TAMATEBAKO (太田裕美のアルバム)
TAMATEBAKO
『TAMATEBAKO』（たまてばこ）は、日本のシンガーソングライター、太田裕美が1984年に発表した通算18枚目となるオリジナルアルバムです。発売元はCBS・ソニーでした。
制作背景と音楽性
本作は、前作『I do, You do あなたらしく、わたしらしく』、前々作『Far East』に続いて、当時太田の夫となる音楽プロデューサーの福岡智彦がディレクターとして制作に参加しました。
作詞においては、前作で起用された駆け出し時代の作詞家、銀色夏生が引き続き参加しています。銀色夏生は、前作では「山本みき子」名義を使用していましたが、本作および続く3曲入りシングル『雨の音が聞こえる』では「山元みき子」名義で詞を提供しています。
編曲陣には、前々作より3作連続で参加した大村雅朗を中心に、前作に引き続き川島裕二や板倉文が参加。加えて、本作ではバンド・くじらの杉林恭雄が新たに編曲家として名を連ねています。また、長年のコラボレーターである作詞家・下田逸郎とのコンビによる「ロンリィ・ピーポー」シリーズの第4作目も本作に収録されました。
音楽的な路線としては、前作・前々作から展開されてきたニュー・ウェイヴやテクノ歌謡のサウンドをさらに推し進めた、当時としては先進的で異色の作品となっています。太田裕美の代表曲である「木綿のハンカチーフ」のようなフォーク歌謡のイメージが強かった従来のファン層からは、この急激な音楽性の変化に対して賛否両論が巻き起こりました。しかし、本作は「『木綿のハンカチーフ』の太田裕美」というパブリックイメージを打破し、アーティストとしての表現の幅を広げるべく、テクノ・ポップ路線を突き詰めた実験的な作品として位置づけられています。
シングルとジャケット
本作の先行シングルとして、同年5月21日に『青い実の瞳』が発売されました。このシングルのカップリング曲「バラになって逃げよう」はアルバム本編には収録されませんでしたが、後に太田裕美のシングルA面・B面曲を集めたベストアルバム『太田裕美 Singles 1978-2001』に収録されています。『青い実の瞳』にはプロモーションビデオも制作されています。
アルバムジャケットは非常にシンプルで、白い背景に青のモノトーンで写された太田自身の顔写真が使われています。この写真は先行シングル『青い実の瞳』のジャケットとも連動しており、同じ写真のポーズ違いが使用されています。
収録曲
本作に収録された楽曲は以下の通りです。
- - 青い実の瞳
- （1984年5月21日 先行シングル）
- - ランドリー
- - 花さそう鳥目の恋人
- - ささら
- - グッバイ・グッバイ・グッバイ
- - 夏へ抜ける道
- - よそ見してると…
- - チラチラ傘しょって
- - ロンリィ・ピーポーIV
- - ねえ、その石は
キャリアにおける位置づけ
『TAMATEBAKO』発表後、同年11月21日にリリースされた次作の3曲入りシングル『雨の音が聞こえる』では、再び銀色夏生が作詞を担当しつつも、作曲に筒美京平を迎えるなど、音楽的に従来の路線へ回帰する姿勢が見られました。このシングルには、「木綿のハンカチーフ」のイントロフレーズが引用された楽曲も収録されています。
翌1985年1月26日、太田裕美は福岡智彦と結婚し、以降は子育てなどを優先するため音楽活動を休止します。本格的な音楽活動の再開は1996年からとなり、新たなオリジナルアルバムのリリースは1998年の『魂のピリオド』まで途絶えることとなりました。このことから、『TAMATEBAKO』は、太田裕美が結婚・活動休止に入る直前の時期に、実験的な音楽路線を追求したピークを示す作品の一つとして位置づけられます。
再発売
本作は、2001年5月23日にCDとして再発売されています。その際の規格品番はSRCL-5092でした。
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