鳴瀬喜博

鳴瀬喜博：日本のフュージョンシーンを彩る稀代のベーシスト

鳴瀬喜博（なるせ よしひろ）氏は、1949年11月13日生まれの日本のベーシストであり、人気フュージョンバンド、カシオペアのメンバーとして広く知られています。東京都出身、成蹊大学卒業。血液型はA型です。

愛称である「なるちょ」の由来は、チョッパー奏法を多用するようになった後から付けられたという説が広く知られていますが、実際にはそれ以前から親しまれていたあだ名でした。彼のライブパフォーマンスは、ベースソロでの客席乱入が名物となっています。ユーモラスなトークも人気で、楽器店でのイベントなどでは、演奏とトークの両方を楽しみ待つファンが多数集まります。

音楽活動の軌跡：多様なジャンルと幅広い活動

鳴瀬氏の音楽活動は、中学生時代にビートルズの影響を受けてギターを始めたことに始まります。後にベースに転向し、1971年にプロとして活動をスタート。カルメン・マキ&OZ、バッドシーン、スモーキー・メディスン、金子マリ&バックスバニーなど、数々のバンドに参加しました。1970年代後半には、スタジオミュージシャンとしても活動を始め、三枝成彰氏や堀井勝美氏らとも共演しています。

1977年には、審査員として参加したアマチュアバンドコンテストでカシオペアと出会い、その才能に魅了されました。この出会いが、後のカシオペア加入へと繋がる重要な出来事となります。金子マリ&バックスバニーと並行して、リーダー・ライブ「びっくりセッション」を開始し、インスト音楽にも傾倒していきます。同時期には、山岸潤史グループにも参加するなど、フュージョンへの関心を深めていきました。

1981年には初のソロアルバム『MYTHTIQUE』を発表。リーダーバンドのQUYZ、CHAOSを結成する他、高中正義氏、本多俊之氏、堀井勝美氏のプロジェクトにも参加するなど、精力的な活動を展開しました。1986年には、カルメン・マキ氏、山田信夫氏、松本孝弘氏、そうる透氏らとロックセッションバンド「うるさくてゴメンねBAND（うるゴメ）」を結成し、1987年にはライブアルバムを発表しました。

1990年、カシオペアに加入。同年、TBSの『三宅裕司のいかすバンド天国』のレギュラー審査員を務め、音楽ファンの枠を超えて広く知られる存在となります。1991年には、三枝成彰氏の誘いを受け、野呂一生氏と共に東京音楽大学の講師に就任。後進の指導にも力を注ぎ、後に客員教授に昇格します。1990年代半ばには、是方博邦氏、難波弘之氏、東原力哉氏らとフュージョンバンド「野獣王国」を結成し、カシオペアと並行して活動しました。

2000年にはプロ生活30周年を記念し、CHAOSとURUGOME（うるゴメ改名）の復活ライブを開催。2001年にはEnTransを結成するなど、ソロ活動も精力的に展開し、2004年には18年ぶりのソロアルバム『WINDOW』を発表しました。2006年のカシオペア活動休止期間中には、Narucho-ICEを結成し、定期的なライブ活動を行いました。2009年には60周年を記念したベストアルバムを発表し、毎年11月には記念ライブを開催しています。2012年には、Ikuo氏、村田隆行氏らとトリプルベースユニット「ザ・チョッパーズ・レボリューション」を結成し、同年カシオペアはCASIOPEA 3rdとして活動再開しています。

ベースプレイの特徴：独自のスタイルと高い技術

鳴瀬氏は、スラップ奏法（チョッパー）を得意とし、ラリー・グラハム氏に影響を受けてこの奏法を習得しました。フレットレスベースも頻繁に使用し、ソロアルバムではティム・ボガート氏からの影響も感じられます。TUNE GUITAR MANIACに特注した8弦ベースを所有し、カシオペアで初めて本格的に使用しました。5弦ベースに副弦を付加した7弦ベース、10弦ベースなども使用し、ベースソロではトレモロアーム付きのベースを使用するなど、多彩な楽器を使いこなします。

ベースラインはオーソドックスなものから、タッピング奏法、独自のペダルポイントスタイルまで幅広く、フレーズが指定されている場合も、独自の解釈を加えながら演奏します。フリーランス時代にはロック、ソウル、ファンクなど様々なジャンルの演奏を経験し、数十本のベースを所有しています。

カシオペアの前任ベーシスト、櫻井哲夫氏とは対照的に、ルーズで自由奔放な演奏スタイルが特徴です。これは、野呂一生氏に自由に演奏することを提案したことが始まりです。独特のベースラインは多くのミュージシャンから尊敬を集め、高い信頼を得ています。

その他の活動とエピソード

鳴瀬氏は、櫻井哲夫氏、本田雅人氏と同じ誕生日であること、プロレス観戦が趣味であったことなど、様々なエピソードがあります。また、NHK教育番組「むしまるQ」ではヴォーカリストとして参加するなど、多様な活動を行っています。東京音楽大学では徳永暁人氏を指導し、師匠として慕われています。

鳴瀬喜博氏は、独自のベースプレイ、多様な音楽活動、後進への指導など、日本の音楽シーンに多大な貢献を果たしている稀有なベーシストと言えるでしょう。彼の音楽は、これからも多くのミュージシャンやリスナーを魅了し続けるに違いありません。

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