TA・MA・TE・BOX

『TA・MA・TE・BOX』は、日本の著名なフュージョンバンドであるCASIOPEA 3rdが2013年に発表したスタジオ・アルバムです。この作品は、活動休止期間を経て再始動した彼らにとって、第3期CASIOPEAとして最初に制作されたオリジナルのフルアルバムにあたります。また、スタジオ作品としては、前作『SIGNAL』から実に8年もの歳月を経てのリリースとなり、長年のファンにとっては待望の一枚となりました。

アルバムタイトルの『TA・MA・TE・BOX』（タ・マ・テ・ボックス）という言葉が示唆するように、本作には多様な音楽的要素や、バンドが持つ様々な側面がまるで玉手箱のように詰め込まれています。フュージョンというジャンルを軸としながらも、過去から現在に至るカシオペアの幅広い音楽性が凝縮されており、リスナーは開けるたびに異なる驚きや発見を味わうことができるでしょう。収録されている楽曲は、このアルバムのために書き下ろされた新曲を中心に構成されていますが、それに加えて、バンドの長い歴史の中でも特に愛されてきた名曲「太陽風」と「MISTY LADY」が、現在のメンバーによって新たな解釈でセルフカバーされ、収録されています。これらのセルフカバーは、原曲の魅力を活かしつつも、円熟期を迎えたメンバーによる新鮮なアプローチが感じられる仕上がりとなっています。

本作のサウンドを構築しているのは、CASIOPEA 3rdの中核を成す三人のメンバーです。バンドリーダーであり、ほぼ全ての楽曲の作曲を手掛けるギタリストの野呂一生。そして、パワフルかつテクニカルな演奏でバンドのリズムを支えるベーシストの鳴瀬喜博。さらに、第3期からの新メンバーとして加わり、色彩豊かなサウンドでバンドの音楽性を広げているキーボーディストの大髙清美が名を連ねます。そして、本作において彼らを強力にサポートしているのが、長年にわたりカシオペアのサウンドに貢献してきた世界的ドラマー、神保彰です。スペシャルサポートという形で参加した神保彰の卓越したドラミングは、各楽曲に圧倒的な推進力とグルーヴをもたらし、アルバム全体の完成度を一層高めています。彼ら四人による息の合ったアンサンブルは、まさに現在のCASIOPEA 3rdが到達した地点を示すものと言えるでしょう。

アルバムの制作体制にも触れておきましょう。本作のプロデュースは、メンバー自身であるCASIOPEA 3rdが行っています。これにより、バンドの音楽的意図やビジョンがダイレクトに作品に反映され、妥協のないサウンド作りが実現されています。レコーディングおよびミキシング・エンジニアは、数多くの著名な作品を手掛けてきた倉石裕治が担当しました。彼の高い技術力によって、楽器それぞれの持つ音色や演奏の細部までが高品位なサウンドで捉えられ、バンドのダイナミズムが最大限に引き出されています。

『TA・MA・TE・BOX』は、一部仕様で特典DVDが付属しています。このDVDには、アルバムリリースに先立つ2012年12月29日に、東京国際フォーラムにて開催されたスペシャルイベント「LIVE IN TOKYO CROSSOVER NIGHT」におけるCASIOPEA 3rdのライブパフォーマンスが収録されています。これは、第3期CASIOPEAとしての活動が本格的に始まった直後の貴重なライブ映像であり、音源では味わえない彼らの熱量溢れる演奏シーンを視覚的に楽しむことができます。特典DVDの存在は、このアルバムが単なるオーディオ作品に留まらず、バンドの再始動とその勢いを多角的に伝えるパッケージとなっていることを物語っています。

2013年12月2日にHATS UNLIMITEDから発売された『TA・MA・TE・BOX』は、新たなスタートを切ったCASIOPEA 3rdの記念碑的な作品として、多様な音楽性と高い演奏レベルを見事に融合させています。新旧のファンが共に楽しめる充実した内容であり、日本のフュージョンシーンにおける彼らの存在感を改めて示す重要な一枚と言えるでしょう。

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