再びT28へと名称が変更されています。これは、本車の性格が
戦車であるか
戦車駆逐車であるかという議論によるものでした。T28は、ドイツ軍の駆逐
戦車(Jagdpanzer)と同様の重
戦車駆逐車として、ドイツ軍重
戦車との
戦闘を想定していました。
試験とその後
製造された2両は、1947年まで
アバディーン性能試験場やフォート・ノックスで試験を受けました。しかし、1947年に1両がユマ試験場で走行試験中にエンジン火災を起こして大破、廃棄されました。もう1両は解体され、スクラップとして売却されたと報告されています。T28が実戦に投入されることはありませんでした。同時期に開発が進められていたT29重
戦車やT30重
戦車といった、
砲塔を備えた重
戦車設計に追い越されたためです。
設計の特徴
T28は、パシフィック・カー・アンド・ファウンドリー社によって設計・製造されました。機械構造はT23
中戦車のものを流用しています。完全装備状態での総重量は95米トン(約86トン)にも達し、その重量を支えるため、幅328mmの履帯を片側2組ずつ、計4本装備していました。鉄道輸送時には、外側のサイドスカート、サスペンション、履帯を取り外すことができました。
エンジンはフォードGAF V8
ガソリンエンジン(500馬力)を搭載していましたが、車重に対して非力であり、最高速度はわずか13km/hでした。また、障害物走破能力も低く、当時の架橋能力では実用性に欠け、量産には不向きと判断されました。
主兵装はT5E1 105mm砲で、車体正面に固定装備されていました。この砲は、分離薬莢式のT32徹甲弾を使用した場合、射距離914mで135mm、1828mで119mmの傾斜30度の装甲板を貫通する能力がありました。砲の旋回は左右にそれぞれ10度程度、俯仰角は+19.5度から-5度でした。副武装として、車長用ハッチ上に12.7mm
ブローニングM2重機関銃が装備されていました。
車体前面上部の装甲厚は最大304.8mmに達し、当時の他の装甲
戦闘車両と比較して非常に厚く、ドイツ軍の88mm砲に対する防御力は十分であると考えられていました。
類似の車両
イギリスの
トータス重突撃戦車は、T28と同様の目的で開発されました。トータスは94mm砲を搭載した自重79トンの巨大な車両で、第二次世界大戦終結時に6両が生産されました(計画では25両)。
現存する車両
1974年、
バージニア州フォート・ベルボアで、長年放置されていた試作車両が発見されました。この車両がどこで27年間を過ごしたかは不明です。この車両はT28の唯一の現存例であり、現在は
ジョージア州フォート・ベニングの陸軍機甲学校に移設され、展示されています。
登場作品
T28/T95は、その特異な外観から、様々なメディア作品に登場しています。
アニメ:
ガールズ&パンツァー 劇場版:大学選抜チームの車両として登場。
ゲーム:
R.U.S.E.: アメリカの超重
戦車T95として登場。
War Thunder:
アメリカ陸軍の駆逐
戦車T95、プレミアム車両T28として登場。
World of Tanks: アメリカ駆逐
戦車T95として開発可能。
参考文献
ピーター・チェンバレン&クリス・エリス『世界の
戦車 1915~1945』大日本絵画、1996年。
ISBN 4-499-22616-3
関連項目
マウス (戦車)
* 駆逐
戦車